代表質問全文 (平成30年第1回定例会)

早川太郎 質問。

「つなぐプロジェクト、早川太郎でございます。会派を代表して、大きく2点伺います。

まず、初めは財政についてです。平成30年度予算案では、特別区民税は前年度当初予算に比べ約7億円の増額、特別区交付金も前年に比べ3億円の増収となっており、3年連続で区政史上最高額の予算規模となり、当初予算としては初めて1,000億円の大台を超えてしまいました。しかし、ここ3年間の一般会計当初予算を各年度の1月1日の人口を基準に1人当たりの行政コストで比較してみれば、28年度は50万5,000円、29年度は51万円、そして30年度は51万3,000円となり、人口当たりで見れば30年度予算案はここ数年の財政規模とほぼ変わらない予算だと言えます。にもかかわらず、前年に比べて基金の取り崩しは約10億円増の30億4,000万円、区債発行は約1億8,000万円増の24億5,000万円にも及んでいます。さらに将来に目を向けてみると、歳入では例えば地方消費税交付金、国の平成30年度税制改正では地方消費税の配分見直しが盛り込まれ、東京都全体で約1,000億円、台東区では約9億円の減収と推計され、対前年度約6億8,000万円の減で約47億5,000万円となっています。消費税の税率引き上げ相当分は約17億3,000万円となっておりますが、区が支払う消費税や法人住民税の国税化などの影響で区財政に与える影響はマイナス約6億円となっており、平成31年10月の税率改定以降にはさらに国税化が強化される可能性も高く、特別区交付金に与える影響は深刻です。また、景気の変動による歳入減や消費税増税分の転換措置として国、都からの支出金の減などの懸念もあり、さらに消費税の軽減税率実施による消費税収の補填財源のあり方によっては台東区に交付される消費税交付金の減額懸念もあります。
また、ふるさと納税の影響額は決算額の推計値で27年度の約3,500万円から年々増加し、
29年度には予算時に見込んでいた額を超えて3億7,000万円の減額見込みとなってしまい、現行の制度が続行されていけばふるさと納税における今後の減収は増大していくことでしょう。
さらに、たばこ税も対前年3億円の減で32億円、東京オリンピック・パラリンピックの開催を見据え国や都などでは受動喫煙対策の法整備が進められ、喫煙場所の規制強化が検討されており、喫煙機会の減少はたばこ税の大幅な減収に直結します。将来の医療費の減少につながるかもしれませんが、その効果があらわれるまでには相応の期間が必要であり、財政の視点からだけ見れば、30億円を超える貴重な自主財源であるたばこ税の減収は大変な懸念材料と言えるのではないでしょうか。
歳出面でいえば、子育て支援対策では子ども・子育て支援新制度にかかわる総事業予算が年々上昇し、30年度には125億円となっています。その125億円のうち保育園、幼稚園などのランニングコストは約92億円かかっていて、新制度が開始された27年度当初予算と比べるとわずか3年間で30億円の増額となっており、その92億円のうち国や都などの補助金や保育料などの収入を差し引いた一般財源からの支出が約62億円で、27年度と比べれば14億円も増額となっています。
今定例会で審議される子ども・子育て支援事業計画は計画どおり待機児童の減少が見込めなかったことなどにより中間改定を行うことになったものであり、整備施設数はさらに増加することになっています。次期計画では、ゼロ―2歳児保育後の3歳児の受け皿となる連携園対応を行うこととしており、現行の対応を続けていくとするならば、かなりの数の保育施設整備が必要となってくるのではないでしょうか。保育園、幼稚園などの施設整備費やランニングコストはさらにふえていくことになるでしょう。さらに、現在国では幼児教育の無償化実施に向けて検討が進められており、市区町村の一般財源からの支出が増加するとの報道もあります。待機児童対策の充実よりも先に、また義務教育と位置づけずに無償化を進めていくことへの是非はともかく、区財政に与える影響は甚大です。
また、心身障害者福祉費では、障害福祉サービスの内容充実や受給者の増により障害者差別解消法施行前の27年度当初予算と比べ30年度予算では約50億円と3年間で約7億円の増、現計画年度で遅々として進まなかった生活支援施設やグループホームなどの整備はしっかりと推進していくべきですし、松が谷福祉会館の事業の再配置を含むあり方の検討や子供たちが対象の児童発達支援、さらには障害者差別解消法を積極的に支援していくためのバリアフリー対応など、今後も事業費は増大していきます。
さらに区有施設の維持管理、行政計画上の老朽化対策事業では約20億円が計上されており、対前年度で10億円少なくなっておりますが、30年度は工事が計画されている施設が少ないためであり、施設保全計画どおりに保全整備を実施していくのなら今後とも多額な経費がかなりの期間必要となってきます。そのほかにも児童相談所の設立や高齢者対策における特養施設の再整備、介護予防事業の拡充、耐震化、不燃化などの防災対策など多額な費用が見込まれる課題は多数あります。
平成30年度は現在策定中の区の基本構想にあわせ、長期総合計画も策定する予定となっており、未来を描いていく上でも安定した財政基盤が不可欠であると思います。平成30年度を基本構想を策定し台東区の明るい未来を切り開いていくための新たなスタートを切る年と区長は位置づけていますが、今後の区の財政状況をどのように認識しているのか、区長の所見を伺います。

地方自治体の財政状況に多大な影響を与える昨今の国の政策、地域間格差の解消という名のもとに開始された特典つきのふるさと納税や法人住民税の国税化、消費税の配分見直し、待機児童対策や幼児教育の無償化、予防接種の充実など、地方交付税交付金をもらうことができない台東区にとっては、国からのしっかりとした財源確保が伴わない国の制度設計は区の財政に多大な影響を与えます。確かに、23区は他の自治体と比べれば財政状況に余裕があるかもしれません。しかし、人口が集中する都市圏ではその分人件費や土地などの価格も高く、また待機児童対策や災害対策を含む都市圏特有の行政需要も多く、歳出も膨らみがちにならざるを得ません。歳入は削られ区の一般財源からの支出が増大せざるを得なくなれば、行政サービスの維持、推進に努めていくことは大変難しくなってきます。今後もこういったことが続いていくと、台東区の財政は大丈夫なのかと真摯に憂いている議員は私だけではないはずです。こういった国の政策について、区長はどのように思っているのか。また、どう対応していくつもりなのか、区長の所見を伺います。

今後の台東区の財政状況が厳しくならざるを得ない状況を鑑みれば、今のうちに将来を見据えた対処策をしっかりと検討していくことが重要です。行政に求められるサービスも多様化・複雑化してきており、その需要に応えるために行政が行う事業は増加しています。また、国の制度変更などに対処するための事業も増大していて、それら事業をしっかりと行うためには区の人員もふやしていかなければなりません。現に30年度の予算では27年度の職員数に比べ常勤職員が約100名増、人件費は対前年比で約7億円の増となっています。今後は民泊事業対応も充実させていかなければなりませんし、児童相談所の新設などもあります。さらには子育て、介護などに対応するため、ワーク・ライフ・バランスのなお一層の推進も必要です。今のままの行政手法を行っていくのならさらなる増員が必要となってきますが、財政的にはかなり厳しくなっていきます。多様な行政ニーズに応えていくために、やる気やノウハウのある団体と協働しながら行政サービスの充実を図っていく協働事業を台東区は積極的に推進していくべきではないでしょうか。
今年度、区は協働提案事業の募集を行い2事業を決定、来年度より事業がスタートします。しかし、台東区における協働事業は区民との協働、つまりはパートナーシップに重点が置かれているような気がしてなりません。区民との協働も大変重要だと思いますが、NPO法人などの団体や公益活動を実践する企業などとの協働が軌道に乗れば、行政の負担も減り良好なサービスの恩恵を区民が享受できる可能性が高くなります。行財政基盤の強化としても、協働事業をしっかりと推進していくべきです。
また、他都市では既に実施しているクラウドファンディングや福祉や子育てなどの政策目的別寄附金などのふるさと納税制度、そして行政サービスを民間のNPOなどに委託し民間の投資家から調達した資金をもとに事業を行い、成果を達成した場合に行政から投資家に配当を支払うソーシャルインパクトボンドなど、新たな行政手法の検討をしっかりと行っていくべきです。将来の厳しい財政状況を見据え、協働事業やクラウドファンディングなどの新たな手法などを含め行財政基盤の強化に向けた取り組みを進めていくべきだと考えますが、区長の所見を伺います。

次に、情報活用・選択能力の育成について伺います。
昨年度末に作成された台東区情報化推進計画によれば、台東区における平成28年度のインターネット普及率は国平均よりやや高い約85%であり、スマートフォンの保有率はこの数年の間に急激に増加し、7割以上になっています。また、内閣府の平成28年度青少年のインターネット利用環境実態調査によると、小学生では約62%、中学生では約82%、高校生に至っては約97%がスマートフォンやパソコンなどでインターネットを利用しています。スマートフォンなどの普及に伴い、SNS、ソーシャル・ネットワーキング・サービスのメニューも拡大し利用者が増大したことなどから、情報の入手も現在は口コミ的な要素の強いSNSからの真偽混在する膨大な情報の中から自分に必要な情報を選択する時代となってきています。現代においては、社会で生き抜くために情報をどう活用していくかの能力が重要になっています。メディアが伝えるさまざまな情報をうのみにするのではなく、主体的かつ客観的に解釈し活用できる能力、またメディアを適切に選択し発信する能力、つまりはメディアリテラシーをいかに身につけていくかが重要です。
また、社会は多様化・グローバル化が進行していて、個人の価値基準がどんどん変化していく時代になってきています。国もそれらに対応すべく規制緩和を積極的に推進しており、結果、新たなビジネスやサービスが生み出されてきています。今までの日本はよくも悪くも規制社会であり、ある程度国に保護されてきましたし、保護されるものと思っている方が多かったのではないかと思います。しかし、急激なICTの発展、普及やグローバル化により新たなビジネスなども次々に生まれ、国の規制が追いつかないこともふえてきました。例えば仮想通貨、円やドルやユーロなどの国が発行する通貨と違い、特定の国家による価値の保証を持たない貨幣の流通が生まれ、投資目的で売買を行う人がふえてきていますが、しっかりとした規制整備が間に合わずテレビCMを行っている大手の取引所が仮想通貨での500億円を超える流出事件を起こし、一定期間換金停止の事態に陥りました。銀行などへの預金であれば、預金保険法により1人当たり1,000万円と利息が保護されるペイオフ制度がありますが、仮想通貨には取引所の破綻などに備えた顧客の救済制度はありません。
本年6月から実施される民泊にしても、特に初期段階においては事業者、利用者ともさまざまなトラブルが起こり得ることのリスクを考慮し、しっかりとした情報収集と選択を行っていかなければなりません。今後もさらに情報量や新たな選択肢はふえてきます。選択肢がふえた分、どれを選択するか、選択能力を幼少期から育てていくことも重要になっていきます。
国は、平成11年の中央教育審議会答申において小学校段階から発達の段階に応じてキャリア教育を実施する必要があると提言し、平成23年の中央教育審議会答申よりキャリア教育で育成する能力を基礎的・汎用的能力として人間関係形成・社会形成能力、自己理解・自己管理能力、課題対応能力、キャリアプランニング能力の4つの能力に再構築し、キャリア教育を一人一人の社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力や態度を育てることを通じてキャリア発達を促す教育と位置づけ推進しています。情報の理解、選択、処理などや自己認識については、自己理解・自己管理能力、課題対応能力の中で育成を目指しています。台東区も社会科や総合的な学習の時間などでは各メディアのメリット、デメリットを把握した上で情報をどのように選択していくかなどを学ばせていると伺いましたが、まだまだ十分ではありません。これからの時代、数ある情報の中から自分に必要な情報をその信頼性についても吟味して、メリット、デメリットをしっかりと考慮した上で選択することが必要であり、またその情報に基づいて行動する場合には当然自分の行動についても責任を負うこととなり、情報活用や選択についてのリスク管理を身につけていくことが必須となってきています。
次代を担う子供たちが急速に発展する情報化社会を生き抜いていくために、情報活用に関しての判断力や選択能力の育成をしっかりと推進していかなければならないと考えますが、課題と現状をどう認識しているのか、教育長の所見を伺います。
以上で質問を終了します。ご清聴ありがとうございました。」

 区長 答弁。

「早川議員のご質問にお答えいたします。
ご質問の第1は財政についてです。
まず、今後の財政状況に対する認識についてです。歳入では、消費税率10%への引き上げ時にさらなる法人住民税の国税化が行われるとともに、平成31年度税制改正において地方法人課税における税源の新たな偏在是正措置が検討されるなど、今後もさらなる減収が予想されます。
一方、歳出においては待機児童対策を初めとする子育て支援などの扶助費や区有施設の老朽化対応のための投資的経費など増大するさまざまな行政需要を抱えており、本区の財政は今後も予断を許さない状況にあると認識をしています。
次に、区の財政運営に多大な影響を与える国の政策に対しての認識と対応についてです。都市と地方の税源の偏在是正措置は、受益と負担に基づく応益課税という地方税の原則から逸脱し、地方分権の流れに逆行するものだと考えています。この不合理な偏在是正措置について、区は国に対し特別区長会のもと、国がみずからの責任において地方税財源の拡充を図るよう繰り返し強く主張してきたところであります。きのうも特別区長会として緊急共同声明を発表いたしました。また、都市部の緊急の課題である待機児童対策を初めとする福祉、都市基盤、環境等の施策や国の制度に基づく施策を遂行するために、これまでも特別区長会や全国市長会を通じて制度の改善や財政措置の充実強化を国に求めてまいりました。今後も国に対し、さまざまな機会を捉えて基礎的自治体である本区の責任と権限に応じた財源を国が責任を持って保障するよう要請してまいります。
次に、行財政基盤の強化についてです。人口増加や少子高齢社会の進行等により行政に対するニーズは複雑かつ多様化しており、今後も行政需要の増加が見込まれるものと認識しています。区ではこうした行政需要に対応するため、使用料等の見直しや低利用、未利用の区有財産の活用、事務事業や管理的経費の見直しなどにより、歳入・歳出の両面で行財政基盤の強化を図ってまいりました。
早川議員ご提案の将来的な財政状況の変化に対応するための新たな取り組みについても、導入による効果や課題について検討を進めているところです。今後も区民の皆様が安心して住み続けられるよう、より強固な行財政基盤の確立に向け取り組んでまいります。
その他のご質問につきましては、教育長がお答えいたします。」

教育長 答弁。

「早川議員の情報活用・選択能力の育成についてのご質問にお答えさせていただきます。
現在、子供たちを取り巻く環境はインターネットやSNS等を通じての情報であふれております。また、情報の発信や受信方法も多種多様となっており、数ある情報の中から必要な情報を選択し、その情報の信頼性についての吟味する力を育成することも大変重要な課題であると認識しております。
学校では、子供たちがこうした社会を生き抜く力を育むために、セーフティ教室や道徳の時間等で情報リテラシーや情報モラルについての指導を計画的に実施をしているところでございます。教育委員会といたしましては、今後も子供たちが適切に情報を選択することや情報をもとに行動する際にはさまざまな責任やリスクを伴うことについて理解を深め、これからの社会を豊かに生きていくことができるよう指導の充実に努めてまいります。

 

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