2020/07/10
早川太郎質問
「つなぐプロジェクト幹事長の早川太郎です。会派を代表して、区長、教育長に大きく2点伺います。
まず初めに、今後の区政運営について伺います。
今年に入り、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、世界的なパンデミックが起きてしまいました。我が国においても、医療現場の危機的状況が現実のものとなり、感染拡大防止のため緊急事態宣言が発令され、企業活動の自粛やテレワークの推奨、各施設の休館、不要不急の外出を控えることなど、区民生活にも多大な負担がかかっています。
台東区においても、区有施設の休館、イベントの中止、学校園の休校、保育所の自粛要請、窓口の対応や職員の勤務体制など、感染防止対策がなされており、緊急事態宣言は解除されましたが、残念ながら新型コロナウイルス感染症の終息がいまだ見えない状況が続いています。
令和2年度予算が3月末に可決され、現在その予算を基に区政運営がなされていますが、歳出でいえばオリンピック・パラリンピック関連予算の多くや、中止が決定しているイベント予算については、今年度は執行されないことになるでしょう。また、区有施設も休館している施設が多く、その管理運営費も減額となりますし、各種助成事業なども、この状況下では執行がどこまで延びるか分かりません。歳入についても、区有施設の使用料収入や、自粛要請を行った保育施設の保育料などは減額となります。また、特別区交付金、地方消費税交付金などの交付金も、非常事態宣言の影響で減額となる可能性が高いのではないでしょうか。
既に令和2年度の予算は、新型コロナウイルス感染症の影響で現実から乖離した予算となっています。国や都も新型コロナウイルス感染症対策関連の補正予算を行っておりますし、区も補正予算で新型コロナウイルス感染症の影響でダメージを受けた区民や企業などに対しての施策などを実施していますが、十分ではなく、さらなる対応が必要となってくるはずです。
当分の間、特別区税や特別区交付金はかなり厳しい状況に陥ることでしょう。さらに、今回の新型コロナウイルス感染症対策で国も都も多大な財政出動を行っており、アフターコロナでは歳出を絞らざるを得ない状況が来るはずで、国や都の補助金が絞られてくる可能性は極めて高いと思います。
前定例会の代表質問でも、区の財政状況は大変な危惧を抱かざるを得ない状況となっていると述べましたが、リーマンショック後どころではない、極めて厳しい状況になってしまうのではないかと憂慮しています。
中長期の財政フレームを新たに試算し、今年度の歳出見込みと歳入見込みを把握しなければ、区として新型コロナウイルス感染症関連の施策展開をしっかりと行うことは難しいのではないでしょうか。減額補正もしっかりと行うなど、予算の組替えが必要ではないかと考えます。
また、予算だけでなく、計画の見直しも必要です。例えば実施計画である行政計画は、今年度、計画目標を達成することがほぼ不可能となった事業も多いのではないでしょうか。計画期間は来年度まであります。見直しは必須です。
中長期の計画についても見直しが必要です。今回の新型コロナウイルス感染症は、社会に対して大きな変革をもたらしています。テレワークの実施などにより、働き方が大きく変化していくのではないでしょうか。今後、オフィスを閉鎖、縮小する企業も増加すると思いますし、毎日の通勤が必須ではなくなるかもしれません。結果、在宅ワークに適した広さや部屋数が、住居の選択基準の重要な要素になることでしょう。
感染防止の手段として、情報通信機器の活用がさらに加速しました。物流もさらに進化していくことになるでしょう。社会的大変革が起きれば当然、区の人口推計も大きく変化していきますし、行政サービスに求められるプライオリティーも変わってきます。各種計画の根本が変わってしまうということです。
また、財政状況が厳しくなってくれば、財政健全化の名の下に、長期的には費用対効果が高い事業も見送られることもあるかもしれませんし、将来を見据えれば、今、行わなくてはという事業も先送りされてしまうかもしれません。過去の例を見ても、中長期的視野がおろそかになってしまうのではとの懸念があります。そうしたことが起こらないようにするためのものが計画であると思っています。
今回の新型コロナウイルス感染症は未曽有な事態であり、現状にスピーディーに対処するために、緊急的な対応や柔軟な対応は、当面必要だと考えますが、現行計画のままでいくと計画と現実の乖離が激しくなり、計画そのものの意味がなくなっていきます。ウイズコロナ・アフターコロナには、長期総合計画や都市計画マスタープランなども含め、多くの計画をつくり直して区政を進めていくことが必要と考えます。
区長発言の中で、当面の区政に当たっては、施策や事業の見直しを進めていくとの発言もありましたが、今後の区政運営をどう進めていくのか、区長の所見を伺います。
次に、ウイズコロナ・第二波への備えについて伺います。
緊急事態宣言が5月25日に解除されましたが、新型コロナウイルスの感染が終息したわけではありません。ワクチンなどが世界中に普及するまでは、新型コロナウイルス感染症との折り合いをつけながらの生活、つまりはウイズコロナへの現実的な対応をしていかなくてはなりません。
また、新型コロナウイルス感染拡大の第二波の可能性は否定できず、再度の緊急事態宣言の発動を視野に入れた、できる限りの対応策をしっかりと行っていくべきと考えます。
区役所でパンデミックが起こってしまったら、一時的かもしれませんが、行政サービスがストップしてしまうこともあり得ます。そうした最悪の事態を回避するための対策は最重要課題です。
区職員の感染拡大防止を図るため、緊急事態宣言中では自宅勤務割合7割、この6月からは5割を目標としていて、状況を見ながら徐々に割合を下げていくことになると思いますが、庁内でフル勤務体制になるには、まだ相応の期間が必要ではないかと思います。多くの職員が在宅ワークを行っていますが、テレワークについては、個人情報保護などの課題もあり、試算結果では費用対効果にも課題があるとの委員会答弁もあったとおり、区ではテレワークの体制整備が進んでおらず、現状、在宅ワークにおいて庁内で働いているときと同じような効率を求めることは、非常に困難であると思います。
しかし、今はまさに社会の転換期であり、さきにも述べたように、行政として取り組まなくてはならない業務は山積しています。少しでも事務効率を向上させるためには、在宅ワークの効率を上げる環境整備を早急に検討・実施していかなくてはなりません。
また、感染拡大防止のためには、区役所への来庁を少なくすることも重要です。感染症への対応として、郵送やパソコンなどを活用した行政手続を推奨する取組を行い、電子申請への誘導も図っていますが、オンラインで完結するものはごく一部であり、大半がダウンロードした後に郵送となっています。さきの定例会で電子申請を推進するための条例制定を行っているのですから、ウイズコロナ・第二波への備えとして、オンラインで申請が完結できる手続を充実したり、マルチペイメントを導入し、来庁しなくても手続ができる体制整備を早急に行うべきです。
さらに、代表質問でも情報化推進を提案させていただきましたが、勤務体制が通常とは異なる中、また財政が厳しくなっていく中でも区民サービスが充実できるよう、RPAの導入事業を早急に拡大すべきと考えますし、オープンデータの利用促進や、区民との協働でICTを活用して、地域課題を解決していく取組なども実施すべきです。
現行の情報化推進計画の目標年度にとらわれず、計画外のことであってもできることから早急に実施していくべきと考えます。
区長発言では、行政手続のオンライン化や、キャッシュレス化などを一層推進するなど、新たな日常に対応すべく区役所業務の改革を進めていく旨、発言がありました。区長のウイズコロナ・第二波への備えとして、情報化推進を早急に進めていくと思っていますが、在宅ワークの環境整備も含めて、情報化推進についての区長の所見を伺います。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、子供たちや子育て世帯にとっても保育園の自粛、小・中学校、幼稚園などの休校・休園、そしてこの6月からの分散登校などにより甚大な影響を及ぼし、多大な負担がかかることになっています。今後も感染防止対策の強化と今回の休校・休園などから得た課題を基に、第二波を見据えた備えをしっかりと行っていかなくてはなりません。
休校が実施されている5月初旬、会派で小・中学校の保護者を対象に、オンライン教育などについてのアンケートを実施いたしました。インターネットのみを活用したアンケートに対して、僅か10日間で1,400を超える回答をいただけたこと、今回の事態に対して保護者の方々の不安や、関心の高さの表れだと思っています。このアンケート結果などを基に、子供たちの権利が守られ、健全な毎日を送ることができるよう、今後の感染防止対策の強化、また第二波への備えとして、区に実施していただきたい施策を取りまとめ、既に要望書を提出させていただきました。
その要望書の内容は、体温管理のためのサーモグラフィーなどの導入や、サーベイランスシステムの導入・活用などの感染防止対策の強化や、教育委員会の方針などが保護者に検討状況なども含めて、速やかに確実に伝わるよう複数媒体を活用することなどの情報公開の充実、早期の情報連絡体制の構築と双方向通信のため1人1件のアカウントの取得などの連絡体制の整備、要保護児童や感染症に対する不安から登校をためらう家庭などへの対応として、オンラインを積極的に活用することなどのセーフティーネットの充実、そしてオンライン教育の促進でありますが、今回は学校などのICT活用について、教育長に伺わせていただきます。
ICT教育の推進については、以前の代表質問でも述べました。国はGIGAスクール構想を掲げ、推進しています。将来的にはICTを利用しない仕事はないと言われていて、早急に進めていただきたいと要望していましたが、新型コロナウイルス感染の拡大を防ぐため、学校園が休校になり、先生や友達などとのつながり、生活リズムの乱れ、学習の遅れなど不安要素が山積しています。それらを少しでも回避するためには、オンライン教育の環境整備が必須であると考えます。
区では、全学校へのWi-Fi環境整備を当初予算で計上していますし、今回の補正予算では、1人1台端末の整備も計上されました。ICT教育の推進を早急に実施していくとの姿勢であると考え、大変評価しています。しかし、まだまだやらなければならないことは多数あります。まずはハード面での環境整備。学校が整備されても、それだけでは十分ではありません。分散登校や休校中の家庭学習に備えるのならば、学校以外の場所でのネット環境の整備が必要です。
アンケートの結果によれば、大多数の家庭でネット環境が整備されているようですが、動画など大容量の通信に堪えられる環境が全家庭で整備されているわけではないようです。区は、ネット環境のない家庭に現在Wi-Fiルーターの貸出しを行っていますが、全ての需要に応え切れているわけではないと思いますし、貸出期限もあると思います。
生活保護家庭について、ICTを活用した教育に係る通信費も、教材費として支給するとの通知が厚生労働省から出されました。家庭でのネット環境整備への支援は、国が教育に必要不可欠と認めている表れではないでしょうか。低所得者世帯にも就学援助の免除に追加するなどの対応が必要です。
また、休校中だけでなく、分散登校中も、こどもクラブや児童館は子供の居場所となっています。家庭と同じように学習課題を行うことができるよう、Wi-Fi環境の整備は必須であり、早急に対応すべきです。
また、国が推進しているクラウド・バイ・デフォルトの原則にのっとって、ブラウザ対応教材へのシフトや、情報セキュリティーポリシーの対応も行っていくべきであり、さらに、子供が独りで情報通信機器を利用する機会が増えることから、メディアリテラシー教育のさらなる充実は必須であります。
既に実施している保育所もありますが、就学前教育やコミュニケーションについてオンラインで実施する園に対してのサポートも行うべきです。
現実的には、双方向通信でのオンライン授業を実施することは課題が多数あり、準備期間はかなり必要だと思いますので、例えば、朝の会や教材の視聴、顔の見える個別指導など、できることから実施する準備を早急に行うべきではないでしょうか。本区のICT教育推進の方向性を打ち出し、タイムスケジュールを作成するなど、ウイズコロナ・第二波への備えとして、オンライン教育を含めた学校などのICT教育の推進を行うべきと考えますが、教育長の所見を伺います。
以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。」
区長 答弁
「早川議員のご質問にお答えいたします。
ご質問の第1は、今後の区政運営についてです。
新型コロナウイルス感染症の影響により、区民生活や区内経済への影響は極めて深刻な状況が続いています。このような状況の中、今後の区政に当たっては、さきに申し上げたとおり、3つの柱の基、感染症対策や各種給付金の支給、事業者への資金繰り支援、区役所業務の改革などに重点的に取り組んでまいります。
また、経済活動の大幅な縮小により、今後の区の財政収支への深刻な影響が危惧されます。そのため、各事業の実施の可否や規模の見直し等を検討するとともに、行政計画についても計画事業や事業量の見直しを行ってまいります。
さらに、社会経済状況の変化を踏まえ、中長期的な視点による課題や対策もしっかり見据えながら、区民の皆様の安全で安心な暮らしの実現に向け、全力で取り組んでまいります。
ご質問の第2は、ウイズコロナ・第二波への備えについてです。
まず、情報化推進についてです。
新たな日常に対応すべく、区役所業務の改革を進めていくためには、ICTを効果的に活用することが大変重要となります。職員の在宅勤務については、現在、自宅から庁内のパソコンを遠隔操作する手法を試行しています。今後は、対応できる業務や運用上の課題などを検証し、在宅で業務を行う環境整備の方策を検討してまいります。
また、区では、相談事業や講座等をオンラインでも実施できるよう、準備を進めているところです。さらに、各種手続の電子申請化を一層推進するとともに、公共料金のオンライン決済の導入も鋭意検討し、来庁せずにご利用いただけるサービスの拡充を図ってまいります。
今後とも、様々な業務へのICTの活用を図り、さらなる手続の簡素化、利便性の向上を実現してまいります。
その他のご質問につきましては、教育長がお答えいたします。」
教育長 答弁
「早川議員の学校等のICT活用についてのご質問にお答えさせていただきます。
本区におけるICT教育が目指すものは、台東区学校教育ビジョンが掲げる変化の激しい予測困難な新しい時代に対応する資質・能力の育成でございます。具体的には、ICTの効果的な活用によって自分の考えを明確にしたり、問題を解決したりするなどの情報活用能力の育成がその重点でございます。
今般、新型コロナウイルス感染症の影響による臨時休業によって、家庭学習におけるICTの活用など、様々なご意見とご提案をいただいており、多様な学習場面で活用できるICT環境の整備が喫緊の課題となっております。
このような直面する課題に対応するため、学校のみならず各家庭などにおいてもより幅広く柔軟にICTを活用できるよう、改めて、まずは児童・生徒1人1台の端末整備を図ることといたしました。今後、これらの端末を十分に活用するため、子供たちの学習を支えるための双方向通信を可能とする環境など、さらに充実したICT環境の整備を目指してまいります。
また、教育委員会の現在の対応といたしましては、ユーチューブによる幼児・児童・生徒向け動画の限定配信を行うとともに、児童・生徒へのタブレットパソコンの貸出し等を実施しているところでございます。
教育委員会といたしましては、今後も様々な学習場面に対応できるよう、ICTを活用したあらゆる学びの可能性を追求し、創造性豊かに、たくましく生きる力を身につけられる教育の推進に努めてまいります。」