2022/07/10
早川太郎質問
「つなぐプロジェクト、早川太郎です。
今回は、区長、教育長に2点、質問・提案させていただきます。
まず初めに、(仮称)北上野二丁目福祉施設の整備に向けた子ども・子育て支援充実のための情報連携の強化について伺います。
令和2年6月、3歳の女の子が数日間自宅に置き去りにされ、餓死してしまうという大変痛ましい事件が大田区で起こってしまいました。その事件を受けて、大田区では再発防止に向けて行政との接触機会等における課題と対応策をまとめた検証報告書を作成し、公表しています。
その報告書の中で、見えにくいものを行政としてどのように把握できるか、どうすれば支援を必要としている家庭に気づき、必要な支援を届けることができるのかという視点を中心に検討を行ったとの記載がありますが、その対応策の一つとして、システム連携による潜在リスクの可視化が上げられています。多角的な視点から、行政支援等の潜在リスクを可視化し、関係各課が共通認識を持って関与することで、切れ目ない支援を実現するため、住民記録、税務、生活保護、保健、児童相談、保育など、子供・子育てに関わる必要項目を集約したシステムを構築し、運用しています。
現在、台東区では、要保護児童については子育て世帯と一番接点を持っているはずの保健サービス課との情報連携について、対面の会議や電話、紙資料で行っていて、現在でもしっかりと連携していただいているとは思いますが、さらなる情報連携の強化が必要なのではないでしょうか。
また、要保護児童対策だけでなく、近年増加傾向にある児童発達支援についても、発見の制度や相談体制の質の向上に向けて、関係部署との情報連携の強化は必要であり、さらに不登校対応やスクールソーシャルワーカー事業を実施している教育支援館や学校、保育施設ともシステムを連携することで、早期に適切な支援につなげていくことが可能となるはずです。
国は縦割り構造を打破し、スピーディーに要望に応えられるようにすることを目的として、子供に関わる政策を一元的に担当する、こども家庭庁を来年4月に創設することとしていますし、全ての妊産婦、子育て世帯、子供へ一体的に相談支援を行う機能を有する機関の設置に努めることとするという児童福祉法の改正を行い、子育て支援事業の一体的運営を求めています。
また、昨年12月に閣議決定されたデジタル社会の実現に向けた重点計画では、デジタル庁は、各地方公共団体において、貧困、虐待、不登校、いじめといった困難の類型にとらわれず、教育、保育、福祉、医療などのデータを分野を越えて連携させ、支援が必要な子供や家庭に対するニーズに応じたプッシュ型の支援に活用する際の課題等を検証する実証実験を行うとしています。
今後、国も本腰を入れて子供や子育て世帯への支援充実のためのシステム連携の推進を図っていくことでしょう。
さらに、国は住民記録、税、福祉など18業務のシステムを国が策定する標準準拠システムへの移行を義務づけていて、区もその対応に向けた準備を進めていますが、その後のカスタマイズをどうしていくかという検討も必要になってきます。行政システムの大転換期であり、この機会に子育て関係の情報管理システムの連携強化も検討すべきだと考えます。
台東区においては、子供・若者総合支援施設として、(仮称)北上野二丁目福祉施設の整備を計画していて、子育て・若者相談支援や教育支援、児童発達支援センターの機能の一体化及び母子支援機能との連携などの検討を行っています。ぜひとも成長に応じた切れ目のない支援をしっかりと実施できる施設として整備していただきたいと願っていますが、その施設をより効率的・効果的に活用できるようにするためには、ハード整備だけでなくソフト面における環境整備も必要で、その施設が最大限効果を発揮できるよう、保健サービス課や子ども家庭支援センターはもとより、子育て・若者支援課や障害福祉課、保健予防課、学務課、児童保育課、教育支援館、保護課などなど、子育て世帯に関わる関係部署間での迅速な情報共有及び支援体制の構築に向けて、さらなる情報連携の強化を行うべきではないでしょうか。
子供・子育て支援に関わる情報管理データの連携は、対象部署や必要項目、個人情報保護、アクセス権限、そしてシステム構築と、検討課題は多数あり、検討期間もかなり必要です。(仮称)北上野二丁目福祉施設の開設に向けて、子供や子育て世帯への支援充実のためのシステム連携の強化に向けた検討を早急にスタートすべきと考えますが、区長の所見を伺います。
次に、待機児童解消に向けた放課後対策の充実について伺います。
その時々によって、区の最重要課題は変化しています。社会経済状況の変化や国などによる法や制度の整備、自然災害や疫病の発生、そして、それらの対策の進行などが主な要因ではあると思っていますが、ここ近年の最重要課題の一つが、保育所等における待機児童対策でありました。男女共同参画の浸透やバブル崩壊から続く経済の停滞、少子高齢化の進行によっての労働人口の減少、そして、個人の価値観の変化などにより、ダブルインカムの子育て世帯が増加する中、待機児童の増加が社会問題化し、さらに保育に欠けるから保育を必要とする、に入所要件が変更された子ども・子育て支援新制度が平成27年度よりスタート、女性活躍推進もアクセルが踏まれたことなど、保活という言葉が生まれるほど、保育施設整備は喫緊の最重要課題となっていましたが、平成28年に240人となった台東区の待機児童数は、その後の着実な施設整備により、昨年度は15人まで減少、施設によっては定員に満たない園も増えてきています。そういった意味では、台東区における保育の重点施策は量の整備から質の整備へと新たなフェーズへの転換が求められている時期に来ています。
保育施設の待機児童問題が着実な対策によって一定の成果が表れ出している反面、ここ数年はこどもクラブの待機児童問題が新たな課題となってきています。以前にも放課後の子供の居場所については、喫緊の重要課題となった時期がありました。区は平成20年、こどもクラブ整備の緊急対策として、3か年プランを作成、そのプランを基に小学校区でこどもクラブが整備されていない6校区への整備が計画され、7クラブの整備を実施、さらに新制度がスタートし、6年生までが対象にされたことなどを受けて、区は平成29年に放課後対策の方針を策定し、モデルで実施した石浜小学校を参考に、無料である放課後子供教室を長期休暇に対応して実施すれば、こどもクラブの需要減少が見込まれるとの判断もあり、その方針において、こどもクラブについては受入れ体制の充実を目指し、定員数の拡大で対応し、全児童を対象とした放課後子供教室を全校で実施する対策をメインとして、今年度10校で実施しています。
しかし、転入子育て世帯はダブルインカム世帯が大半であることなども起因して、保育ニーズは区の想定を超えて増加し、その延長である放課後の居場所を求めるニーズも増加しています。また、16時45分までの放課後子供教室では、こどもクラブニーズを吸収し切れていないことなど、昨年度は区全体で100名を超える待機児童となり、今年度はさらに増加しているのではないでしょうか。新制度スタート時の27年度と比較すれば、昨年度の1歳児の保育ニーズは45.8%から69.2%と大幅に増加していて、国が掲げる女性の就業率が8割であることを考慮すると、保育ニーズも8割まで増加していくことは十分考えられることであります。今のこどもクラブの定員では地域によってはとても賄い切れないのではないでしょうか。
今後、放課後子供教室の整備が進めば、待機児童は一定数吸収できるとは思いますが、保育施設の在籍児童数がこどもクラブに移行していくと仮定すれば、こどもクラブは保育施設よりも保護者の同伴がない分、通える施設の選択肢は限定されているので、地域によってはさらに待機児童は増加していくこととなります。さらなるこどもクラブの整備に向けた検討は必要です。待機児童解消に向けた今後の取組として、放課後子供教室の整備を早急に進めていくとともに、こどもクラブについては、公設での整備のほか、民間学童の誘致も解決策の一つとして検討すべきではないでしょうか。民間学童の誘致は、解消に向けての選択肢が増えることになり、特色あるサービスを実施している事業者の区への参入を促すことにもつながります。ぜひとも検討していただきたいと思いますが、質の低下や利用料が高くならないよう、補助制度の検討も併せて行っていただきたいと思います。
また、地域によっては施設整備が整うまでの間、放課後子供教室の18時までの時間延長という手段も考える必要があるかもしれません。待機児童解消に向けて、既存の枠組みだけでなく、新たな方策を検討し、その実行計画となる緊急整備プランを策定すべきと考えますが、教育長の所見を伺います。
以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。」
区長 答弁
「早川議員のご質問にお答えいたします。
ご質問の第1は、(仮称)北上野二丁目福祉施設整備に向けた子ども・子育て支援充実のための情報連携の強化についてです。
現在、検討している当該施設の整備では、子供・子育て支援の機能として、児童福祉、障害福祉、保健及び教育の大きく4つの分野の関与が必要です。このような状況において、個々に応じた支援を継続して的確に実施していくためには、情報連携の強化が必要であり、相談内容の共有が重要な課題と考えています。システム連携の推進については、個人情報の取扱いなど、関係部署間のデータ連携に関する課題の把握と整理を早急に進めてまいります。
その他のご質問につきましては、教育長がお答えいたします。」
教育長 答弁
「早川議員の待機児解消に向けた今後の方策についてのご質問にお答えさせていただきます。
教育委員会では、これまで、こどもクラブの定員拡充や新規の整備、放課後子供教室の全校実施に向けて取り組んでまいりました。しかしながら、こどもクラブの需要は高まり、待機児童は増え続けております。このような状況を重く受け止め、既存の取組を一層加速させるとともに、新たな方策として民設こどもクラブの誘致についても検討してまいります。
また、放課後子供教室の時間延長につきましては、改めて課題を整理してまいります。
教育委員会といたしましては、引き続き、待機児童の解消に向けて、実効性のある緊急的な対策を速やかに取り組み、安全・安心で放課後の居場所づくりに努めてまいります。」