代表質問全文 (令和2年第1回定例会)

2020/03/10

早川太郎質問

「つなぐプロジェクト、早川太郎でございます。会派を代表して区長に2点伺わせていただきます。
まず初めは、財政についてです。
今定例会で提出された補正予算案では、区民税は約2億8,000万円、特別区交付金に至っては25億円の増収が新たに計上され、一般会計では基金の活用を36億円見込んでいるものの、公共施設建設基金や財政調整基金など、約72億円を積み増したことにより、基金残高は約508億円となっており、台東区の財政状況は安定してきているようにも見えます。しかし、令和2年度一般会計予算案を分析してみると、区民税は、前年度当初予算に比べ約3億7,000万円ふえて、約195億円となっているものの、ふるさと納税の影響額は約10億円の減収見込みであり、影響額は平成27年度推計値、約3,500万円から、わずか5年で30倍近くになっています。昨年3月の法改正により、返礼割合は3割以下になどの規制が強化され、違反した自治体への寄附を特例控除の対象から除外するなど、国は本来の制度から行き過ぎてしまった実態を改善すべく動き出しましたが、制度自体が浸透してきていることなどもあり、ふるさと納税を選択する方は確実に増加していて、今後も減収懸念は一向に払拭されておりません。
昨年10月に実施された消費税10%への引き上げにおける区財政への影響では、地方消費税交付金は約12億円の増額となっていますが、区が支払う消費税も増額となっており、8%から10%への引き上げによる影響額は約5億円、また、法人住民税の国税化が消費税率引き上げ時にさらに強化されたことなどの影響で、特別区交付金は今回増額された補正予算後の額と比べればマイナス29億円にもなっています。翌年度以降もさらに影響額が増加していくので、さらなる減額となっていきます。さらに、令和2年度の東京都の予算では、法人事業税の一部国税化など、昨今の国の制度変更による都の減収は1兆円近くとなっています。来年度は都知事選も実施される予定であり、その影響はほとんどないように思えますが、今後、都の補助金なども見直しが検討されることは十分想定される事態であり、台東区への財政的な影響を非常に懸念せざるを得ません。消費税引き上げは、その引き上げとセットで行われた不合理な税制改正などによって、台東区にとってはプラス要因どころか、大変なマイナス要因となります。
さらに、2年前には35億円あったたばこ税も今年度は約30億円、受動喫煙防止対策の法整備が進められ、昨年7月から本庁舎など、区有施設内において喫煙場所が廃止されたように、喫煙場所の規制強化が一部実施されました。喫煙機会の減少は、たばこの売り上げに影響を及ぼし、売上本数は、前年と比べ6%を超える減で、税率の引き上げによって9,000万円強の減額見込みとなっておりますが、本年4月には全面的な規制強化が実施されることになっていて、今後大幅な減収が危惧されます。
歳出面を見てみれば、人件費は前年度に比べて約13億円の増で、約192億円となっています。来年度から会計年度任用職員制度がスタートとなり、非常勤職員の処遇改善などの規定整備が行われ、期末手当や共済費が増額となり、影響額は5億5,000万円となりました。今後も多様化する区民ニーズへの対応や働き方改革の対応などによっては、職員数は増加していきます。当然人件費は増加していき、固定費は上昇します。
子育て支援対策では、子ども・子育て支援新制度にかかわる総事業費が約137億円となり、そのうち保育園、幼稚園などのランニングコストは約113億円かかっていて、新制度が始まった27年度と比べると5年間で51億円も増額となっています。今年度、新たな子ども・子育て支援事業計画を作成することとなっており、新たに試算された保育需要数を確保するための施設整備が行われていきますが、保育の需要は年々増加しており、今後も増加していくことでしょう。そうなれば、目標数値と現実の需要の乖離を埋め切れていない状況が続いていきます。また、次期計画期間内では0~2歳児保育後の3歳児の受け皿となる連携園対応を行うこととなるので、現行の対応を続けていくとするならば、かなりの数の保育施設整備が必要となってくるのではないでしょうか。施設整備費やランニングコストはさらにふえていくことになるでしょう。また、1校当たり2,000万円強の支出を伴う放課後子供教室の拡充や約8億円の支出を計上したICT教育推進のための環境整備のさらなる充実など、子育て支援経費はさらに上昇が予想されます。
心身障害者福祉費では、前年度に比べて2億円増の約53億円、グループホームなどの施設整備は現状で足りているわけではありませんし、その施設利用者が高齢化したときの対策を検討していかなければなりません。また、子供たちが対象の児童発達支援や医療的ケアなどの充実など、今後も事業費は増大していきます。
区有施設の維持管理では、保全整備費の総額は30年間で約853億円との試算でしたが、昨年12月の委員会で報告された内容によれば、人件費や材料費の上昇と消費税増税などから、約1.4倍、約1,184億円になるとのことでした。今後とも多額な経費がかなりの期間必要となってきます。さらに、区有施設の適正化を図っていくのなら、例えば竜泉二丁目福祉施設のような新たな施設整備費やその整備によってあいた施設を整備するための費用が必要となります。また、検討が進められている大規模跡地の整備や100億円近い工事費がかかりそうな凌雲橋のかけかえなど、多額な費用が必要であり、投資的経費も増大していきます。そのほかにも、上野、谷中、北部地区に続いて、浅草地区、鶯谷駅周辺のまちづくりの検討がスタートし、インフラ整備が行われていく予定であり、よりリアルになった風水害などへの減災対策の充実、ユニバーサルデザインへの対応などもしっかりと推進していかなくてはなりません。
多額な費用が見込まれる課題は多数あります。新型コロナウイルス感染拡大による観光、製造業への影響や、中東地域の緊張など、景気後退リスクは多数あり、我が国の経済は先行き不透明感が増してきています。
令和2年度一般会計予算案は、投資的経費が約75億円と、例年に比べ少ない年度であるにもかかわらず、予算総額は1,037億円で、区政史上最高額となっており、基金の活用はリーマンショック後の24年度と同じ規模、57億円となってしまいました。かなり近い将来、1,100億円も超えていくでしょう。人件費、扶助費などの義務的経費の増加や、特別区交付金などの一般財源の減収が見込まれる中、30年度で84.5%だった経常収支比率は高まっていくことでしょう。結果、財政構造の硬直化も進んでいきます。昨年7月に作成された行政計画での財政フレームでは、令和2年度の歳出総額は約1,008億円だったはずであり、既に大幅に超過せざるを得なくなっています。台東区の財政状況は、予断を許さないどころか、大変な危惧を抱かざるを得ない状況となっています。ここ数年は、将来に備え、基金をしっかりと積み増してきましたが、令和2年度を転換点として、厳しい財政状況が現実化してくるのではないかと強く懸念しています。しかし、今後財政状況が悪化していくような状態になっても、多様な行政ニーズへの対応、さらなるセーフティーネットの確立、未来に向けた投資などは充実していかなくてはなりません。
令和2年度予算案編成を終えて、区長は、区財政に対してどのような認識を持ち、今後どのような区政運営をしていくのか、所見を伺います。
次に、情報化推進について伺います。
先ほど述べたように、財政状況が厳しくなってきたとしても、区民サービスの拡充やさらなるセーフティーネットの確立、未来に向けての投資はできる限り実施すべきであり、そのためにも行政経営の改善はしっかりと進めていかなくてはなりません。そのツールの一つがICTの活用であり、日進月歩の発展を続けているICTを効率的・効果的、そしてタイムリーに使いこなしていくことが必要です。台東区では、平成13年に全庁LANの基盤整備を行ったほか、公共施設予約システムなどの導入を実施、そして、現在の情報化推進計画では、さらに活用を進めていて、ペーパーレス化の対応や情報システムのクラウド化、オープンデータの実施、無料公衆無線LANの環境整備など、ICTの活用を推進してきており、大変評価しています。今後もさらにアクセルを踏み込んで、ICTの利活用を積極的に推進すべきと考えます。
総務省の通信利用動向調査によれば、平成30年のインターネットの人口普及率は約8割、スマートフォンを保有している世帯の割合も約8割であり、多くの方が暮らしの中で当たり前のようにICT機器やインターネットを活用する時代になってきました。また、台東区民のパーソナリティーも変化し、区内で就業する方も減り、ダブルインカムの世帯もふえたことにより、仕事を休まないと役所に来れない、そういった人もふえています。グローバル化も進み、区民の外国人比率も8%、外国人観光客も激増しています。そういう時代に対応するよう、行政も取り組みを進めていかなくてはなりません。
区民サービスの拡充でいえば、例えばマルチペイメントの導入、台東区では集会室などを利用する際に公共施設予約システムを導入していますが、事前に窓口に行っての現金払いが必要です。昨年10月の消費税率引き上げに伴い、国はキャッシュレスサービスポイント還元事業を行い、クレジットカードや電子マネーなどでキャッシュレス決済を推進しています。行政計画では、令和3年度に多様な手段による納付方法の導入を実施としていますが、多様な電子決済を可能とするマルチペイメントの導入を一刻も早く実施すべきと思いますし、電子申請、昨年、デジタル手続法が成立し、行政手続のオンライン実施が原則化されました。マイナポータルを活用し、電子申請を実施している自治体は増加しています。台東区では、マイナポータルに子育て関係の幾つかの手続を掲載していますが、書式をダウンロードした後に、窓口申請となるため、電子申請となっていません。港区では、マイナポータルに88の手続を掲載しており、そのうち、保育園申し込みといった子供関係の手続など、36の手続が電子申請可能となっています。台東区でも早期に実施すべきではないでしょうか。また、窓口など、区民との応対でいえば、多言語への対応やわかりやすい説明など、タブレット端末導入の効果は高いのではないでしょうか。導入効果の高い部署から実施すべきです。
さらなるセーフティーネットの確立でいえば、要保護児童対策として、虐待に至る前のサポート環境を充実させるための初期対応などが迅速、的確に行われるような体制整備を充実させるべきであり、妊娠期からの母子情報や家族情報、サービス利用の状況などを一元管理し、保健サービス課や子ども家庭支援センターなど、関係部署との迅速な情報共有及び支援体制の構築のため、システムのデータ連携は必須だと考えます。また、今まさに新型コロナウイルスなど、感染症への不安が増しています。感染症の広がる範囲を少しでも抑えていくための予防対策の充実が重要です。その対策の一つに学校欠席者情報収集システムがあります。感染症の集団発生を早期に探知し、早期対応するためのサーベイランスシステムで、保健所、教育委員会、医師会、園医などが同じツールを活用し、施設及び地域情報を把握して見守り体制を構築することで、子供の健康を確保していくことができる画期的なシステムです。台東区では、現在幾つかの私立保育園で導入されているようですが、学校や幼稚園、保育園など、台東区の全ての施設が加入することでより効果的な感染症の予防対策が実現可能と考えますので、早急に全施設への導入を図るべきではないでしょうか。
行政経営の改善でいえば、今年度はRPAを3事業でモデル実施していて、来年度は3事業ふやすこととしていますが、RPAのシステムは導入に当たって、事業をもう一度洗い直して業務の改善をしっかりと行ってから導入することで、より効果を発揮します。そういったことも含めて、業務改善をしっかりと行っていただきたいし、できる限りスピーディーに、かつできる限り導入事業も拡大すべきです。また、オープンデータも現在CSV形式で35のデータを公開していますが、協働の推進などの二次利用を促進するため、データ数の充実やアイデアソンの開催など、取り組みを推進していただきたいと思っていますし、協働ということでは、千葉市では、ちばレポという事業を行っていて、例えば道路が傷んでいるなど、地域での困った課題をICTを使って市民がレポートすることで、市民と行政、市民と市民の間でそれらの課題を共有し、合理的、効率的に解消することを目指す取り組みを実施しています。多数の自治体で既に同様な取り組みが実施されています。ぜひとも検討していただきたいと思います。
将来に向けての投資でいえば、ICT教育の推進、予算案では全ての小・中学校に無線LAN環境を構築し、3学級に1学級分のタブレットパソコンを整備することとしています。しかし、国では、さらにアクセルを踏み込んでいて、1人1台端末や高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するなどのGIGAスクール構想の実現に向けて、昨年12月に閣議決定された総合経済対策の中で、2023年度までに全学年の児童・生徒一人一人がそれぞれ端末を持ち、十分に活用できる環境の実現が盛り込まれ、さらに、今年度の補正予算にて1人1台端末の整備などの補助事業を行うこととしています。モデル校である蔵前小学校では、6年生に1人1台の活用も研究しています。将来的にはICTを利用しない仕事はないとも言われており、学校教育でも鉛筆や消しゴムと同様、当たり前のように利用できることが必要です。台東区としても1人1台体制の実現に向けた検討や活用内容に合わせた機器の検討、キャリアつき機器の検討なども早期に行っていただきたいと思います。
来年度は、5年に1度の情報化推進計画の作成年度であり、その年度に合わせて、情報政策課を開設することは、教育委員会も含めて、全庁的にICT活用をしっかりと推進し、早期の実施に向けてアクションを起こしていく、そういった意気込みだと思っていますが、区長の意気込みも含めて、情報化推進についての所見を伺います。
以上で、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。」

区長 答弁

「早川議員のご質問にお答えいたします。
ご質問の第1は、区財政についてです。
令和2年度予算においては、子育て支援の充実や教育環境の整備などにより、一般会計予算規模は過去最高額の1,037億円となりました。一方、歳入は、不合理な税制改正などによる減収の影響もあり、これまでに積み立ててきた基金を積極的に活用し、行政需要に対応したところです。しかしながら、特別区交付金は今後も大きく減収となることが危惧され、歳出では、引き続き待機児童対策や区有施設の長寿命化への対応などの需要増が見込まれることから、区の財政状況は今後、厳しい局面に立たされる可能性があり、予断を許さない状況であると認識しています。そのため、さらなる事務事業の効率化を進めるとともに、国や都支出金などの確保や区有財産の有効活用など、より一層の財源確保に努めてまいります。また、今後の景気変動や財政需要の増加などによる財源不足の際には、基金や起債を有効に活用し、健全で安定的な財政運営をすることで、長期総合計画や行政計画に基づく事業を着実に実施するとともに、喫緊の課題に対しても的確に対応し、区民福祉の向上に努めてまいります。
ご質問の第2は、情報化推進についてです。
近年、ICT環境は急速に変化しており、IoT、AI、5Gなど、さまざまな技術の発展と普及は区民生活や行政サービスに大きな変化をもたらします。区民サービスの向上や行政運営の効率化を実現する上で、ICTの効果的な利活用が重要な要素となっていることは私も認識しています。そのため、新設する情報政策課のもと、AIやRPAの導入推進、オープンデータ化の推進など、区の情報化施策を計画的かつ統括的に展開してまいります。また、区民サービスの利便性向上に向けて、電子申請を一層推進するために、区への申請や届け出について、従来の書面申請に加えて、電子申請を可能とする条例を今定例会に提出しています。区の情報化推進計画は、計画期間の4年目を経過しようとしており、策定当時は想定していなかった先端技術が既に活用され始めています。また、国はソサエティー5.0という目指すべき社会の姿を示し、デジタル社会への変革を推し進めています。私は、急速に変化するICT環境に柔軟、かつ的確に対応するため、区民サービスの向上、業務の効率化などの視点から情報化推進計画を改定し、区政の課題解消に向けた取り組みを適時適切に講じてまいります。今後ともICTの効果的な利活用を通じて、区の情報化を力強く進め、区民の利便性の向上と地域の活性化に努めてまいります。」

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