予算総括質疑全文 (令和4年予算特別委員会)

2022/03/30

早川太郎 質問。

「つなぐプロジェクト、早川太郎です。今回は区長、教育長に3点伺わせていただきます。
令和4年度の予算案においては、主要財源である特別区民税が約15億円、特別区交付金が24億円、対前年度でプラスとなっていて、増額要因としては、区民税は、納税義務者などが増えたことで、特別区交付金は、テレワークの普及や巣籠もり需要を受けて、ITやエンターテインメント関連産業を中心に、企業収益が持ち直していて、法人住民税を押し上げているのではないかとの答弁がありました。しかし、国による各種給付金などにより、企業の事業継続や雇用について、一定程度の下支えができたのではないかとの答弁もあり、売上げは落ちていても、国や都からの給付金や協力金は、課税対象となっていることや、雇用調整助成金などによって、一定程度雇用が守られていることなどにより、区の歳入が保たれているのではないかとの懸念があります。
また、テレワークの定着が進んだことなどにより、昨年、首都圏から地方に本社を移した企業が、過去最多、11年ぶりに転出超過となったという報道や、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年から転出者が増加していて、23区は転出超過にという報道もあり、そういったトレンドが、今後どう進んでいくか、注視していかなければならない状況にもなっています。企業や個人を下支えしている国や都からの給付金などは、いつまでも続いていくとは思えませんし、今後、国や都の支出金が、ドラスチックに削られていくことも、バブル崩壊後の経験を見てみれば、十分考えられる事態であります。投資的経費は、前年度との比較では減となっているが、施設保全については、令和5年度以降に多くの財源が必要になるとの答弁もあり、また、4月より最大30%の値上げを行うとメーカーからの情報を得ているとの答弁もありました。
以前の試算では、30年間で1,173億円の費用が必要とのことでしたが、それ以上の費用がかかる可能性も高く、ここしばらくは、コロナ感染拡大の影響による課題への対応や、ポストコロナへの対応などもあり、多額の費用が必要で、税収がいまだ悲観するような状況になっていなくても、予断を許さない財政状況から抜け出せたわけではありません。そういった状況下に置かれている中での予算編成であったのではないかと思っています。
こういった財政見通しの中においては、中長期的な視点に立ち、基金や起債などの活用を含め、持続可能な財政運営を行っていかざるを得ません。また、コロナの感染拡大が続いている状況においては、感染拡大に伴って顕在化した課題や社会経済状況の変化による新たな行政ニーズなど、着実に対応すべきであり、ポストコロナを見据えた対策もスタートすべきであると思っていて、さらに税収が維持されている現況においては、将来の区政運営を見据えて、安全性や利便性を鑑みた上でのインフラ整備や、世界的な課題となっているCO2の削減対応、効率的・効果的な行政運営への対応なども、できる限り進めておくべきでもあります。そういう要素をバランスよく考慮した当初予算とならざるを得ないと思っていて、今年度の補正予算や来年度の予算案を、委員会審議の答弁などで確認させていただきましたが、今後の財政需要に備えた基金への積立てや、将来の財政負担軽減の観点も踏まえた起債の発行、義務的経費などを除いた既定事業についてのゼロシーリング、老朽化など安全面確保や利便性向上のための公共施設や道路・公園などの維持補修経費の増額、PCR検査や在宅療養支援などの感染拡大防止対策や、特別融資の延長、ポストコロナに向けた企業支援、相談事業や子育て支援の充実など、コロナの影響で顕在化した課題への対応、将来のランニングコスト削減やCO2削減に寄与する省電力型照明整備、ICTを活用した事業手法の見直し、BPRなどによる業務改善、ファシリティーマネジメントの推進などなど、3つの要素に対応した予算となっており、要保護児童対策を含め、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を迅速に行うための情報連携の強化やいっとき保育におけるベビーシッター活用など、要望事項は残るものの評価できるものであると考えています。
しかし、私たちの想定を簡単に超えてしまうのが、今回の新型コロナであり、今後どのように推移していくのか、予測がつかない状況が今なお続いています。もうこれ以上の感染拡大は、勘弁してほしいところではありますが、新たな変異種が発生し、第七波、第八波と新たな課題を生んでいく可能性は捨て切れず、その課題に対して着実に対応、対策を講じていかなければなりません。
一方で、専門家の中でも、3回目のブースター接種や経口薬の普及により、夏くらいにはコロナを克服して、以前の生活に戻れるのではないかとの発言が出だしてきています。心からそうした予測が当たってくれることを望んでいますが、そうなった場合にも、新たな課題は山積していて、例えば、国などにより下支えされている事業者支援が終了となり、以前の売上げが回復するまでのタイムラグへの対応や、今まで行政のパートナーとして、区政運営を支えてくれていた各種団体は、このコロナ禍で活動ができなくなってしまい、弱体化の懸念があり、それら団体への対応も必要であり、新たな感染症への備えの充実やフレイル対策、教育や子育て支援などなど、現在予測できる課題だけでなく、新たな課題も出てくることでしょう。さらに言えば、既に兆候が現れ出している、人口動態の変化に対応した施策が、必要となってくるかもしれません。財政規模が1,000億円である台東区では、残念ながらできることは限られていますが、区民に一番近いところにある自治体として、国や都などが見逃しがちな課題や、新たに顕在化してくる課題、行政ニーズをしっかりと把握し、効果的な対策、対応を迅速に実施していくことが必要であると考えます。今年度も、随時補正予算で迅速に対応していることは、評価しておりますが、来年度もそれらの課題に対して、時期を逸することなく、迅速な予算措置を実施し、しっかりと対応していっていただきたいと思っておりますが、区長の所見を伺います。」

区長 答弁。

「早川委員のご質問にお答えいたします。
令和4年度予算においては、感染症対策はもとより、コロナ禍で生じた新たな課題や感染症の収束後を見据えた地域活性化ための取組などについて予算配分を行ったところです。しかしながら、感染症や世界情勢の動向などから、今後も社会経済状況が大きく変化していく可能性があり、こうした中で発生する新たな課題に対しては、迅速かつきめ細かな対応をしていくことが重要です。
和泉委員にもお答えしたとおり、これまでも、補正予算の編成や予備費の活用により、状況の変化に積極的に対応してまいりました。引き続き、持続可能な財政基盤を維持しつつ、必要な施策を、時期を逸することなく、着実に実施してまいります。」

早川太郎 質問。

「今、区長の答弁にもありましたが、国際社会の平和と安全を脅かすロシアのウクライナ軍事侵攻により、世界情勢がどのように進んでいくのか、先行きの読めない事態となっています。予算編成時には、想定できなかったこういった事態も追加されていて、来年度は、さらにフレキシビリティーが求められていると思っています。午前中も同趣旨の質問がありましたが、必要な施策を、時期を逸することなく、着実に実施していただけるよう要望して、次の質問に移らせていただきます。
次に、児童発達支援の充実について伺います。
平成17年、発達障害者支援法が施行され、23年には障害者基本法の改正が、また、24年の児童福祉法改正により、従来の障害種別で分かれていた体系が、通所・入所の利用形態別に一元化されるとともに、児童発達支援センターが創設され、28年の発達障害者支援法の改正において、切れ目ない支援の実施や、関係諸機関における情報共有の促進が明記されるなど、発達障害児に対する法の整備が、近年進められてきております。法の整備が充実されたことなどに伴い、社会全体の認識も高まってきたことなどにより、療育ニーズは年々増加しています。
台東区においても、松が谷福祉会館における相談事業の利用状況は、平成23年の1,667件から、令和2年の2,131件と約1.3倍に、就学前施設などへの発達障害児巡回訪問相談件数は、平成23年の75人から、227人と約3倍に、ここ10年でかなり増加していて、本年2月末現在では、相談事業は2,740件、巡回訪問相談は330人とさらに増加しています。
乳幼児期の児童発達支援や、就学後の放課後等デイサービスを実施する養育施設は、松が谷福祉会館を含めて、児童発達支援では5か所、放課後デイサービスで10か所と、療育ニーズの増加に伴い、区内においても、民間施設が増えてきてはいるものの、施設整備がニーズの増加に追いつかず、区内の事業所を利用したくても受入れに余裕がないため、他区の事業所を利用されている方が一定数おり、大きな課題となっています。
区も、(仮称)北上野二丁目福祉施設整備に合わせて、療育環境の充実を目指していて、児童発達支援センターとして整備し、機能充実させることを検討していますが、昨年の予算審議において、区民の療育ニーズ全てを担うのではなく、区立の児童発達支援施設でなければ担えないことをしっかりと充実させ、民間の児童発達支援施設との連携や役割分担の下、地域全体の療育環境の向上に努めていきたい旨、答弁をいただきました。区民の療育ニーズの増加に対応するためには、区が全ての療育を担っていくのは難しく、民間の障害児通所支援施設の整備が必要であると私も思っていて、今後もさらなる施設整備に向けた取組が重要であると思っています。
しかし、民間施設が増加してきても、その施設を有効に活用できる環境が整っていなければ、利用者にとっての療育環境の向上には、寄与しません。発達障害は個々に特性が異なっていて、また、障害児通所支援施設にも様々な特色があります。施設の能力が、最大限生かされるようなコーディネート機能を備えた中核的拠点が、どうしても必要となってきます。そういった拠点機能を、今後整備される児童発達支援センターに、ぜひとも担っていただきたいと思っていますが、施設整備には時間がかかります。委員会でも、法改正によりスケジュールに影響を及ぼすとの報告もありました。ハード整備に時間がかかるのは致し方ありませんが、その施設が整備されるまでの間に、ソフトの部分での環境整備は、着実に進めておかなければなりません。コーディネート機能を有するためには、各施設との連携強化や情報共有が必須であります。現在は、個々のケースを通じたつながりにとどまっていて、今後、民間事業者との連携強化・情報共有に取り組んでいく必要があるとの答弁をいただきましたが、例えば、こども療育室を拠点として、定期的に各施設間の連携強化や、情報共有を図るための会議体を発足させるなど、取組をできるだけ早急に進めていただきたいと思いますし、審議の中で、要保護児童対策のときにも述べましたが、発見の精度や相談体制の質の向上に向けて、子育て世代と一番接点を持っているはずの保健サービス課などとの、情報管理のシステム化や一元管理の検討など、情報連携の強化もぜひ進めていただきたいと思います。
支援方針にも記載されていますが、発達障害は、できる限り早期に発見して適切な支援につなげていくことが、何よりも重要なはずであります。発見の精度のさらなる向上や、相談体制の充実、そして、障害児通所支援利用者にとって、ベストな療育を受けることができるための、事業者間の連携強化や、情報共有などによる環境整備など、そのほか児童発達支援センター化に向けて、ソフト面の課題があるのであれば、それに対応して。施設が整備されることを待たずに、しっかりと対策を充実してほしいと思っておりますが、区長のご所見を伺います。」

区長 答弁。

 「ご質問にお答えいたします。
松が谷福祉会館こども療育室では、保育士や心理士、言語聴覚士などの多職種が連携して相談事業や定期的な療育を行っています。また、専門職が保育園やこどもクラブ等への巡回訪問を行い、発達に心配のある児童等への関わり方や支援方法などの助言をしています。私も、療育ニーズが増加、多様化する中で、地域の療育環境の充実は急務と考えています。そのため、現在の施設において、福祉や保健、教育などの関係機関との連携を一層強化し、早期発見や相談体制の充実を図ってまいります。さらに、地域の障害児通所支援施設と情報共有できる場づくりや、困難ケースに対する助言などに、早期に取り組んでいきます。併せて、(仮称)北上野二丁目福祉施設において、地域支援を担う中核的な療育支援施設として児童発達支援センターを整備し、さらなる機能強化を図ってまいります。」

早川太郎 質問。

「今、区長から力強いご答弁をいただきまして、本当に今ご答弁いただいたソフト面での対策ですね、着実に時期を待たずにやっていただきたいと要望して、次の質問に移らせていただきます。
最後に、学校における働き方改革について伺います。
今定例会の代表質問において、つなぐプロジェクトの青鹿幹事長より、35人学級に向けた小学校の教育環境についてということで、学校における検討課題について述べさせていただき、特に、施設のハード面に係る課題について質問させていただきましたので、私からはソフト面について質問をさせていただきます。
そのときの質問でも述べていますが、学級編制の標準を一律に引き下げる法改正が行われ、小学校の35人学級化の実現には、今後5年間で新たに1万3,000人余りの教員や事務職員が必要であり、また、今年度の小学校教員採用試験の倍率が過去最低を更新するなど、担い手不足が顕在化しています。また、男性育休の義務化により、産休・育休に入る人も今後急増していくことでしょう。さらに、小学校においても、中学校と同様の教科担任制が徐々に導入されるなど、教員の量と質の両面で、大変懸念される状況がめじろ押しとなっています。働き方改革を推し進め、教員にとって働きやすくやりがいを持って、子供たちと関わっていける環境整備がより重要になってくるのではないでしょうか。
台東区の教育現場において、質疑の答弁によれば、産休の代替教員は、基本的には、常勤の教員で対応できるが、年度途中では、校内の正規教員や講師が対応することもあるとのことでありました。今後は、さらに厳しい状況となるのではないでしょうか。
区は、平成30年12月に台東区立学校における働き方改革プランを作成。現状と方向性が整理されていて、評価できる内容と思っていますが、そのプランに沿って、学校における働き方改革を推進していて、取組スケジュールに基づき、出退勤管理システムでの電子決裁導入など業務の軽減・効率化や、部活動指導員などの人員体制の整備を進めているとの答弁もいただきました。そのほかにも、副校長補佐やスクール・サポート・スタッフの配置、学力向上推進ティーチャーの追加配置、スクールソーシャルワーカーの増員など、人員体制の整備を着実に実施してきており、評価しています。
しかし、予算を伴う事業以外の取組が、どの程度進んでいるのか。例えば、教員の意識改革に対してや、保護者や地域への啓発、ストレスチェックなど。そういうところも大変重要だと思っています。働き方改革プランをスタートし、1年で今回の新型コロナのパンデミックが起こってしまい、また、その対応策としても、教育現場におけるICT機器の導入・活用が、かつてないスピード感で実施されていて、プラン作成時とは、教育現場においても大きな変化が起こってしまっている現在、それらに対応するために、勤務時間や勤務内容にも変化が生じていることを考えれば、なかなか現時点で、進捗管理を行っていくことの難しさは理解できるものでありますが。本年1月28日には、文部科学省から、令和3年度教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果等に係る留意事項についてという通知も出ていて、例えば、タイムカードを使うときにも、実際に教員が学校にいる時間を把握すること、地域住民の協力を仰ぐためにも、働き方改革に係る取組や在校時間等の状況の公表に努めること、時間外勤務の縮減に向けた業務改善方針や計画などを策定することなど、教員の働き方改革に対する文部科学省の本気度合いが分かる内容となっています。今回のコロナ禍での影響やICT化の推進などで、新たな課題も増加しているかもしれません。そういったこともしっかりと対応できるよう、プランの見直しも含め、着実に働き方改革を推進していくべきです。働き方改革を推進することができれば、各教員の能力が今まで以上に発揮されることになり、子供たちにとってもよりよい教育環境が確保されることになります。
また、審議の答弁にもあった、都の公募制度においても、今まで以上に台東区で教えたいという希望教員が増えてくるかもしれません。量が増えれば、質の確保にもつながります。さらに、産休などの代替教員の確保にも、寄与するのではないでしょうか。プラン作成から3年が経過しておりますが、よりよい教育環境を確保できるだけでなく、これからの教員確保にも重要な意味を持つ、学校における働き方改革について、今回のコロナ禍での影響やICT化の推進など、新たなファクターへの対応を含め、今後どのように取り組んでいくのか、教育長の所見を伺います。」

教育長 答弁。

 「ご質問にお答えさせていただきます。
教育委員会では、教員がやりがいを持って子供たちと関わることで、持続的な教育活動の質の維持向上の実現を目指し、台東区立学校における働き方改革プランを策定して、教員の業務改善と長時間労働の縮減に取り組んでおります。このプランの策定後に、新型コロナウイルス感染症のために生じた教員の新たな負担を軽減するため、教室の消毒等も行うスクール・サポート・スタッフを全校に配置しているところでございます。また、早期に整備されたICT教育環境や、1人に1台貸与されたタブレットを効果的に活用するため、ICT支援員の派遣回数を増やすなど、教員に対する支援体制を拡充して参りました。
さらに、出退勤管理システムを導入し、電子化した出勤簿や休暇申請等により、手続の簡略化を図るとともに、校長・副校長が、システムによる出退勤時刻の客観的な記録から、長時間労働となっている教員に対して、適正な助言ができるようになっております。
教育委員会といたしましては、引き続き、新たに生じる業務への支援や、学校と連携した地域・保護者への働き方改革の周知と協力依頼など多様な取組により、教員が教員でなければできないことに全力投球できる教育環境を目指して、学校における働き方改革を一層推進してまいります。」

早川太郎

「今、教育長からご答弁いただきました、まさに、教員が教員でなければできないところを、しっかり確保するために、いろいろな手段をとっていく。確かに今、質問の中でも述べましたけれども、人員体制の確保に関しては、教育委員会は、すごく前向きに捉えていてやっているのだと思っています。平成30年につくられた台東区立学校における働き方改革プランは、私もゆっくり読ませていただきましたが、本当に現状と方向性が、物すごく整理されていて、なかなかそれを実現していくのは難しいのかなとは思っていますし、さらに先ほども申し述べたとおり、今のコロナ禍で、状況が全く変わってきてしまっていますし、ICT化の推進も、本当にスピード感を持ってやっている部分もありますので、その辺の対応が、若干変わるかもしれませんけれども、このプランに沿ってしっかり進めていっていただいて、人材確保、または台東区のよりよい教育環境づくりに努めていただきたいと要望します。
それでは、令和4年度予算案につきましては、先ほどの質問の中で、当初予算に関しての評価は述べさせていただきましたので割愛いたしますが、我が会派が政策要望で提案してきたBPR等による業務改善、オープンデータやファシリティーマネジメントの推進、オンライン会議の環境整備、デジタルディバイド対応などの情報化推進や、区有施設の省電力型照明整備、企業へのキャッシュレス化推進、養育費の受け取り支援、そして、保育園などへのデジタル化などなど、しっかりと予算に反映されていることなども評価したいと思っています。
つなぐプロジェクトといたしましては、令和4年度予算原案に賛成、必然的に修正案には反対を表明し、質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。」

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