一般質問全文 (令和元年第3回定例会)

2019/011/10

早川太郎質問

「つなぐプロジェクト、早川太郎でございます。今回は2点、区長に伺わせていただきます。
初めに、指定管理者制度について伺います。
私の主要な政策テーマである行政経営の改善については、行財政基盤の強化や戦略的広報、ペーパーレス化の推進、協働提案事業、そして区有施設の適正化や省エネ対策などなど、さまざまな提案をしてきましたが、区議会議員になって初めて取り組んだ行政経営課題は、初の決算特別委員会総括質問で取り上げた指定管理者制度についてでした。指定管理者制度は、民間の知恵や工夫の活用を図ることにより、区民サービスの向上を目指すことを目的として平成15年に制定され、制度導入により、地方公共団体や、その外郭団体に限定していた区有施設の管理運営を民間事業者にも開放することが可能になり、現在、台東区は57施設で指定管理者制度を採用しています。そのうち外郭団体に委託されている施設が36施設あり、その全てが公募によらない選定となっています。そのときの質問でも述べましたが、本来は行政の責任として区が直轄で行うべき事業を、コストなどの課題により、区の補完的存在である外郭団体に委託することはメリットの多い場合もあります。しかし、指定管理者制度が導入されたことにより、デメリットも発生し、質問当時では、例えば特別養護老人ホームなどを非公募で受託している社会福祉事業団では、民間との経営効率を過分に意識せざるを得なくなり、その結果、外郭団体としての本来的な意味、セーフティーネットとしての役割を維持するための体制が崩れてしまうのではないかとの懸念がありました。
区は、27年度に社会福祉事業団の役割と方向性を再定義し、社会福祉事業団の役割として、民間事業者では担い切れないニーズに的確に応え、区と一体となって福祉政策を担っていくとまとめ、区として特定施設の運営委託を社会福祉事業団に決定しています。であるならば、その決定に合わせる形で指定管理者制度の運用指針の変更も行うべきではないでしょうか。
また、指定期間の問題も委員会などで発言させていただきましたが、例えばこども園などの教育施設、現在は指定期間は5年で、公募による選定となっておりますが、委員会の答弁でも、教育・保育施設については、スタッフなどが入れかわらない、継続していただくことが子供たちにとっては一番望ましい、継続性を十分大事にしていきたいとの見解が示されています。それら施設は区立ではありますが、民間事業者が運営しています。区には、ちいさな芽という共通カリキュラムはありますが、各園独自の方針やルールもあって、その独自性に共感して園を選択されている方も多いと聞きます。子供が在園中に、園の方針やルールが変わってしまうことに戸惑う保護者は多いのではないでしょうか。介護もそうですが、保育についても人材不足の中で5年という指定期間を設けることで、人集めに苦労することもあるのではとの懸念もあります。教育・保育施設については、指定期間をもっと延長すべきと思いますし、継続性を重視するなら、外郭団体に限らず非公募を適用してもよいのではないかと考えます。
指定管理者制度が導入されて15年が経過し、制度のメリット・デメリットが明らかになっています。施設の管理運営のあり方について、制度のメリットをより生かし、デメリットを軽減できるよう見直しを行うべきです。区有施設の管理運営については、どうしてもセーフティーネットとして必要な福祉施設や寄贈者との約束がある文化施設など、行政の責任として行う事業は直轄で行うべきであると考えますが、現状のまま指定管理者制度を活用していくのであれば、そういった施設を非公募と明記した上で指定期間も延長すべきです。また、教育・保育施設についても同様な取り扱いとすべきと考えます。
そして、それ以外の施設については、原則どおり公募を積極的に採用すべきです。行政計画には、今年度中の運営指針の見直しが明記されております。見直しに際して、指定管理者制度が台東区にとってよりよい制度となるよう検討していただきたいと考えますが、区長のご所見を伺います。
次に、福祉避難所の運営体制の強化について伺います。
局地的な集中豪雨や大型台風の影響によって、本年も日本各地で甚大な被害が多発しています。先週も台風15号が関東地方を直撃し、交通機関に多大な影響を与えたほか、千葉や横浜などでは大規模な停電が発生し、現在に至るまで完全復旧に至っていないなど、異常気象による自然災害が猛威を振るっています。台東区においても人的被害はなかったものの、倒木や家屋破損などの被害に見舞われました。水害による被害が各地で多発する中、区としても水害対策に力を入れ、洪水ハザードマップのリニューアルやコミュニティ防災のモデル実施など、減災対応に力を注いでいます。
また、震災対策においても、東日本大震災以降、地域防災計画の見直しや建築物の耐震化・不燃化の推進、備蓄品の充実、災害危険度の高い地域への初期消火資器材の整備、緊急医療救護所の設定、DIGやHUGなどの訓練ツールの充実、区独自の防災アプリの開発などなど、課題が山積の中、できることから確実に整備を進めており、大いに評価しています。
そして、高齢者や要介護者、障害者、妊産婦など、災害時に支援が必要な方々への対応についても、区は対策を充実しており、平成27年9月に避難行動要支援者避難支援計画を策定、対象範囲などを定め、要支援者名簿を作成し、平常時から避難支援関係者に情報を提供するなど、避難支援体制の整備をスタートいたしました。また、要支援者各個人の具体的な避難支援方法をまとめた個別支援計画の作成に取り組むこととしており、本年度には要支援者の避難経路、自宅の状況、病状、避難支援者などを把握し、個別支援計画の作成及び管理に関するモデル実施を行い、来年度には本格実施の予定となっています。
台東区においては、要支援者もまずは各居住地域の一次避難所で対応することとなっておりますので、一次避難所までの支援体制を整備していくものだと理解しておりますが、要支援者の避難を検討するのであれば、一次避難所までだけでなく、その後のこともしっかり決めておく必要があるのではと考えます。要介護者や障害者など、通常の避難所では対応が困難な方々は、一定期間の経過後、福祉避難所へと移行することとしており、現在、区では特別養護老人ホームや松が谷福祉会館などの福祉施設を福祉避難所として指定しています。
阪神・淡路大震災や東日本大震災では、時間の経過とともに避難所生活者のストレスも限界を迎え、要支援者に配慮できる余裕がなくなり、支援を必要とする方が避難施設での生活を諦めざるを得なくなった実態が報道されていました。福祉避難所の整備運営は必須であり、運営などについて、そろそろ具体的なことを決めていく時期に来ているのではないでしょうか。
例えば、高齢者施設と障害者施設がある福祉避難所において、どの施設にどういう方を優先して避難させるのか、避難者の対象範囲は、各施設の受け入れ人数や量的な充足度、備品やサポート人員などの受け入れ態勢、医療体制との連携などなど検討課題は山ほどあります。災害発生後の異常事態の中、ルールも何もない中で福祉避難所を開設するのは不可能に近いのではないかと、近年、各地で起きている災害事例を見るにつけ、懸念しています。災害時、その場での臨機応変の対応となるのはいたし方ない部分もありますが、マニュアルを含め、できる限り平時の備えをしておくべきと考えます。
今定例会の区長発言にもありましたが、蔵前、千束、三ノ輪の特別養護老人ホームを統合し、新たな施設整備を行うことになりました。また、障害者施設の拠点である松が谷福祉会館も改築することとなっています。これらの施設は、福祉避難所の核にもなり得るものであります。施設整備の計画段階で、福祉避難所の課題点をしっかりと把握し、少しでも課題解決の一助になるような役目を担えるよう、整備計画に反映すべきです。
委員会などにおいて、新たな高齢者保健福祉計画や障害福祉計画を策定する際にも発言させていただき、それぞれ計画において、福祉避難所の運営体制の取り組みの推進が位置づけられています。福祉避難所の運営体制の強化を行うためには検討課題も多く、所管も多岐にわたっていて、簡単なことではないことは十分理解しておりますが、いつ起こってしまうのかわからないのが自然災害であり、その自然災害に対する備えをしっかりと進めていくべきです。個別支援計画の作成や福祉避難所の核となり得る施設の建築計画を作成する今だからこそ、福祉避難所の運営体制の強化へ向けた取り組みをスタートさせるべきと考えますが、区長のご所見を伺います。
以上で質問は終わります。ご清聴ありがとうございました。」

区長 答弁

「早川議員のご質問にお答えいたします。
ご質問の第1は、指定管理者制度についてです。
本区では、多様化する区民ニーズに、効果的・効率的に対応するため、平成16年度から指定管理者制度を導入しています。これまでも指定管理者制度の適切な運用を図るため、選定手続を明確化するなど、指定管理者制度運用指針については、必要に応じて改定を行ってきたところです。
現在、教育・保育施設や福祉施設においては、より継続して安定的な管理運営を行うため、公募・非公募の選定方法や指定期間など、今年度中の運用指針の改定に向けて庁内で検討を進めています。早川議員ご提案の趣旨についても、この検討の中で生かしていきたいと考えています。今後も、利用者が安心して指定管理施設をご利用いただけるよう、指定管理者制度の改善を図るとともに、より一層の区民サービスの向上に努めてまいります。
ご質問の第2は、福祉避難所の運営体制の強化についてです。
現在、区では、避難所で対応が困難な要配慮者を受け入れるため、専門的な人材や設備が備わった社会福祉施設等を福祉避難所として指定し、食料や水等を備蓄しているところです。避難した要配慮者の方々に適正な支援を行うため、福祉避難所の運営体制を強化することは大変重要であると私も認識しています。
福祉避難所の開設・運営については、職員行動マニュアルにおいて区職員の手順を定めております。今後、関係団体の意向や他自治体における実際の運用状況などを踏まえながら、施設の受け入れや入所後の支援、必要な物資の備蓄など、より具体的な検討を進めてまいります」

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