本会議

一般質問全文 (平成29年第3回定例会)

早川太郎 質問。

「つなぐプロジェクト、早川太郎でございます。今回は、大きく3点、区長に質問・提案させていただきます。

まず初めに、バリアフリー対策の推進について伺います。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開幕まで、とうとう3年を切りました。1964年に開催された前回の東京オリンピックでは、日本の大都市圏を結ぶ輸送手段としての東海道新幹線開通や首都圏の交通網を発達させた首都高速の建設、また、羽田空港から都内へのアクセスを高めるためにつくられた東京モノレール羽田空港線の開通など、東京の首都機能を飛躍的に向上させたインフラ整備が行われ、首都東京が世界的都市へと変貌する契機となりました。今回のオリンピック・パラリンピック開催の意義として、読売新聞の記事に、東京パラリンピックの開催は、障害者スポーツの祭典としてだけでなく、超高齢者社会を迎えた日本にとって、障害の有無や年齢、性別などの違いを超え、誰もが活躍できる社会へと変わる契機となることが期待されるとの記載がありました。まさにそのとおりで、今回のパラリンピック開催が台東区としてもユニバーサルデザインの考え方をしっかりと根づかせていく契機となるよう、施策を展開すべきと考えます。
区ではバリアフリーの推進を図るべく、平成23年度と24年度に策定した台東区バリアフリー基本構想に基づき、区内全域を重点整備地区としています。高齢者や障害を持つ方々が多く利用される施設を生活関連施設、その施設を結ぶ道路を生活関連経路と位置づけ、各事業者が行う具体的なバリアフリー整備の内容をバリアフリー特定事業計画として作成、この計画に基づき、区有施設や公共交通事業者などのバリアフリーへの取り組みを後押ししてきました。東京オリンピック・パラリンピックの開催を契機に、各事業者の努力もあり、鉄道駅などを初め、エレベーターや多機能トイレなどの設置が当初計画よりも早期に完了した施設も数多くあり、区内のバリアフリー整備は着々と進んでいると言えます。
しかし、バリアフリー特定事業計画は、東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定する前につくられた計画です。各事業者が台東区のまちのバリアフリー化に努力されていることは重々承知していますし、一度作成した計画を計画どおりに着々と進めていくことの重要性は十分認識しておりますが、パラリンピック開催という大変大きなファクターがあったにもかかわらず、新たな計画の作成や、区として推進するための新たな施策の追加などが目に見える形であらわれていないことに物足りなさを感じずにいられません。
東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定し、区は長期総合計画や行政計画にもオリンピック・パラリンピック競技大会関連事業を別枠で設定し、さまざまな事業を推進しています。障害者スポーツの推進では、誰もがスポーツできる環境を整備するため、障害者スポーツの体験会開催や人材育成などを新規で事業化しています。また、台東区オリンピック・パラリンピック教育プランを定め、ユニバーサルマナーなどの心のバリアフリーを推進することで、おもてなしの向上にも努めています。
計画策定以後になされた新たなバリアフリー対策事業では、紙媒体であったバリアフリーマップをデジタル化し、たいとうマップに追加しています。先日策定された情報化推進計画では、スマートフォンへの対応やルート検索機能など、公開内容を充実するとなっておりますが、公共施設や駅などの交通施設が大半で、民間施設の記載は数えるほどしかありません。2016年には、障害を理由として正当な理由なくサービスの提供を拒否したり制限したり条件をつけ足したりするような行為を禁止する障害者差別解消法が施行され、民間事業者に対しては努力義務を課した上で、対応指針によって自主的な取り組みを促すこととしております。また、区内では、ホテルを含む新規施設が数多く開業しています。施設のアップデートを行っていることとは思いますが、現在のマップに記載されている以外にも、バリアフリー対応の民間施設が区内にはまだまだ存在しているのではないでしょうか。バリアフリーマップへの民間施設のデータを集めるため、また、バリアフリー対応の施設を増加させるための、例えばユニバーサルデザイン認定制度の創設やバリアフリー推奨ルートの提示なども検討すべきかもしれません。また、バリアフリー対応の施設情報を充実した上でオープンデータ化し、アプリコンテストを開催、民間の知恵をかりるという手もあります。
オリンピック・パラリンピック開催まで3年を切り、ユニバーサルデザインやバリアフリーへの機運が高まっている今こそ、台東区内にバリアフリー対策を推進するチャンスなのではないでしょうか。台東区民だけでなく、来街者の方々を含めた高齢者や障害を持つ方、妊産婦や幼児連れの方々など、分け隔てなく誰もが安全・安心、便利で快適に過ごせる台東区を目指し、今回のパラリンピック開催が台東区のユニバーサルデザインやバリアフリーをしっかりと形づくっていく契機となるよう、今まで行ってきた事業を、より有効的に活用できるようなバリアフリー対策の推進をしっかりと行っていくべきと考えますが、区長の所見を伺います。

次に、障害者施設の整備について伺います。
台東区においては、障害者施策推進の基本的な考え方として、ノーマライゼーションの理念のもと、人と人とが人格と個性を尊重し合いながら、障害のある人もない人も、ともにいきいきと暮らせる社会の実現を基本理念としています。
台東区障害福祉計画では、暮らしを支える環境の確保を基本目標の一つとし、障害者がみずからの暮らし方を選択し、障害にかかわらず、生まれ育った地域で生活していくことができるよう、居住環境の整備が必要であるとして、在宅サービスの充実や住まいの場の確保などに努めています。
居住環境の整備である知的障害者グループホームの整備では、昭和63年の松葉寮開設から平成25年開設の今戸ほうらいまで12施設の整備を行っており、現行の第4期計画では、今年度までに第3期計画の持ち越し分である1施設を含め4施設の開設を目標としてきました。しかし、建築基準法や消防法の基準に合致しないなどの理由により整備が進まず、現計画年度では平成30年に1施設の開設が予定されているのみにとどまっています。知的障害者のグループホームは、実態調査の結果や障害者団体からの要望などからも、今後もニーズは増加していくことになると思われますし、保護者の高齢化という課題もあり、ますます施設整備の必要性は高まっていくことでしょう。さらに、生まれ育った地域で生活していくことを目標に掲げるなら、地域的な偏在も考慮に入れて整備を進めていかなくてはなりません。
日中活動の場の整備である生活介護施設の整備についても、現在4カ所の施設が整備されておりますが、第4期計画の目標数2カ所については、計画年度内の開設は非常に困難であると言わざるを得ません。現在の4カ所の施設の利用者は、既に定員数に近づいています。今後の特別支援学校の卒業予定者数は、ここ数年は増加傾向にあり、また、高齢化により、福祉的就労から生活介護へ移行する見込みも考慮すれば、近々生活介護を利用したくても利用できる施設のあきがないといった状況となってしまいます。両施設の整備は、区の障害者施策の喫緊の重要課題であります。
また、障害者の日中活動の場の中核的な施設として位置づけられている松が谷福祉会館についても課題があります。松が谷福祉会館は、障害者のための区内初の障害福祉施設として昭和50年に開館しました。しかし利用者の増加やサービス事業の拡大により、身体障害の生活介護施設であるつばさ福祉工房や知的障害者の入所生活介護施設の浅草ほうらいが開設、当初の事業が他施設へ移管され、現在は子供の療育事業や障害者デイサービス、相談支援事業、就労移行支援事業などが行われています。昭和59年に改築が行われておりますが、既に30年が経過しており、施設自体の老朽化が大変進行しています。事業移管後も既存設備をそのまま活用しており、事業内容と設備がマッチしておらず、有効にスペースが活用し切れていないと感じますし、低利用、未利用のスペースも存在しています。
また、本年3月に策定された台東区発達障害児(者)支援方針によれば、松が谷福祉会館における療育事業のニーズは増加傾向にあり、また、利用対象者の年齢引き上げを予定しています。これらの状況を考慮すれば、現在のスペースではとても対応し切れません。さらに、日中活動の場の中核的な施設として位置づけられているのなら、障害者ボランティアの育成やサロン機能の充実などの課題に対応したスペースの確保も必要です。松が谷福祉会館は台東区公共施設保全計画において中期保全計画1期目の施設に指定されており、早ければ平成32年度より大規模改修を行う予定となっています。その大規模改修に際しては、施設自体の単なる改修を行うだけでなく、利用者の利便性や台東区の障害者施策の方向性を考慮した上で、松が谷福祉会館を今後どういった位置づけで運営していくのか、事業の再配置を含め、しっかりと検討した上で改修すべきと考えます。
障害者施策のセンター機能としての役割を担い得る施設とするのか、また、特定分野や年代に主眼を置いた施設とするのか、障害者福祉サービスは今後予想される利用者の増加やサービスの質の向上、さらには需要が増大してくる福祉サービスへの対応など、今後事業スペースの拡大は必須です。どちらの方針を選択したとしても、現在の松が谷福祉会館のキャパシティでは限度があり、新たな事業スペースの確保は必須となります。そのスペースの確保には相応の時間が必要となってくるでしょう。また、改修期間の仮施設の確保についても、施設によっては相応のバリアフリー対応が必要であり、その準備も進めていかなくてはなりません。松が谷福祉会館のあり方の検討は、改修時期を考慮しても、早急に進めていかなくてはなりません。台東区の障害者施策の拠点である松が谷福祉会館のあり方を一刻も早く検討し、大規模改修に備え早期に結論を出すべきと考えますが、区長の所見を伺います。

また、グループホームや生活介護などの整備は計画どおりしっかりと実現させていかなくてはなりません。遅々として進まない現状を鑑みれば、低利用、未利用の区有地、区有施設などの活用も積極的に検討していかなければならないと考えますが、今後の障害者施設設備についての区長の所見を伺います。

最後に、保健所の子育て世帯におけるデータ管理の充実について伺います。
国は児童虐待について、発生予防から自立支援まで一連の対策のさらなる強化などを図るために、平成28年度より児童福祉法などの改正を行っています。今回の改正では、全ての児童が健全に育成されるよう、児童を中心に、その福祉の保障などの内容が明確化されるとともに、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援などを通じて、妊娠や子育ての不安、孤立などに対応し、児童虐待のリスクを早期に発見、逓減するとして、母子保健法において母子保健施策が児童虐待の発生予防、早期発見に資するものであることに留意すべきことを明確化し、母子健康包括支援センターの設置が法定化されました。
また、児童福祉法では、市区町村は、児童及び妊産婦の福祉に関し、必要な実情の把握に努め、情報提供を行い、必要な調査及び指導を行うことと明記されたほか、関係機関は支援を要する妊婦などに関する情報を市区町村に提供するよう努めなくてはならなくなりました。さらに児童の安全を確保するための初期対応などが迅速、的確に行われるよう、市区町村などの体制や権限の強化などを行うことが求められています。
現在、台東区では、保健所の担当事業として妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を行うため、妊娠期のゆりかご・たいとう事業や乳幼児健診、乳児家庭全戸訪問、育児相談などなどさまざまな事業を行い、子育て世帯の妊娠や子育ての不安、孤立などに対応するとともに、児童虐待のリスクを早期に発見、逓減するよう努めています。しかし、現在の保健所では、子育て世帯における個々のデータ自体が一元管理されておらず、昨年の決算特別委員会の答弁によれば、乳幼児健診の個々のデータは手書きで行われる母子カードという紙媒体を基本として管理が行われており、ゆりかご面接の実施状況など、一部の情報のみがシステムで進行管理を目的に管理されているとのことでした。子育て世帯のデータ管理を紙とシステムとの二重で行うことには、効率性や管理の面から多くの課題があります。
例えば、紙媒体でのデータ管理は、台東保健所と浅草保健相談センターの2カ所で行われており、必然的にデータを保管しているこの2施設での対応を余儀なくされます。わずか10平方キロの台東区ではありますが、利用施設の制限は利便性を損なってしまっています。実際に浅草保健相談センターのほうが行きやすいのに、自動的に台東保健所に振り分けられてしまい、非常に通いにくいなどの声も聞いています。紙とシステムとの二重管理は、情報検索の迅速性や情報のそごのリスクも含め、正確性に疑問が生じ、カードの保管場所スペースの確保も必要です。
また、要保護児童対策として、台東区は子ども家庭支援センターへ課長級ポストを配置したり相談員の拡充など、組織的な機能強化を図っています。児童相談業務が年々増加し、事例的にも複雑化してきていることから、情報を一元管理し、連携強化・迅速化を図るための児童相談支援システムも導入しています。しかし、子育て世帯と一番接点を持っているはずの保健サービス課とのデータ連携システムは構築されておらず、児童の安全を確保するための初期対応などが迅速、的確に行われるような体制整備がなされているのか甚だ疑問を感じます。このような状況で、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援や児童虐待のリスクを早期に発見、逓減できるような体制整備は十分なのでしょうか。全ての児童が健全に育成されるような体制整備を行うのなら、子育て世帯の妊娠期からの母子情報や家族情報、サービス利用の状況などを一元管理し、保健サービス課や子ども家庭支援センターはもとより、子育て・若者支援課や障害福祉課、保健予防課、保護課など、関係部署との迅速な情報共有及び支援体制の構築が必要だと考えます。
さらに、セキュリティ面、台東区においても個人情報の紛失事例が昨今起こってしまいました。個人情報は外部に流出することなく、結果として事なきを得ましたが、個人データを持ち歩く部門として、紙ベースの情報管理は大変なリスクを伴います。個人データのデジタル化を図り、タブレット端末を導入することでセキュリティはかなり向上します。仮に紛失、盗難された場合でもセキュリティ機能が施されているタブレット端末なら、個人情報流出のリスクは激減します。また、現在は複数の個人データを持ち歩くことが禁止されておりますが、タブレット端末が導入されれば、一度の外出で複数箇所を訪れることが可能になります。重大な事故を防ぐためにも、効率的に業務を遂行する上でも、情報のシステム化・一元化、そして外出時のタブレット端末の導入は必須なのではないでしょうか。
子育て世帯の情報管理をシステム化・一元化することで、検診や相談などの利用施設制限がなくなり、ワンストップサービスの推進につながります。また、情報検索の迅速化や正確性の担保に寄与し、業務の効率性を向上、事務スペースの有効活用にもつながる、セキュリティも格段に向上します。さらに、関係機関とデータを連携することで、総合的な情報把握を行うことが可能となり、要保護児童対策を含め、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を迅速に行うことが可能となるのです。
豊島区など、既に実施済みであり、23区内の複数の区でもシステム化・一元化に向けた検討を既に始めています。新たな情報化推進計画にも、保健所のシステム化によるサービスの向上が記載されており、目標年度の平成32年には推進となっておりますが、平成31年度の浅草保健相談センター移転の際に、母子健康包括支援センターの拡充機能を円滑に実施するのなら、早急に情報管理のシステム化及び関係機関との連携を含めた一元管理の検討などを進め、開設時には運用できる体制を整えなくてはならないと考えますが、区長の所見を伺います。
以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。」

 区長 答弁。

 「早川議員のご質問にお答えいたします。
ご質問の第1は、バリアフリー対策の推進についてです。
台東区では、バリアフリー特定事業計画に基づき、区内全域の各施設や道路等のバリアフリー化を推進してまいりました。また、心のバリアフリーについては、啓発用リーフレットの配布や事業者向け講習会の開催、小学校での高齢者疑似体験などを実施し、その重要性が浸透するよう取り組んでいます。このほか、今年度中にバリアフリーマップのスマートフォン対応など、ソフト面での充実に向けてリニューアルを行います。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として、高齢者・障害者、子育て中の方や外国の方など、全ての人々に安心して訪れていただける台東区を目指していきたいと考えています。
今後も、特定事業計画の早期実現や心のバリアフリーの啓発に努めるとともに、これまでの取り組みで得られた成果や情報を有効に活用しながら、バリアフリー対策を一層推進してまいります。
ご質問の第2は、障害者施設の整備についてです。
松が谷福祉会館は、昭和50年の開設以来、障害者支援の中核的施設として乳幼児から成人までさまざまな障害のある区民や関係団体の活動の場として広く利用されています。しかしながら、近年では、こども療育室のニーズが増加傾向にあります。そこで本区は、ことし3月に策定した発達障害者に対する支援方針において、療育対象年齢を段階的に引き上げるなど、よりきめ細やかな療育を提供できる体制を目指すこととしました。加えて、障害者デイサービスも定員に近づくなど、今後予想される障害福祉サービスの増加への対応が大きな課題であると考えています。
こうした状況を踏まえ、松が谷福祉会館のあり方については、老朽化が進行していることからも、早期に大規模改修が実施できるよう、発達支援に関するセンター機能などの整備とあわせて検討を進めてまいります。また、グループホームや生活介護施設など、障害者施設の整備については、区有地、区有施設の活用を含め取り組んでいます。
ご質問の第3は、保健所の子育て世帯におけるデータ管理の充実についてです。
現在、乳幼児健診や育児相談などの記録については、システム及び紙媒体の母子カードによって管理をしています。早川議員ご指摘のとおり、システムにより情報を一元管理することで、要保護児童対策を含め関係機関との迅速な情報共有を図ることができるとともに、区民サービスの向上も期待でき、個人情報管理の強化や事務の効率化にもつながります。
現在、平成31年度の浅草保健相談センター移転に向け、母子健康包括支援センター機能拡充への準備を進める中で、システムの構築についても検討を重ねているところです。今後とも、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援を推進してまいります。」

 

一般質問全文 (平成28年第2回定例会)

早川太郎 質問

「つなぐプロジェクト、早川太郎でございます。
今回は大きく3点伺わせていただきますが、質問を始めるに当たり、まずはこのたびの熊本地震で被災された多くの方々にお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興をご祈念申し上げます。
いつ起こってしまうのかわからないのが自然災害であり、台東区においても例外ではありません。台東区政においても、今回の甚大な被害をもたらした熊本地震の痛ましい経験を無駄にしないことが重要であり、自然災害に対する備えをさらに充実させていくべきと考え、震災対策について2点、質問・提案をさせていただきます。

まずは、建築物の耐震化の推進について伺います。
本年4月14日の前震、そして16日の本震と、立て続けに震度7を記録した熊本地震では、49名の方が地震の直接的な被害によって亡くなられ、また、その後の避難生活による体への負担や持病の悪化などによって20名近くのとうとい命が失われてしまいました。内閣府の非常災害対策本部の発表によれば、6月7日現在で建物の被害は全壊7,151棟、半壊2万1,181棟で、一部破損まで含めれば13万棟を超えているということです。これら被害を少しでも減らしていくためには建物の耐震化が不可欠であり、耐震化された建物を1棟でもふやしていくことが重要です。
今年度策定された台東区耐震改修促進計画では、現状、84.6%の住宅の耐震化率を平成32年度には95%とする目標を掲げています。しかし、この現状の耐震化率84.6%は戸数ベースであり、集合住宅の新設が増加している台東区の現状を鑑みれば、実際の建物の数、つまりは棟数ベースの耐震化率では一般緊急輸送道路沿道建築物の耐震化率67.1%を下回る数字が実情なのではないでしょうか。そう考えれば、台東区の耐震化は決して十分ではなく、いつ起こってもおかしくない首都直下型地震に備え、耐震化をさらに強力に進めていかなくてはなりません。
耐震診断の無料化を実施するなど、区も耐震化推進に向けた取り組みを強化してきましたが、昨今では3.11以降、時間の経過もあり危機意識が低下する中で、27年度の木造住宅の耐震改修助成件数は2件と伸び悩んでいます。区は、促進に向けて今年度より、耐震改修助成制度の上限金額を引き上げるなど、さらに耐震化促進事業を充実させています。しかし、事業を充実してもそれが区民に伝わっていなければ、耐震化は進んでいかないのではないでしょうか。平成27年度の区政サポーターアンケートによれば、区の耐震助成制度について、5割の方が知らないと答えています。
区は、耐震化事業の啓発に向けて、今までも総合防災訓練などでのPR、そして26年度には旧耐震基準の建築物と思われる全棟に対してパンフレットを配布するなどPRに努めてきましたが、残念ながら十分区民に浸透していたとは言えないのではないでしょうか。今回の熊本地震における甚大な被害を目の当たりにして、耐震化の重要性が区民の中でも再認識されている今こそ、情報伝達方法や各種媒体、情報を受け取る側の特性に合わせた内容の工夫などを改めて検討し、耐震化推進に向けての情報発信を積極的に展開すべきと考えますが、区長のご所見を伺います。

次に、応急危険度判定について伺います。
建物の倒壊などによる被害を減少させるため、被災前の備えとして耐震化の推進がありますが、被災した後の被害を減少させるためには、行政として被災後速やかに応急危険度判定を実施していくことが重要となります。応急危険度判定は、被災した自治体の要請を受けて、判定員が2人1組となり、被災した建築物の調査を実施するもので、調査済み、要注意、危険の3種類のステッカーを判定した建築物の見やすい場所に掲示します。居住者はもとより、付近を通行する歩行者などに対しても、倒壊などの危険性が情報提供されることにより、人命にかかわる二次的被害を未然に防げることとなる大変重要な行為です。
現在、区では、原則震度5強以上の地震が発生したときに応急危険度判定を行うとしておりますが、現状の備えで十分なのでしょうか。台東区地域防災計画では、応急危険度判定の対象を民間の事業所などを除く住宅などとしており、平成25年度の住宅・土地統計調査によれば、区内の住宅棟数は3万450棟であり、最大その全てが判定対象となります。同計画によれば、応急危険度判定の目標を7日間と設定しており、目標達成するためには1日当たり約4,350棟、1チームの1日当たりの判定を仮に20棟とすれば218チーム、436人の判定員が必要です。計画では、民間事業所は自力で判定を行うとなっておりますが、中小事業所や商店が地域内に混在している台東区においては、判定時に用途の判断を現場で行うことは困難であり、現実的にはさらに多くの判定員が必要となることでしょう。判定員の主力となる判定員登録を済ませた在勤在住の建築士を会員とする台東区被災建築物応急危険度判定員協議会の会員数は現在240名となっておりますが、会員全ての方が判定員となって活動していただける状況とはならないのではないでしょうか。
今回の熊本地震の例を見ても、他自治体から判定員の派遣を行っていただけるとは思いますが、日本の総人口の約1割強が集中している23区では、住宅の棟数は150万戸を超えています。その棟数の判定を賄うことができる規模の派遣を期待することは、なかなか難しいのではないでしょうか。今回の熊本地震でも判定員の数が足らず、判定の着手がおくれた自治体があったとの報道もありました。また、他自治体からの派遣職員の宿泊先や、判定員の数が集まらなかったときの対応などにも課題があったと言われています。
震災後、速やかに応急危険度判定を実施できるよう、応急危険度判定員の拡充のための積極的な働きかけを強化するとともに、判定員との平時からの連携強化など、今回の熊本地震の経験を踏まえ、実効性のある備えを構築すべきと考えますが、区長のご所見を伺います。

次に、ペーパーレス化の推進について伺います。
私たち台東区議会は、平成28年第1回定例会において、議会改革推進協議会の作業部会として議会ペーパーレス検討会を設置し、ICTの活用などさまざまな方策を調査検討し、議会活動におけるペーパーレス化推進に向けての取り組みを開始いたしました。この検討会では、全議員にタブレット端末を配付し、クラウド情報共有システムを導入している立川市議会の視察に伺ったほか、3回の会議を開催し、議会で配付される資料の種類や作成手順、配付方法のほか、議員のICT機器の活用状況や他自治体の取り組み状況などの現状把握に努めるなど、ペーパーレス化推進に向けてさらに検討を進めていくこととしています。
議会でのペーパーレス化を進めていくためには、委員会資料の電子化など行政の協力は不可欠です。車の両輪にも例えられる議会と行政、議会だけでなく行政にもさらなるICTの活用、そしてペーパーレス化推進に向けての取り組みを進めていただきたいと思い、3点、提案・質問をさせていただきます。
本年3月に策定された台東区区有施設地球温暖化対策推進実行計画では、平成27年度を基準として31年度までに温室効果ガス排出量を4%以上削減という目標を定めています。その達成に向けての個別目標に、今改定から用紙の使用量も追加し、27年度を上回らないことにするとしています。しかし、同計画によれば用紙の使用量は区有施設全体では平成20年度に比べて26年度は12.3%増加しており、庁舎だけに限って言えば24.1%も増加しています。正直、随分控え目な目標だと思っていますが、この目標ですら現在の取り組みで達成することが可能なのでしょうか。
区は、ペーパーレス化推進に向けて電子決裁の推進に努めており、平成23年には電子決裁の決裁権者を部長まで拡大するなどの改善を行ってまいりましたが、電子決裁比率は平成21年度の6.52%から26年度の6.84%までにとどまっています。昨年8月には決裁権者を副区長、教育長までさらに拡大するなど改善に向けた取り組みを行っておりますが、決裁権者を拡大するだけで推進していけるのでしょうか。電子決裁が進まない現状を分析し、改善に向けてしっかりとした取り組みを行うべきと考えますが、電子決裁の推進に向けての区長のご所見を伺います。
また、ペーパーレス化に向けて保管・保存文書の電子化も推進すべきと考えます。行政文書の保存期間には法令その他により永年、10年、5年、3年、1年の保存基準があり、現在、保存文書は地下の書庫において段ボール箱約7,000箱が収納されています。毎年約1,200箱はその書庫に保管され、約1,000箱が廃棄処分となっています。1年ごとに約200箱が増加しており、書庫の収納も限界に近づいています。電子文書での保存を制限する法令などはありません。保管文書を電子化することで各所管に設置されているキャビネットの数も減少することが可能です。現在、手狭になっている庁舎内のスペースにも余力が生まれ、より有効的な活用が可能となります。また、地下書庫の保存文書を電子化すれば、必要な文書を探す労力は大幅に減ることとなりますし、災害時においてのリスクも減少します。この際、ペーパーレス化に向けて保管・保存文書の電子化を早急に推進すべきと考えますが、区長のご所見を伺います。
さらに、ペーパーレス化推進に向けては、ICTのさらなる活用も重要です。台東区では、平成13年に庁舎内の各課や出先機関をネットワークで結ぶ全庁LANの基盤整備を行ったほか、インターネットなどの多様な通信手段を活用し、公共施設の空き室状況の照会や予約が可能なシステムである公共施設予約システムを導入するなど、行政事務の効率化の推進や情報共有の充実、そして区民サービスの向上を目的としてICTの活用を実施してきました。
ICTを活用したペーパーレス化の推進ということでいえば、10年以上前の話になりますが、区は答弁検討会において、使用する紙の削減を図るためパソコン利用の導入を行いました。しかし、当時のICT環境では結果、効率が落ちてしまうなどの理由で取りやめ、現在は紙の資料での会議が開催されています。議会事務局の試算によれば、予算特別委員会が開催される第1回定例会の議員などに配付された紙の使用量はおおよそ10万枚。会議の種類や回数は明らかに議会より行政のほうが多く、行政が会議などに使用する紙は膨大な枚数となるのではないでしょうか。答弁検討会でのペーパーレス化を実施したときに比べて、情報端末やLAN環境の進化は著しく、これらICTの活用を充実することで相当数の紙の削減が図れ、ランニングコストの削減にもつながります。
さらに、会議などでのペーパーレス化を実現すれば、会議資料作成における労力や時間の短縮につながるとともに、写真やカラーを活用するなど、会議資料のつくり方が変わることにより訴求力が高まることから議論も深まり、区政発展の一助になるはずです。また、窓口業務にタブレット端末を導入すれば、区民への説明がよりわかりやすくなり、区民サービスの向上にもつながります。全庁LANへの接続は原則、各職員のデスク周辺となっており、会議室などでの整備がなされていないのが現状です。さらなる情報端末活用のために、庁内に無線LANを整備し、持ち運びのしやすいタブレット端末の導入など検討すべきではないでしょうか。ペーパーレス化推進に向けて、行政の効率化や区民サービスの向上、そしてランニングコストの削減にもつながるICTのさらなる活用を推進すべきと考えますが、区長のご所見を伺います。

最後に、隅田川を生かしたランニング環境の整備について伺います。
区は、本年4月の組織改正で、スポーツ振興課を新設し、オリンピック・パラリンピックに向けたスポーツ振興の推進に力を注ごうとしています。また、本年策定された2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた台東区の取り組み方針では、地域で誰もが気軽に楽しめる環境整備をスポーツ分野における取り組みの方向性の一つに掲げ、スポーツの実践を通じた健康的なライフスタイルの定着を図るとしています。大変すばらしい方針であり、ぜひとも実現していただきたいと思い、質問・提案をさせていただきます。
この、地域で誰もが気軽に楽しめるスポーツの一つに、区が奨励しているウォーキングとともにランニングがあります。道具を使わず手軽にできる運動であるランニングは、27年度の区民意識調査の、この1年間に行ったスポーツや運動で11.2%の第5位にランクインしています。しかし、町なかでのランニングは歩行者や自転車が共存しており、交通安全上の問題が懸念されています。そのような中、都の外郭団体であり隅田川テラスなどの管理を委託されている東京都公園協会は、隅田川リバーラン&ウォークマップを作成し、隅田川沿いでのランニングやウォーキングを推奨しています。その中の第1番目のコースとして白鬚橋、吾妻橋間の周遊コースが取り上げられています。
先日、柳橋から白鬚橋までの親水テラスを歩いてみましたが、桜橋より北側の防潮堤は、耐震補強工事やスーパー堤防工事の影響で一部区間が通行どめになっており、白鬚橋までは通行できなくなっていました。時刻は午後8時過ぎ、蔵前橋から厩橋間はテラス照明が整備されているなど、吾妻橋までは比較的照明も整備されており、隅田川からの風も心地よく、スカイツリーなどの景観もすばらしく、大変快適な散歩となりました。しかし、初期に整備された吾妻橋以北のテラスはほとんど照明の整備がなく、路面整備も未完成の区画があり、タイルやアスファルト、ウッドデッキなど、全く統一感がとれていない状況でした。テラス照明については、都も白鬚橋までを整備の対象としているようであり、完成すれば景観的にも安全面でも格段と環境は改善されることでしょう。
さらに、ランニングしやすい路面整備や距離標示、ベンチの設置を含めた休憩所の整備を行い、来街者にも利用しやすい吾妻橋付近や隅田公園内にある体育施設などにロッカーやシャワーを備えたランニングステーションを設置するなど、ランニング環境の整備を進めれば隅田川沿いのすばらしい景観もあり、都内でもトップクラスのランニングコースとなり得ます。
笹川スポーツ財団の調査によれば、ジョギング、ランニング人口は2014年で986万人との推計データもあり、女性ランナーも着実に増加しており、過去最高の値を示しているそうです。また、昨今では、都内有数のランニングコースである皇居外周では、観光客である外国人ランナーが増加しているそうです。都心で信号がなく一定の距離を走れるランニングコースは決して多くはありません。親水テラスのランニング整備は区民の健康増進に寄与するだけでなく、新たな来街者を呼び込むツールともなり得るのではないでしょうか。
平成26年第4回定例会における一般質問での隅田川を生かしたランニング環境の整備についての答弁において、和田教育長から、ランニングの推奨には安全安心な環境の整備が必要であり、区民のスポーツ実施率の向上にもつながると考えている旨答弁がありましたが、まさに同感であります。
スポーツ振興課を新設し、地域で誰もが気軽に楽しめる環境整備を方針として打ち出した区として、隅田川親水テラスにおけるランニング環境の整備は必要と考えますが、ランニングステーションの設置も含め、ランニング環境の整備に向けたご所見を教育長に伺います。
東京都も隅田川ルネサンスの取り組みやオリンピックを見据えてスポーツ環境の充実に力を注ぐはずであります。また、先ほども申し上げましたが、都の外郭団体である公園協会が白鬚橋、吾妻橋間の周遊コースをリバーラン&ウォークマップとして推奨していることも追い風となるのではないでしょうか。親水テラスを所管する東京都や関係機関に白鬚橋、吾妻橋間の親水テラスにランニングしやすい路面環境や距離標示など、ランニング環境の整備を強く働きかけるべきと考えますが、区長のご所見を伺います。
以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。」

 区長 答弁。

「早川議員のご質問にお答えいたします。
ご質問の第1は、震災対策についてです。
まず、耐震化の推進についてです。
区では昨年度、新たな耐震改修促進計画を策定し、今年度も東京都の緊急輸送道路沿道建築物の耐震化施策の見直しを反映し、計画を更新したところです。これに伴う耐震化助成の拡充については、広報たいとうへの掲載や各地区町連での説明などを通じて周知を図ってまいりました。また、熊本地震の発生を受け、直ちに町会回覧による事業のPRや、建物所有者への直接の働きかけなども実施したところです。今後は、助成対象者に応じた広報媒体や建物の用途に沿った啓発内容などを検討し、より一層効果的な周知が図れるよう情報発信してまいります。さらに、都や近隣区にも働きかけ、相乗効果を得られるような広報活動の連携にも取り組んでまいります。
次に、応急危険度判定についてです。
地震によって多くの建築物が被災した場合は、余震による建築物の倒壊等から生ずる二次災害を防ぐため、都の支援も受けながら、応急危険度判定調査が行われます。区ではこれまで、台東区被災建築物応急危険度判定員協議会を組織し、判定訓練や講習会の実施、連絡網の構築などを通じて、判定員が迅速かつ的確に活動できる体制の整備を進めてまいりました。私も議員ご指摘のとおり、災害に備えた協議会組織のより一層の充実は重要であると認識をしております。今後とも東京都や関連団体と連携するとともに、判定員への登録を積極的に働きかけていくほか、協議会員のスキルや意識の向上にも取り組んでまいります。
ご質問の第2は、ペーパーレス化の推進についてです。
まず、電子決裁についてです。
ペーパーレス化は温室効果ガスの削減、ひいては地球温暖化防止のために重要であると認識をしております。本区では、平成16年度から文書管理システムを導入し、事務改善、ペーパーレス化の観点から、電子決裁を実施しています。しかし、財務会計システムと連動していないことなどから紙決裁が必要となるものが多く、電子決裁が進まない状況となっています。今後とも対象文書の周知徹底を図るとともに、中期的には文書管理システム、財務会計システムの見直しを行う際にその連動を検討するなど、電子決裁の実施率の向上に努めてまいります。
次に、保管・保存文書の電子化についてです。
庁舎内の収納スペースに限りがあることや、文書検索の効率化につながることから、文書の電子化は必要であると認識をしております。文書の電子化に当たっては、基準の策定や明瞭な状態での保存、容易に検索できるシステムの構築を行う必要があります。今後ともモデル的な実施を含め、さまざまな観点から検討してまいります。
次に、ICTのさらなる活用についてです。
本年、情報化推進計画の改定作業を進めており、その中でもペーパーレス化について検討を進めているところです。具体的な例の一つとして、タブレット端末を活用した電子会議があります。電子会議の導入により、紙の大量印刷を抑制することが可能となり、コスト削減だけではなく時間の効率化などが図られると考えています。今後も積極的にICTを活用したペーパーレス化を推進してまいります。
ご質問の第3は、隅田川を生かしたランニング環境の整備についてです。
ランニング環境の整備は、区民の健康づくりに大変有効であり、また隅田川の水辺の活性化に資するものと認識をしております。河川管理者である東京都は、吾妻橋において、せんだってですが、親水テラスを連続化して、さらに現在、蔵前橋付近における照明整備、これを実施しているところです。議員ご指摘の、吾妻橋より上流域においては、親水テラスの路面整備や照明の設置など、改善が必要なところもあることから、さらなる整備に向けて、都と定期的な協議を行っています。今後も引き続き、距離標示の整備など、ランニング環境の充実に向け、都に対して働きかけてまいります。
その他のご質問につきましては、教育長がお答えします。」

教育長 答弁・

「早川議員の隅田川を生かしたランニング環境の整備についてのご質問にお答えさせていただきます。
東京オリンピック・パラリンピック大会を4年後に控え、今後ますます区民のスポーツへの関心が高まり、ランニング人口も増加が見込まれているところでございます。教育委員会では、オリンピアンから直接走り方を学べるスポーツイベントやジュニア駅伝大会の開催など、ランニングに親しみを持っていただけるよう、さまざまな施策に取り組んでいるところでございます。
隅田川周辺のランニング環境につきましては、吾妻橋下の通路の整備が進められたことで、隅田川親水テラスの連続性が確保されました。今後、テラスの路面や照明など安全安心に走ることができるランニングの環境が整えられることは、大変望ましいことと存じます。議員ご提案のランニングステーションの設置など、ランニング環境の整備につきましては、現在進めている新たな台東区スポーツ振興基本計画を策定する中で検討してまいります。」

代表質問全文 (28年第1回定例会)

早川太郎 質問

「つなぐプロジェクト政調会長、早川太郎でございます。会派を代表して、大きく3点伺います。
まず初めは、財政についてです。
今定例会で提出された補正予算案では、特別区民税は約5億円、特別区交付金に至っては17億円の増収が新たに計上され、一般会計では基金の取り崩しをほぼ実施することなしで済むことになりました。さらに、基金を約50億円積み増したことにより、基金残高は約400億円となっています。
28年度予算案では、前年度当初予算に比べ特別区民税は約7億円、特別区交付金も7億円の増収を計上しています。一般会計は、前年と比べ27億円増の968億円で、区政史上一番規模の大きい予算案となります。そうした状況下にあっても、区債発行、そして基金取り崩しの総額は前年に比べ約11億円も少ない約23億円で済んでいます。これらの結果から、財政状況が飛躍的に好転しているようにも見えます。
しかし、将来に目を向けてみれば、歳入では消費税の増税による地方消費税交付金の増額は、区が支払う消費税や住民税の国税化などの影響で、区財政へのプラス要因とは必ずしもなり得ません。消費税10%移行後には、さらに国税化が強化される可能性も高く、特別区交付金に与える影響は深刻です。また、景気の低迷による歳入減や消費税増税分の転換措置として、国、都からの支出金の減などの懸念もあり、さらに地方消費税の軽減税率実施による消費税収の補填財源のあり方によっては、台東区に交付される地方消費税交付金の減額懸念もあります。
歳出面でいえば、区有施設の老朽化対策として、前年当初予算対比で約4億円増の約20億円が28年度予算案では計上されておりますが、区の公共施設保全計画中間のまとめによれば、待ったなしの老朽化対策をしっかりと計画的に進めていくということで、試算では今後30年間で約850億円、各年では平均28.4億円の経費がかかる予定であり、多額な経費がかなりの期間、必要となってきます。
また、子育て支援対策では、子ども・子育て支援新制度が開始される前の26年度から比較すると、28年度までの3年間で認可保育所5園、小規模保育所4園などが新設されることになっており、こども園を除く保育施設の運営コストは、28年度の予算案では約53億4,000万円、26年度決算数値と比べて約13億3,000万円、3割以上の増額となっています。その増額分のうち、国や都などの補助金や保育料などの収入を差し引いた一般会計からの支出が約8億1,000万円にもなっています。保育施設の需要が高まる中、待機児童ゼロを目指すなら、保育施設のさらなる充実は必須であり、さらなる増設が必要となってきます。それに加え、子供の人口増加に伴い、放課後児童対策や学校施設の整備、子ども医療費助成など、子育て支援経費は今後大幅な上昇が予想されます。
一方、高齢者対策では、400人弱が待機者となっている特別養護老人ホームの合わせて200床以上の施設整備費として、28年度約11億円の予算を計上しておりますが、将来的に見れば、特別養護老人ホーム整備はこれで済むわけではありません。介護報酬でペイできるとされている100床を大きく下回る施設が谷中、浅草、蔵前、三ノ輪など多数あり、現状、指定管理費として赤字分を区が補填しておりますが、これら施設は従来型の多床室で運営されていることもあり、他の場所に大規模施設を新設することを含めて、施設自体の検討を行っていかなくてはなりません。また、地域包括ケアシステムの構築に向けては、今後ますます重要になる介護予防事業の充実が必要であり、当然それに係る経費も増大します。
さらに、障害者施策の事業費では、障害者自立支援法成立以来、障害福祉サービスの内容充実や、受給者の増により、5年前の23年度予算現額約35億8,000万円に比べ、28年度予算案では約47億2,000万円と5年間で11億4,000万円の増額。今後も生活支援施設や福祉作業所、グループホームの整備など、充実していかなくてはならない事業も多く、事業費は増大していきます。
さらに、本年4月に施行される障害者差別解消法を積極的に支援していくためには、バリアフリー対応など、官民問わず障害者支援を促進していく施策が必要となっていくことでしょう。
そのほかにも、東京オリンピック・パラリンピックに向けた取り組みや、耐震化・不燃化などの災害対策など多額な費用が見込まれる課題は多数あります。新興国の経済不安や原油価格の大幅な下落など、ことしになって急激な円高が進み、株価に至っては一時、年初から4,000円近く下落し1万5,000円を下回りました。また、内閣府が15日に公表した、昨年10月から12月期のGDP速報値によれば、GDPの約6割を占める個人消費が半年ぶりのマイナスになるなど、我が国の経済状況は先行き不透明感が増してきています。
今後も子育て・高齢者・障害者などへの対応は充実していかなくてはなりませんし、耐震化・不燃化など命を守る施策はさらに充実していかなくてはなりません。
基金にしても、リーマンショック以降、景気低迷による減収の影響などで22年度から24年度の3年間で、当初予算では約110億円の基金を活用し、財源対策を行わなければなりませんでした。景気が悪化し、歳入が増加していかなくても、先ほど述べたような施策は今後も持続的に事業を展開していかなければなりません。今まさに必要なものには十分な予算措置をとっていかなくてはならないとも思っておりますが、将来に備え、引き続き財政基盤の強化のために努めていくべきと考えます。
服部区長は、区の財政状況をどのように認識し、将来の備えに対してどのように対処していくつもりか、ご所見を伺います。

次に、環境政策について伺います。
気候変動の影響により、干ばつや異常気象、海面水位の上昇、感染症の拡大、生物種の絶滅など、気候変動による被害は着実に世界中で広がっています。その影響は台東区においても例外ではなく、猛暑日が続くことによっての熱中症や局地的な集中豪雨による浸水被害などがあり、日本各地の洪水被害を見ても、荒川決壊による区の3分の2が被災する洪水ハザードマップの想定が現実的な恐怖として再認識されています。
昨年12月に開催されたCOP21において、気候変動による人間社会や生物・自然への影響を抑えるための大きな前進となるパリ協定が、世界196の国・地域により採択されました。
パリ協定では世界の気温上昇を産業革命前と比べて2度よりかなり低く抑え、さらに1.5度未満となるよう努力するため、2020年以降、先進国と途上国がともに排出削減目標の作成と提出、対策実施の義務を負い、5年ごとの評価を通じて永続的な対策を続けることとなります。今後、我が国はパリ協定を受けて、平成42年度に25年度比で26%削減という約束草案の達成に向けて、国内対策を整備していくことになります。
また、東京都では、世界一の環境先進都市・東京の実現を目指し、国の削減目標よりもさらに厳しい、平成42年度までに、12年度比で30%削減という新たな目標設定を行おうとしています。電源構成の30%弱を占めていた原子力発電から、3.11以降、より温室効果ガス排出量が大きい火力発電へのシフトが進んだ結果、電力会社が一定の電力をつくり出す際にどれだけの二酸化炭素を排出したかの指標であるCO2排出係数は震災前と比べて5割以上も上昇しています。電力供給における再生可能エネルギーなどのさらなる活用や蓄電池などの飛躍的な技術の進歩がなければ、この目標はかなり厳しい状況です。
CO2排出量の多くを民生部門が占める台東区においては、行政だけでなく、区民や区内事業者、まさにオール台東区で一丸となって目標達成に向けて行動を起こしていくことが必要となってきます。温室効果ガス削減に向けて、国や都の目標と同等の目標を定め、実現に向けてCO2削減を推進していくなら、区長の断固たる決意が必須です。
今回の所信表明演説においても、残念ながら区長の環境政策に対する思いが十分に発信されていなかったように感じますので、この際、区政における環境政策の位置づけをどのように思っているのか、また、CO2削減に向けてどのような意気込みを持っているのか、ぜひご披露いただきたく、服部区長のご所見を伺います。
区がCO2削減に向けて、自己完結できる数少ない施策の一つに区有施設の省エネ化推進があります。区有施設の省エネ化はCO2削減に寄与するだけでなく、将来における経費の削減にも大きく効果をもたらします。しかし、多大なコストを伴う区有施設の省エネ化については、原則、大規模改修時に行うとなっています。
公共施設保全計画の中間のまとめでは、省エネ化を進めることにより30年間で58億円、単純割りだと年約2億円のコストが軽減できるとの試算がなされています。光熱費の大きな本庁舎は、既に省エネ化を進めており、さらに、この試算の中には多額な電気料のかかる街路灯なども含まれておりません。施設によっては1年前倒しするだけでも多額なコストが削減されることになります。将来においても、決して楽観できる財政状況が期待できない中、ランニングコストも減り、かつ、CO2削減に貢献できる省エネ・再生可能エネルギーの導入は、今まさにアクセルを踏むべき施策なのではないでしょうか。
また、太陽光発電など、再生可能エネルギーの活用により、災害時の電力供給を賄うことができるようにもなります。区有施設のCO2削減をしっかりと進めていくために、エネルギー消費量削減の成果をはかりにくいCO2削減目標だけでなく、年度ごと、個別施設ごとのエネルギー量削減の目標数値を立て、しっかりとした進捗管理を行っていける体制を構築すべきです。さらに、その成果をわかりやすい形で発信し、区民の意識向上につなげていくべきと考えます。
そもそも区民や事業者などに省エネ推進を働きかけるなら、まずは行政が自身でできること、つまりは区有施設などにおける省エネ化を誰よりも推進していかなくてはならないのではないでしょうか。区有施設の省エネ・再生可能エネルギー推進に向けて、区長のお考えをお聞かせいただきたく、所見を伺います。

 最後に、協働事業について伺います。
社会が多様化し、その社会で暮らす区民もさまざまな生き方が選択できる時代になってまいりました。それに伴い、行政に求められるサービスも多様化・複雑化してきており、今までの行政手法だけでは対応し切れない状況となってきています。将来においても決して楽観できる財政状況が期待できない中、多様な行政ニーズに応えていくためには、やる気やノウハウのある団体と協働しながら行政サービスの充実を図っていく、そういった行政手法を地方自治体は積極的に推進していかざるを得ない時代がやってきています。そのための施策が協働事業であり、NPO法人などの団体や公益活動を実践する企業などの社会貢献活動団体と区が力を合わせ、地域の課題解決へ取り組む仕組みの構築が急務となってきています。
昨今、各自治体では、行政サービスの充実・情報発信を強化しています。スマートフォンなどの普及により、各自治体の情報を比較しやすくなってきており、特に交通網が発達している23区では、より自分に必要な行政サービスを行っている自治体を選択肢の上位に位置づける可能性が増してきているからなのではないでしょうか。将来的には、協働事業活用の成否が地方自治体の優劣を決することになるかもしれません。
区は行政計画において、提案型協働事業制度を29年度から実施とし、26年3月に台東区協働指針を策定、来年度より中間支援組織を台東区社会福祉協議会内に設置するための整備を進めています。また、来年度からは、区民課のコミュニティ係を改組して、協働などを担う協働・多文化共生係を設置する予定であり、協働事業の推進に向けて準備を進めていることは評価しています。
しかし、協働事業の成果をしっかりと出していくためには、中間支援組織の優秀な人材の確保や利用しやすい立地、補助金指針の見直し、オープンデータの実施、庁内における組織改正を含めたバックアップ体制づくりなど、推進に向けてやるべきことは、まだ多数残されています。そして、一番重要なことですが、協働事業を成功させるためには、何よりも行政側の意識改革が必須であります。
台東区においても、協働事業の実施・育成を最重要課題の一つとし、区長の強いリーダーシップで着実に育成していくための準備をしっかりと行っていくべきと考えますが、区長の所見を伺います。
以上で私の質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。」

区長 答弁。

「早川議員のご質問にお答えいたします。
ご質問の第1は、財政についてです。
まず、本区の財政状況に対する認識です。
国は、1月の月例経済報告において、我が国の経済は緩やかな回復基調が続いているとの認識を示しています。一方、議員ご指摘のとおり、昨今の不安定な金融資本市場の変動に見られるように、景気の先行きは不透明さを増しているものと認識しております。
本区の財政状況は、歳入では消費税率10%への引き上げ時におけるさらなる国税化による影響で、主要財源である特別区交付金の減を懸念しています。また、歳出においては、人口の増加や区有施設の老朽化への対応など、増大するさまざまな行政需要を抱えており、予断を許さない状況にあると考えております。
次に、今後の財政運営についてです。
私は、いかなる経済状況にあっても、区民福祉の充実や新たな行政需要に的確に対応していくことが重要と考えております。そのためには、基金は財源不足や景気変動などに備えるため、一時的な歳入の増加や結果的に生じた歳計剰余金を積み立てる一方、必要な区民サービスや財政需要に対応するため、適切に活用してまいります。さらに今後、区有施設の計画的な大規模改修などの財源としては、一般財源の状況や世代間の財政負担の平準化の観点を踏まえつつ、特別区債も慎重に活用を図ります。
私は、将来にわたって区民の皆様が安心して生活できるよう、基金や特別区債を有効に活用しながら、中長期的な視点に立った安定的な財政運営を推進してまいります。
ご質問の第2は、環境についてです。
まず、区政における環境施策の位置づけとCO2削減の推進についてです。
私は、環境施策は区民生活の基盤を占めるものであり、地球温暖化対策、まちの美化、循環型社会の実現、環境教育など、区政全般にかかわる重要課題の一つであると認識をしております。また、地球温暖化の原因であるCO2の削減については、区は住民に最も近い自治体として、区民や事業者とともに一丸となって、この課題に取り組んでいかなければなりません。
そのため、区では、区民や事業者の省エネ行動の実践や省エネ機器の導入に対し、より一層の支援を行い、CO2の削減を目指してまいります。さらに、国や都とも連携を密にし、継続的に取り組んでまいります。
次に、区みずからの省エネルギーの推進についてです。
議員ご指摘のとおり、区民や事業者に省エネを働きかけるに当たり、区みずからが率先して模範を示し、先導的役割を果たしていくことが重要であると私も認識をしております。
そのため、区有施設の大規模改修等の際には、省エネ機器を積極的に導入することはもとより、既存施設にあっても、LED照明などの機器については、積極的かつ計画的に設置し、省エネを推進いたします。また、本年3月に策定する区有施設地球温暖化対策推進実行計画において、エネルギー使用量等の削減目標値を設定し、着実に実施いたします。
こうした取り組みにより、エネルギー使用量削減によるランニングコスト削減のメリットなどを区民や事業者にお示しして、区が指導的役割を果たしてまいります。
ご質問の第3は、協働事業についてです。
地域を取り巻く環境が、多様化・複雑化する中、町会等、地域社会で活動する団体が持つ専門性などを生かす協働がもとめられています。私も今後の区政運営にとって、地域における課題解決や地域力の向上に向け、協働がますます重要なことであると認識をしております。
そのため、本年4月に開設する中間支援組織は、さまざまな分野で活動する区民や団体、事業者などと幅広いネットワークを構築して、区や団体間のパイプ役として協働の取り組みを促進してまいります。
今後とも本区の多彩な特性や地域の魅力を生かしながら、より一層協働を推進し、区民の皆様とともに知恵と力を出し合い、住みよく暮らしやすい地域社会の実現に向け、鋭意努めてまいります。」