2019/07/10
早川太郎質問
「つなぐプロジェクト、早川太郎でございます。平成から令和に改元が行われ、台東区においても服部区政の2期目を迎えるとともに、台東区議会も19期がスタート。20年先の将来を見据えて策定された基本構想、その基本構想実現のための施策を計画づけた長期総合計画がこの年度からスタートいたします。そういった時期に、改めて区長並びに教育長に3点伺わせていただきます。
まずは、区財政についてです。
今年度当初予算は、対前年度11億円のマイナス、995億円でありましたが、これは3月に行われた台東区長選挙、区議会議員選挙を控え、原則として政策的な新規・充実事業の計上を見送った結果でありました。今定例会において、通常の当初予算で含まれている新規・充実事業が補正予算として計上され、予算総額は1,014億円、2年連続で1,000億円を超えていて、区政史上最高額となっています。しかし、3月には台東区の人口が20万人を超えていて、1人当たりの行政コストで比較してみれば、29年度は51万円、30年度は51万3,000円、今年度は50万9,000円となり、人口当たりで見れば今年度予算もここ数年の財政規模とほぼ変わらない予算だと言えます。特別区民税は納税義務者数の増などにより8億6,000万円増となりましたが、特別区交付金は7億円減となるなど、前年同様、基金の取り崩しは30億円を超えて約34億円、区債発行も20億円を超える額が計上されています。
さらに、将来の懸念材料を申し上げれば、歳入では、本年10月に消費税10%への税率引き上げが予定されていて、地方消費税交付金も増額となることでしょう。しかし、28年度税制改正により、特別区交付金の財源である法人住民税の国税化が、消費税率引き上げ時にさらに強化されることや、区が支払う消費税の増額などにより、区財政への影響は大幅なマイナスとなります。また、31年度税制改正で法人事業税の一部国税化が決定され、法人住民税、事業税の国税化や、30年度に実施された地方消費税の配分見直しなどを合わせると、昨今の国の制度変更による東京都の減収は1兆円近くとなっています。一般会計7.5兆円規模の都が1兆円近くの減収となれば、支出金なども見直しが検討されることは十分想定される事態であり、都支出金83億円を活用している台東区への財政的な影響を非常に懸念せざるを得ません。
また、ふるさと納税の影響額は、27年度の決算額の推計値、約3,500万円から年々増加し、今年度予算では約7億4,000万円程度の減額見込みとなっています。国も3月に法改正を行い、返礼割合は3割以下になどの規制を強化し、違反した自治体への寄附を特例控除の対象から除外するなど、本来の制度から行き過ぎてしまった実態を改善すべく動き出しておりますが、今後の減収懸念がなくなるものとは思えません。
さらに、約31億円の税収があるたばこ税も、受動喫煙防止対策の法整備が進められ、この7月から喫煙場所の規制強化が一部実施され、来年4月には全面的な規制強化が実施されることになっています。喫煙機会の減少は、たばこ税の大幅な減収に直結します。将来の医療費の減少につながるかもしれませんが、その効果があらわれるまでには相応の期間が必要であり、財政の視点からだけ見れば、30億円を超える貴重な自主財源であるたばこ税の減収は、大変な懸念材料と言えるのではないでしょうか。
歳出面で言えば、子育て支援対策では、子ども・子育て支援新制度にかかわる総事業費予算が当初予算でも約136億円となっていて、新制度が始まった27年度予算額と比べると、約60億円の増額。保育園・幼稚園のランニングコストは約106億円かかっていて、わずか4年間で44億円の増額となっており、今回の補正分が加われば、さらなる増額となることでしょう。子ども・子育て支援事業計画も29年度中間改定を行い、保育施設の整備に努めてきましたが、目標数値と現実の需要の乖離を埋め切れていない状況が続いています。今年度は新たな計画策定を行うこととなっており、新たに試算された保育需要数を確保するための施設整備を行うこととなります。また、次期計画期間内では、0~2歳児保育後の3歳児の受け皿となる連携園対応を行うこととなるので、かなりの数の保育施設整備が必要となってくるのではないでしょうか。施設整備費やランニングコストはさらにふえていくことになるでしょう。
さらに、放課後子供教室の拡充やICT教育推進のための環境整備、子供の人口増加に伴う学校施設の整備、子ども医療費助成など、子育て支援経費は今後さらに上昇が予想されます。
また、心身障害者福祉費では、障害者差別解消法施行前の27年度当初予算と比べ、今回の補正を含む予算では約51億円と、4年間で約7.5億円の増。グループホームなどの整備は現計画の目標整備数のめどは立ちつつありますが、まだまだ施設整備は足りているわけではありませんし、その施設利用者が高齢化したときの対策を検討する時期にも来ています。また、子供たちが対象の児童発達支援や、障害者差別解消法を積極的に支援していくためのバリアフリー対応など、今後も事業費は増大していきます。
さらに、区有施設の維持管理、行政計画上の老朽化対策事業では、約29億円が計上されており、公共施設保全計画どおりに保全整備を実施していくのなら、今後とも多額な経費がかなりの期間必要となっていきます。維持管理だけでなく、区有施設の適正化を図っていくのなら、区民ニーズに対応するための改修・改築など新たな施設整備費用が必要となりますし、道路や橋梁などの災害対策にも多額な費用が必要であり、投資的経費も増大していきます。
そのほかにも基本構想で掲げた将来像を実現するために、例えば、暮らし続けられる台東区実現のための介護・医療・住宅政策や、安全・安心のための減災対策や防犯対策、まちづくりに伴うインフラ整備などなど、多額な費用が見込まれる課題は多数あります。
政府が発表した5月の月例経済報告では、景気全体の判断については下方修正しているものの、景気が緩やかに回復しているとの判断は維持していますが、10月実施予定の消費税率の引き上げや、米中貿易摩擦の影響など、景気後退懸念は否めません。
今後も歳入が削られ、国や都からの支出金が絞られるようなことになっていけば、区の一般財源からの支出が増大せざるを得ません。また、行政に求められるサービスも多様化・複雑化してきており、その需要に応えるために行政が行う事業は増加していきますし、国の制度変更などに対処するための事業もふえていきます。
基金残高は、30年度末で474億円ありますが、長期総合計画に示された財政フレームでは、10年間で繰入金は591億円が必要との試算もあり、必要な行政サービスの維持、推進に努めていくことは、大変厳しくなっていくことでしょう。
今後の台東区の財政状況が厳しくならざるを得ない状況を鑑みれば、今のうちに将来を見据えた対処策をしっかりと検討していくことが重要であり、今後も行財政基盤の強化に向けての取り組みを推進すべきと考えますが、区財政についての認識と今後の対応について区長の所見を伺います。
次に、協働について伺います。
19期台東区議会がスタートした5月より、台東区では、下谷神社などの祭礼を皮切りに、区内至るところで盛大なお祭りが行われています。お祭りは、神事という側面だけでなく、地域の一大イベントとして、町会を維持発展することにも多大な影響力を持っていて、台東区が日本一の地域コミュニティとしての町会組織を保持できていることの一因となっているかもしれません。台東区政にとって町会は区政運営をともに牽引してきた最大のパートナーであります。災害時の避難運営や地域の安全対策、ごみ収集、広報や広聴などなど、数え上げれば切りがないほど区のパートナーとして協働事業を行っていただいていて、現在の区行政の根幹を支えている団体となっています。
しかし、近年は、台東区の製造業や卸売業、小売店は激減し、区内就業者も平成12年の61.3%から、平成27年の36%と4割も減。マンション建設も激増しており、年間2万人が台東区に転入し、1万7,000人が転出しています。区民の働き方がかわり、ライフスタイルも多様化し、文化や価値観の違う方々もふえてきました。新住民への町会加入で苦労しているだけでなく、町会員のパーソナリティーが変化したことにより、町会活動を担ってきた役員のなり手が集めにくい状況になっています。現状のまま推移していけば、将来活動を維持できない町会が出てくることも懸念されます。
また、教育現場のパートナーであるPTAも、入学式などの式典のほか、運動会・研究発表などの公式行事のサポートや広報誌などの学校PRなどなど、幾多の事業を行っており、学校運営に欠くことのできないパートナーとなっています。しかし、子育て世帯の転入者やダブルインカム世帯も増加しており、他区の事例を見るまでもなく、今までのような活動を時間的にできない保護者も増加していますし、今までの活動に変化を求める保護者も増加していくのではないでしょうか。
それ以外にも、区内商工団体など、区民との協働事業を実施している団体は枚挙のいとまもなく、区民との協働は台東区の行政の強みでありました。しかし、それらの団体も、時代の変化によりパートナーとしての協働の土壌も弱まってきているのではないでしょうか。
一方で、やる気やノウハウのあるNPO法人などの団体や、公益活動を実践する企業などと区が力を合わせて公共的な課題解決に取り組む協働事業提案制度が29年度に実施されておりますし、区が実施している講座受講者の有志グループが団体を立ち上げ、区の協働パートナーとして活動を始めるなど、新しい協働の動きも始まっています。
今年度からスタートした基本構想を策定するための審議会に、私も委員の一人として参加する機会を得て、大変勉強させていただきました。前基本構想策定から14年がたち、社会の変化に対応するための策定でありましたが、私は社会の変化として、多様性への対応、飛躍的に進歩・普及したICTへの対応、そして協働への対応が新たな基本構想を策定する上での大きな変化だとの認識に立ち、委員として発言させていただきました。新たな基本構想にはそれら三つの変化への対応もしっかりと取り入れられ、大変評価しておりますが、もともとの強みであった既存の協働、新たに育み始めたNPOや企業、新たな団体などとの協働、どちらも大変重要なことであります。多様化・複雑化する区民ニーズに行政だけで対応していくのが困難になってきている現状を鑑みれば、協働をさらに推進していかなくてはなりません。既存の協働の土壌も弱まってきている状況を看過せず、協働が機能していくよう対応策を検討すべき時期に来ているのではないでしょうか。
定住施策を含むまちづくり政策、商住近接、ワーク・ライフ・バランスの推進などの産業政策、住民政策など、大きな政策の中でも、協働パートナーを育んでいく視点を持って施策展開していく必要もあると考えます。
基本構想、長期総合計画において、台東区の行政運営における協働をどのように位置づけ、どのように対応していくのか、区長のご所見を伺います。
最後に、ICT教育について伺います。
文部科学省の中央教育審議会において、新時代の学びを支える先端技術活用推進方策の中間まとめが本年3月に公表されました。中間まとめでは、学校ICT環境が脆弱であり、地域間格差があることが危機的な状況とされていて、これまで高等教育機関などが教育研究用として利用してきた世界最速級の通信インフラを、希望する全ての初等中等教育で利用できる環境の整備を進めるとし、今まで推進してきた校務系システムと学務系システムの通信経路を遮断していく方針を大きく転換、クラウド活用の検討も記載されており、ICT教育についての方向性が大きく転換されようとしています。
台東区においては、ICT教育の推進に向けて全小・中学校に電子黒板・実物投影機の配備、教員用タブレット型パソコンの配置、デジタル教科書の導入を行い、29年度には特別支援学級に、昨年度には小・中学校3校をモデル校として児童生徒へタブレット型パソコンの整備を行っています。昨年末にモデル校である浅草小学校の視察に伺いましたが、ICTの活用能力向上だけでなく、プレゼンテーション能力向上にもつながり、アクティブラーニングにも適したツールであるとの認識を持ちました。しかし、タブレットがフリーズしたり、ペンが利用できなくなったりと、同時に複数の子供たちに問題が起こったときの対応など、課題も認識できました。導入当初のバックアップ体制の整備は必須であります。他自治体では、1人1台キャリアつきのタブレットを配付しているところもあります。台東区のモデル校では、無線LAN対応で3学級に1学級分の配備を行っておりますが、習うより慣れろという言葉もあります。経費もかなりかかることではありますが、それらも検討すべきではないでしょうか。
さらに、小学生でも扱えるプログラミングソフトのスクラッチが利用できないタブレットを導入してしまうという事例もあると聞きます。環境整備に向けては、アンテナを十分高くして対応してほしいと思っています。将来的には、ICTを利用しない仕事はないとも言われており、学校教育でも、鉛筆や消しゴムと同様、当たり前のように利用できることが必要となってきます。一刻も早く区としてICT教育推進のための方策を決め、環境整備を図っていかなくてはなりません。
2020年、新学習指導要領の全面実施時期を見据え、ICT教育環境の整備に学校差が生じないよう、区内全校に児童生徒用タブレットの整備を進めていくと思っていますが、ハード整備は推進のためのスタートであり、その環境において子供たちが当たり前のようにICTを活用し学習すること、つまりは情報活用能力を育むことが重要です。今後のICT教育をどのように進めていこうとしているのか、教育長の所見を伺います。
以上で、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。」
区長 答弁
「早川議員のご質問にお答えいたします。
ご質問の第1は、区財政についてです。
ただいまは、区財政の現状、あるいは将来の懸念について、歳入・歳出の両面からさまざまなご意見をいただきました。
私も、不合理な税制改正等の影響による減収の影響や、さまざまな行政需要への対応による財政負担を懸念しており、財政運営は依然として予断を許さない状況であると認識しています。
このような状況の中、区民サービスの向上を図るため、行財政基盤の強化に向けた取り組みを推進することが重要です。そのため、債権の適正な管理や収入未済対策のさらなる強化、新たな収入確保策や歳出抑制につながる取り組みの検討を進めるとともに、効果的・効率的な業務の推進のため、ペーパーレス化やRPAの導入などによる業務の効率化を図ってまいります。
また、景気変動や財政需要の増加などによる財源不足に備え、基金を積み立てるとともに、起債を慎重かつ有効に活用し、健全な財政運営を推進してまいります。
ご質問の第2は、協働についてです。
社会状況が大きく変化する中、多様化・複雑化する地域の課題に行政だけで対応していくことは困難となってきており、協働による区政運営を一層推進していくことが必要となっています。
一方で、町会活動等において、高齢化による担い手の減少や、ライフスタイルの変化による人間関係や連帯意識の希薄化等により、協働の土壌は弱まってきています。
基本構想においては、区政運営の基盤となる考え方である、多様な主体と連携した区政運営の推進の中で、パートナーシップの促進を位置づけ、区民や町会のほか、NPOなどとともに、地域の活性化や課題解決に取り組んでいくこととしています。
また、新たな長期総合計画においても、協働の促進や区政の透明性の向上と区民参画の促進を施策として定め、パートナーシップの促進に向けた取り組みを示しています。
私は、多様化・複雑化する地域の課題解決を図っていくためには、その大きな原動力となる区民や町会、PTA、NPO、企業など、多様な主体との協働を促進していくことが大変重要であると認識しています。そのため、区民に対する協働意識の醸成や、区と協働で取り組む事業の提案募集、社会貢献活動を行う団体を支援する窓口の運営により、子育て、福祉、産業、まちづくり等、区のさまざまな分野における取り組みにおいて、多様な主体との協働を推進してまいります。さらに、地域の課題解決に取り組む団体相互の連携の促進や、民間企業の有する知見及び物的・人的資源の活用等により、地域の活性化やさまざまな課題解決を図ってまいります。
その他のご質問につきましては、教育長がお答えいたします。」
教育長 答弁
「早川議員のICT教育についてのご質問にお答えさせていただきます。
社会の急速な情報化が進む中、変化の激しい社会を生き抜くために必要な情報活用能力の育成には、ICT教育の推進が重要であると考えております。
平成29年度に検討会を立ち上げ、ICT教育環境の整備について検討し、平成30年度からは区立小・中学校3校をICTモデル校として指定し、現在も実践研究を進めているところでございます。
モデル校の実践におきましては、タブレットパソコンを教員が活用するとともに、子供たちもそれらを道具として使いこなすことで、主体的に考えたり、お互いに考え方を共有したりするなどして主体的・対話的な学びをしております。
教育委員会といたしましては、こうした実践は、教員の指導力向上に関する知見を得る上で有効であるとともに、情報活用能力の育成に資するものであると考えております。
今後もモデル校における教育実践から得た知見に基づき、ICT教育環境の全校整備を見据えながら、その環境を効果的に活用できるよう、教員の指導力向上に力を注ぐことで、子供たちの情報活用能力の育成を図るICT教育の推進を目指してまいります。」