2021/03/30
早川太郎 質問。
「つなぐプロジェクト、早川太郎です。今回2点、区長に質問・提案させていただきます。
まず初めに、今後の行財政運営について、伺います。
緊急事態宣言は昨日解除されましたが、残念ながら新型コロナウイルス感染症の脅威が収束したわけではなく、まだまだ新型コロナウイルス感染症との闘いは続いています。新型コロナウイルス感染症の脅威を一日も早くなくしていく、国を含めて行政としては最大限努力していかなくてはならないと思っていますが、この令和3年度予算においても、新型コロナウイルス感染症は多大な影響を及ぼしていて、歳入では、新型コロナウイルス感染拡大による景気後退などの影響により、特別区民税が約2億1,000万円、たばこ税が約1億5,000万円、特別区交付金が13億円の減となり、施設使用料なども含めれば約19億6,000万円の減収となっています。また、ふるさと納税の影響額で8億7,000万円、法人住民税の国税化による影響で21億円と、国の制度変更などにより多額の減収が見込まれています。さらにこの予算では、地方消費税交付金に今回の緊急事態宣言の影響が反映できていないことや、特別区交付金においても今回の宣言が影響することなど、参考としている都区財政調整の当初フレームより下振れ懸念が強いこと、また、施設使用料なども、今年度の実績を考えれば見込みどおりの収入が得られるかなど、現実にはさらなる減収が予測されます。歳出においては、新型コロナウイルス感染症対策などの対応経費が約21億円、義務的な経費が約8億円、施設の大規模改修などが約37億円の増となり、合計で約66億円の増額となっていて、10%のマイナスシーリングにより事業直しなどに努め、約40億円削減していますが、歳出予算全体としては、前年度に比べて26億円の増額となりました。結果、予算規模は過去最大にならざるを得ず、基金72億円、区債38億円を活用するなど、歳入の不足分を補った予算となっています。
審議の中でリーマンショック後の状況を伺ったところ、特別区民税は、平成21年、22年の2か年で16億5,000万円の減収、特別区交付金については、2か年で67億6,000万円の減収となり、歳出も、扶助費が2か年で51億7,000万円の増となるなど、大変厳しい状況にあった。この減収からの回復には6年以上かかっているとの答弁もありました。今回はさらに長期化するおそれが十分に考えられます。今後区だけでなく、国も都も財政状況はかなりの長期間大変厳しい状況になることを覚悟せざるを得ません。今後国や都の支出金がドラスチックに削られていくことも、バブル崩壊後の経験を見てみれば十分考えられる事態であります。行政サービスを継続的、安定的に提供していくこと、行政の最も重要な責務であります。そのためには、財政状況が厳しくなれば基金や区債の活用を有効的に行っていくことは重要であり、また既存事業の見直しは避けて通れないとも思っています。
今回の予算では171事業の見直しを行っていますが、見直しの内容は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたイベントなどの中止や規模の縮小、施設や道路などのインフラ整備では、工事規模縮減や先送り、そして実績見合いでの予算規模の縮減や啓発事業の中止などでした。中には施策目標の達成のための別なアプローチで事業を工夫改善したものがありましたが、大半が財政的な視点での規模縮小でありました。来年度の予算は今後の財政状況が厳しくなる中、また残念ながら新型コロナウイルス感染症がいつまで、どの程度影響するか全く分からない中での予算編成であり、かなり困難であったと思っています。また事務事業評価が新型コロナウイルス感染症の影響で通常どおりの結果を得られなくなり、実施できませんでした。さらに各所管も未曽有の事態の中、対処に精いっぱいであったはずであります。こうした状況下での予算編成という点を考えれば、財政的な視点での事業の見直しも必要であったと思っています。
しかし、今までも人類は疫病に何度も打ちかってきました。ワクチン接種も始まりますし、重症化を抑える薬もできるはずと信じています。近い将来、少なくとも三密を気にしなくても生活ができる社会がきっと来る、それをアフターコロナと呼ぶのなら、日常が戻ってきて、行政サービスも新型コロナウイルス感染症による制限を受けずに実施できるようになります。そうなったときどういう行財政運営をしていくのか、アフターコロナになったときの事業の見直しが、今回行った事業見直しの手法でよいのでしょうか。例えば道路維持費の減額は、今年度実施が必須でない工事を翌年度以降に先送りしたことによるものであり、このペースで区道の工事が続くと、路面や排水施設の老朽化が進むなど、インフラ面でかなりの悪影響を及ぼす旨、答弁がありました。道路は計画的に工事を進めていかなくてはなりません。実績見合いの予算規模とすることで、施策目標への達成が遅れ、所管の意欲低下にもつながります。計画目標に沿った予算規模を守っていくべきです。そのほかにも新型コロナウイルス感染症の影響で中止や規模の縮小を行った事業はどう実施していくのか、また事業を見直したことによる区民サービスの低下をどう補っていくかなど、課題は山積です。区民サービスを少しでも低下させないよう、区として対策を強化すべきです。
今現在でもBPRを行った上でRPAを導入して、事業の効率化を進めていますが、その手法を取り入れ、全事業で業務の総点検を実施し、業務改善を行い、業務の効率化を強力に図っていく、また、この予算でもマルチペイメントなどの事業が予算化されていますが、新たな情報化推進計画を着実に実施し、ICTの活用により区民サービスの向上を目指していくことも重要でありますし、ころばぬ先の健康体操の動画配信が65万回の視聴を得ていることなど、高齢者対策にもICTが活用できる局面が出てきていることなどから、社会状況の変化に対応したさらなるICTの活用も実施していく、さらに委員会審議の中でも触れましたが、学校の図書経費を削るのなら、図書館からの団体貸出しのルールを変更するなど、図書館とのリンクを強化していくことで、子供たちの読書活動への支援をより充実していく、そういった所管を越えての施策展開が重要になってきます。財政状況が厳しくなっていく中、既存事業を今までどおり実施できなくなっていくなら、別のアプローチを模索していかなくてはなりません。
また、この新型コロナウイルス感染拡大は社会全体に大きな変革をもたらしつつあって、ビジネスや働き方、住む場所や欲しいもの、時間の使い方など、個人の価値観に大きな変化をもたらしています。区の人口推計や行政サービスに求められるプライオリティーも変わっていくかもしれません。その変化に合わせて事業を見直す必要があるのではないでしょうか。既存事業ありきではなく、根本からの事業見直しを行い、施策目標を実現するための新たなアプローチの手法を導き出していくことも含めて、アフターコロナに向けた業務改善を行うべきです。アフターコロナにおける行財政運営においては、区民サービスの低下を伴う財政的な視点での事業見直しを行う前に、中長期の視点に立ち、施策目標の達成に向けた業務手法の見直しを含む事業全体の再構築を行うべきと考えますが、区長の所見を伺います。」
区長 答弁。
「早川委員のご質問にお答えいたします。
新型コロナウイルス感染症の影響により、歳入では、特別区交付金や特別区税の減収が見込まれる一方で、歳出では、感染症対策をはじめ様々な行政需要が増大しており、今後厳しい行財政運営を強いられるものと考えています。こうした状況を踏まえ、当面は事業の重要性やあるいは緊急性、規模、実施時期などについて検証を行い、スクラップ・アンド・ビルドを進めるとともに、ICTのさらなる活用など、業務手法の見直しを図ってまいります。
さらに、アフターコロナの時代を見据え、人口推計や区民アンケートの実施などを通じて、社会経済状況や行政ニーズの変化を的確に把握し、事業の在り方について検討を行い、長期総合計画の改定に反映してまいります。」
早川太郎 質問。
「今の答弁にもありましたが、このコロナ禍における社会状況や行政ニーズの変化を把握していくにはしばらく様子を見る必要があると私も思っているので、長期総合計画の改定に反映していただけたらなと思います。
また、当面については、業務手法の見直しを図っていくとのご答弁がございましたが、先ほども述べましたとおり、ぜひとも全事業におけるBPRの活用による業務の効率化ですとか、社会状況の変化に対応したさらなるICTの活用、所管を越えての施策展開、これらは早期に実施していただけるよう要望して、次の質問とさせていただきます。
次に、区有施設の維持・保全・適正化について、伺います。
私が区議会議員になって取り上げてきた政策テーマの中でも区有施設の維持・保全については、議員1期目のときから再三にわたって取り上げてきたテーマであり、過去の質問においても、ファシリティーマネジメントの活用による基本方針を一刻も早く定め、早急に区有施設の保全計画を整備すべきと提案してきました。
区は、平成27年に公共施設保全計画を作成し、計画当初の10年間である中期保全計画1期目では、計画外であった施設についても、老朽化などにより整備が必要と判断した施設を組み入れ実施し、進捗率は50%以上と、施設の維持・保全について着実に実行してきております。しかし、未曽有の事態であるこのコロナ禍の状況においては、委員会審議の中で、今後5年間で起債を活用した上でも約244億円の一般財源が必要との試算もあり、減収の長期化が想定される中、公共施設建設基金などの基金残高の状況から整備スケジュールの見直しが必要になった旨、答弁がありましたが、整備スケジュールの先延ばしになった施設が今年度2棟、来年度4棟ありました。計画どおりの施設の改修を先延ばしせざるを得ない状況になってしまったのは残念でなりませんが、致し方ないと思っています。現計画作成前は、多額な費用を必要とする大規模改修はずるずると先延ばしとなっていて、施設データの一元管理もできていない状況であったため、業務に支障が起きそうになった施設や支障が起きてしまった施設から最小限に改修を行っていかざるを得ない状態となっていましたが、現在は施設課において施設の管理データの一元管理がなされていて、各施設の老朽化などに優先度をつけ、施設運営に支障を来さないよう努めていくとの答弁もあったように、支障を来すような状態は回避できる体制整備はなされているので、施設運営については当面の不安は解消されていると思っています。
さきの太田議員の代表質問において、区長から施設保全計画の見直しを行う旨、答弁があり、大変評価していますが、現在の施設保全計画では、ファシリティーマネジメントについて取り上げられていません。区有施設のファシリティーは区民サービスの向上につながるだけでなく、中長期的な視点で見れば、財政面でも寄与できる事業であり、多額の基金活用や区債発行を伴っても着実に実施すべき事業であると思っていて、現在の基本構想を策定するための審議会の議論の中で、副会長が施設の維持・保全、適正化は同列で論じる話ではない、適正化があって、維持・保全の方針が決まる旨の発言をしていましたが、新たに計画を作成するのなら、維持・保全を行う前に、ファシリティーマネジメントの検討をしっかりと行い、その検討に基づいた計画とすべきではないでしょうか。
現在、区は幾つかの施設整備を計画中であります。例えば特別養護老人ホームの再整備を実施すべく、旧竜泉中学校跡地での整備計画が進められておりますが、今後は再編される蔵前、三ノ輪、千束の特別養護老人ホーム施設をどう活用していくかという課題を検討していくことになります。松が谷福祉会館の移転改築においても、複合化・多機能化を図ることにより、より区民サービスが充実することができる事業はあるはずで、今後の検討になると思いますが、そうなれば、現在の施設だけでなく、既存他施設にも影響が及ぶ可能性はありますし、そのほかにも有効的に使われていないスペースはかなりあるのではないでしょうか。さらに、以前より言い続けておりますが、稼働率、バリアフリー対応、区民ニーズの変化などに課題のある集会施設についても、利用者の利便性向上のための再統合は必須です。そして今回の新型コロナウイルス感染症の影響、さきにも述べましたが、社会全体に大きな変革をもたらしていて、そういった変化を把握し、その変化に合わせた対応をしっかりと行っていかなくてはなりません。新たな行政需要に応えるためのスペースの確保が必要となってきますし、ニーズの減少により規模の縮小を図るべき事業も出てくるのではないかと思っています。これらの資産を活用して、区民ニーズに対応した施設整備や、資産の売却や民間による利活用などによる区の歳入確保など、経営戦略を講じることがファシリティーの考え方であります。今の台東区にとって、まさに必要なことではないでしょうか。施設保全計画の見直しを行うのなら、区有施設全体の在り方を整理した上で、必要となる施設を対象に保全計画を策定すべきと考えますが、区長の所見を伺います。」
教育長 答弁。
「ご質問にお答えいたします。
区では、平成27年度に台東区公共施設保全計画を策定し、適正な保全の推進、ライフサイクルコストの縮減、財政負担の平準化、こういった基本方針の下、大規模改修などの時期や経費の見通しを示し、区有施設の維持・保全を着実に進めてまいりました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症により、今後区財政は厳しい状況が見込まれることから、改修する時期を含め、施設保全計画を見直す必要があると判断いたしました。また、(仮称)竜泉二丁目福祉施設等の建設に伴い、移転後の区有施設の新たな活用を検討していくことが必要です。このような課題に対応するためには、区有施設におけるサービス内容や稼働率、バリアフリー化の状況などを検証した上で、施設の再編・統合や新たな機能の付加による複合化・多機能化、民間への貸付け等を進めていく必要があると考えています。今後区民ニーズの変化や将来的な人口動向を見据えるとともに、いわゆるファシリティーマネジメントの考え方を踏まえ、区有施設の在り方を整理した上で、施設保全計画の改定に取り組んでまいります。」
早川太郎
「ありがとうございます。区長も区有施設の維持管理については、同じ認識を持っていただいていて、ファシリティーの考え方を踏まえて、施設の在り方を整理し、施設保全計画の改定を行っていただけるとのことなので、ぜひよろしくお願いいたしますと要望して、令和3年度予算案についての我が会派の意見を述べさせていただきます。
先ほど質問の中で予算規模、基金や区債の活用、そして事業の見直しについては、見解を述べているので、割愛させていただきますが、我が会派が政策要望などで提案してきたマルチペイメントの導入やスマート窓口、RPAの導入促進、テレワークの導入などの情報化推進や長期総合計画の策定、防災アプリにおける風水害対応や町会名表示などの機能追加、子供食堂への支援充実や産後ケアの充実、そして家庭学習においての活用を進めていく小・中学校のICT推進などしっかりと予算に反映されていること、またDV対応やフレイル対策、独り親家庭の支援など、審議の中でも確認させていただきましたが、ウィズコロナの時代における今後の区政の運営の取組方針に記載されている内容の事業を充実させていることなど、評価したいと思っています。
つなぐプロジェクトとしては、区長提出の令和3年度予算案に賛成、したがいまして、修正案には反対いたします。
最後に、実績見合いで予算規模を縮小した助成事業については、福祉関連や防災関連など、助成件数が予算規模を超えた場合でも、適宜対応していただけること、また事業見直しによって区民サービスができるだけ低下しないよう、対応を検討していただけるよう要望して、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。」