2022/12/05
早川太郎 質問。
「つなぐプロジェクト 早川太郎です。 今回は、2点、区長に質問させていただきます。
まず初めは、区の行財政基盤の強化について伺います。
この決算年度である 令和3年度は、新型コロナ感染拡大防止のための緊急事態宣言や まん延防止等重点措置期間が、年度の大部分を占めて 実施された年度でありました。しかし、感染拡大への対処や、ワクチン接種も進み、社会経済活動も 徐々にではありますが、コロナ以前の状況に戻りつつある状況となり。令和2年度に比べれば、影響が少なくなっているとはいえ。まだまだ、新型コロナウイルス感染症の影響を 大きく受けている決算となっています。予算編成時では、コロナの影響による 経済の下振れリスクに十分注意する必要があることから、歳入では、特別区交付金や 特別区税などの減収を見込んでいて。厳しい財政運営を強いられていく、との予想がありましたが。決算資料によれば、特別区交付金や 特別区税などの一般財源は、対前年度 約49億円の増額となり、基金残高も一般会計で 約34億円増で約512億円。財政構造の弾力性を示す経常収支比率も、5.7ポイントの改善など。数字だけを見ると、区財政は、好転しているような印象を受けることができます。
しかし、5日間の委員会審議における答弁などから、令和3年度の台東区の財政状況を分析してみると。歳入総額は、一人10万円の支給があった 特別定額給付金の財源である 国庫支出金が含まれている令和2年度と比べ、約63億円減の1254億円となっていますが。一般財源では 49億円の増額となっていて。特別区民税が、納税義務者数の増により 2.3億円。特別区交付金が、法人住民税の増などにより 37.5億円。そして、地方消費税交付金が 5.2億円、対前年で増加しており、それらが、一般財源における増収の要因となっていて。結果、分母となる一般財源が 大幅に増となったことで、経常収支比率の改善がなされていますが、83.4%は 依然として高い数値であり、23区内では21位となっています。審議の中での答弁によれば、上振れ分の要因は、「特別区民税は、国や都からの各種給付金や 協力金等の支給が一つの要因」であり、「特別区交付金は、将来の需要の前倒し算定があったこと」、「地方消費税交付金は、2年度の徴収猶予分が収入されたこと」など。この年度の特徴的なことによる要因もあって。必ずしも、一般財源については、令和3年度決算の規模が 4年度以降も続くわけではなく、依然先行きは不透明な状況が続いていて。区の財政収支推計を伺ったところ。「5年間で約376億円の 財源不足が生じる見込み」との答弁もありました。また、審議の中での答弁によれば、子どもや子育て世帯の年代層が 令和2年度から転出超過となっていて、特別区民税の増額要因であった 納税義務者の増にも影響を与えかねない懸念もあります。さらに、今回のコロナ対策で、国も都も多大な財政出動を行っており。コロナ終息後には、国や都の支出金がドライスティックに削られていくことも、十分考えられる事態であります。
歳出でいえば。投資的経費は、約20億円増の95億円。4年度予算では、85億円と減額となっていますが、大規模改修の時期の見直しの影響であり。現在改定を行っている 施設保全計画では、昨今の建築資材・設備資材の高騰や、大規模改修の中間点で 計画的に修繕を行うことなどにより、30年間で1173億円という 以前の試算も 大幅に増額となるのではないでしょうか。また、ワクチン接種体制の整備や生活困窮者への給付金などの コロナ対策経費で約101億円。前年度に比べれば、142億円弱減っていますが。一般財源の負担は1.7億円の増額となっていて。各年度との比較をするため コロナがなかった場合の決算規模を伺ったところ。試算では1053億円との答弁を頂きましたが。コロナ禍で執行率が低調だった事業も多く、予算時の 事業見直しによる経費削減が 19億円あったにも関わらず、決算規模が 1千億円を超えてしまっていて。人件費、子育て関連経費や 障害者福祉費などの増額により、前年度と比べて39億円も 増加しています。看過できない状況ではないでしょうか。さらに、ここしばらくは、コロナ感染拡大の影響による 課題への対応や ポストコロナへの対応などは、しっかりと実施すべきであり。子育て世帯の転出超過が続いていくのなら、その対応策も必要で。定住促進事業の実施ではなく、喫緊の課題となっている 放課後の居場所整備や、保育所整備の 質の向上に向けた取り組みだけでなく、子育て環境の 総体的な底上げを目指して、事業を展開していくべきです。
そして、インフレへの対応。ウクライナ問題を契機とした、昨今の原油価格の高騰や 農産物の供給不足、そして円安の影響で。時価の商品ばかりでなく、定価の商品の値上がりも始まっています。今後も物価高騰か進んでいくのなら。コロナ前の状況に戻りつつあるとはいえ、決して好景気ではない状況の中でのインフレは、区政運営において 多大な影響を与えかねません。 当然、セーフティーネットのための事業も充実していかなければなりませんし。中小企業対策も思い切った施策が必要となってきます。助成事業も、物価上昇に対応すべきであり。委託事業費も上昇する。必要な事業は、インフレに対応した予算を、しっかりと確保していかなくてはならないし、そうすべきだと思っていますが。歳出総額は、インフレ率以上に増額となってしまうことでしょう。決して、楽観視できる財政状況ではない、と思っています。
財政状況が厳しくなっても、これら事業は、的確に、かつ、迅速に対応していくべきであり。そのためにも、例えば、全事業でBPRを実施することで 事務作業の効率化を図り、さらには、作業時間の削減に寄与する RPAの導入を拡充するなど 業務効率の向上を図るとともに、DXの推進、特にデータの利活用・情報連携を、区としてしっかりと推進していくことで、地域課題解決に向けた 効率的・効果的な事業を実施し、区民サービスの向上を図っていくなど、行政経営の 更なる推進を図ることが必要であり。また、財源不足等への対応など、必要な事業を 迅速に実施することができるよう、財政基盤の強化も必要です。
先行きを見通すことが困難な状況下においても、必要な取り組みを確実に実施していくためには、行財政基盤の強化が重要と考えますが、区長の所見を伺います。」
区長 答弁。
「早川委員のご質問にお答えいたします。
委員ご指摘のとおり、区財政においては、当初の厳しい想定から一定の改善が見られるものの、物価高騰等による景気の下振れリスクもあり、先行きは不透明かつ不確実な状況にあります。
このような状況から、私も、必要な施策を推進する上での基礎となる行財政基盤の強化が重要であると考えています。
そのため、BPRによる業務の見直しや、デジタル技術の積極的な活用などにより、効率的・効果的な事業執行に努めるとともに、一層の財源確保や経常的経費の節減にも取り組み、財政の柔軟性を確保して参ります。
また、将来の財政負担を軽減しつつ、基金と起債を慎重かつ有効に活用することで、一定の基金残高を確保し、財政の対応力を維持して参ります。
引き続き、景気変動や臨時的な行政需要の増大にも確実に対応していくとともに、子育て支援の充実や、高齢者・障害者サービスへの対応、災害への備えなど、必要な施策を着実に進められるよう、持続可能な行財政運営を推進して参ります。」
早川太郎 質問。
「区長も、行財政基盤の強化が重要、と、同じ認識を持っていただいていることが確認できましたし。
BPRやデジタル技術の積極的な活用などにより、効率的・効果的な事業執行に努める、との答弁もありました。
更には、質問の中でも触れた地域課題の解決を効率的・効果的に実施するためのDX 「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の推進も、ぜひ実施して頂きたいと思っていますので。
2点目は、DX データの利活用・情報連携について伺います。
国は、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを 選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会を実現すること」を目的として、昨年9月にデジタル庁を設置し、デジタル化社会の実現に向けて DXを強力に推進しています。台東区においても、令和2年に情報政策課を新たに設置。コロナ禍の影響もあり、ICT化は急速に進んでいて。業務効率化の手法としてRPAの導入や、デジタル行政窓口に向けた 電子申請の拡充やマルチペイメントの導入、オンラインを活用した 会議や講演会の開催、テレワークの実施、学校におけるICT端末の整備などなど。現行の情報化推進計画に則り、業務における課題解決については、着実に推進してきていると思っています。 しかし、国においては、内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省は、今年度より 連携して、地域が抱える様々な課題を デジタル技術やデータの活用によって解決することを目指す「スマートシティ」の 実装を推進する 事業公募をスタートしています。区としても、「地域の課題解決」や「区民の課題解決」についての取り組みを、推進していくことも 必要なのではないでしょうか。そういった課題解決に向けて、DXを推進していくうえで、核となるものが、データの利活用や情報連携の推進なのではないか、と考えます。
現在、台東区が 情報化推進計画に則って実施している データの利活用は、オープンデータであり、今年度はアイディアソンを実施しています。行政ニーズも多様化していて。すべてのニーズに行政だけで対応していくことは、困難な状況となっており、行政データを オープンデータ化することで、民間の力を借りて区民サービスを充実していくことは 大変重要であり、今後も 現在の取り組みを充実していってほしいと思っていますが。審議の中で、データの利活用についての取り組みを、いくつかの分野で伺ったところ。福祉・健康・都市づくりと、どの分野においても、各種データを活用しての取り組みが進められており。情報政策課がリンクしている取り組みもあるとは思いますが、基本、それらの取り組みは、所管課での検討となっています。これらの分野だけでなく、産業や文化観光、防災、教育、子育てなど。あらゆる分野で、今後も国が進めていくであろうデータ活用の取り組みは、目白押しとなっていくことでしょう。
データの利活用でいえば。台東区がデータを活用するのか、それとも、区のオープンデータを民間に活用してもらうのか。区がデータを活用する場合でも、行政データを活用するのか、民間データを活用するのか。また、行政データにも、各課が所有する区のデータを活用するのか、国や都など他自治体のデータを活用するのか。さらに、区のデータだとしても、個人情報を活用するのか、個人情報以外を活用するのか。など。複数のデータや、活用方法があって。施策を推進していくうえで、どのデータをどう活用していくのかが、大変重要となってきます。また、国においては、地方自治体における データ連携の実装を推進する事業の公募や 実証実験が行われていて。たとえば、2定の一般質問でも述べましたが、「支援が必要なこどもや家庭に対する ニーズに応じた支援を実施するための データ連携等を検証する実証事業」を行っていて。その他にも、都市づくりや、福祉、健康、防災、産業、教育などなど。官民問わず、データ連携を進め、先進的技術の活用により、都市や地域の 機能やサービスを 効率化・高度化し、各種の課題の解決を図るとともに、快適性や利便性を含めた 新たな価値を創出する 取組を推進しています。台東区においても、当たり前のようにそういった取り組みが実施されて行かなくてはならないし、実施されていくことになると思いますが。社会が多様化していく中で、複層的な課題や、多様なニーズに対応したサービスを検討するためには、行政が縦割りで対応するのではなく、一体となって検討することが重要です。各所管が保有しているデータ、今後保有できるデータ、または、必要とするデータなどを、分野横断的に情報連携しておくことは重要であり、それらのデータをどのように活用していくか、横串をさして(組織の垣根を越えて)検討すべきではないでしょうか。
データの利活用を 効率的・効果的に発揮させていくためには、システム化による情報連携の推進は、欠かすことのできないことであり。しっかりと推進していって頂きたいと思っています。区として、DXを推進していくうえで、データの利活用や情報連携の重要性を どのように認識し、どう進めていくのか、区長の所見を伺います。」
区長 答弁。
「ご質問にお答えいたします。
区では、これまでも区独自の人口推計を各種計画の策定に活用するほか、観光統計分析などにおいて民間の人流データを活用するなど、様々な場面でデータを利活用しています。
国が、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において示しているとおり、今後デジタル・トランスフォーメーションを推進していくうえで、様々なデータをより効果的に活用していくことは重要であると、私も認識をしています。
今後さらにデータを利活用するには、データを収集し活用できる職員を育成していく必要があります。そこで、様々な機会をとらえて、職員へのデータ利活用に関する意識の定着を図って参ります。
また、各課が保有するデータを横断的に連携することは、支援を必要とする区民をはじめ、一人ひとりのニーズに合ったサービスをより迅速かつ的確に提供できるものと認識をしています。
しかしながら、情報連携をするには、分野間での円滑なデータ連携や個人情報の取り扱いに関する法整備など、課題が山積しています。
現在、国では、こどもに関する情報連携の実現に向けた実証事業を通して、これらの課題について検証をしています。
今後、データの利活用や情報連携の推進に向け、国や先進自治体等の動向を注視し、庁内において情報共有を図るとともに、人材の確保を含め必要な体制を検討して参ります。」
早川太郎
「推進して頂けるというご答弁、ぜひお願いしたいと思いますが。データ活用や情報連携などは、今後しばらくの間、区として取り組む最重要課題だと思っていて。区として、どのように推進していくか、は大変重要なことだと思っています。
「人材の確保を含め必要な体制を検討していく」との答弁頂きましたが。現状は、それぞれの所管課で検討されていて、データ活用におけるコントロールセクションが、しっかりと機能できていないのではないか、と危惧もしていて。推進していくのなら、体制整備は必須であり。例えば。データ活用や情報連携については、組織として しっかりとコントロールセクションを定義づけるなど リーダーシップを発揮できる体制をつくり、また、各部の庶務担当セクションに、そのカウンターパートをそれぞれ配置する、そのくらいの体制強化が 必要なのではないか、と思います。そのためにも、外部を含め人材の確保を推し進めていくとともに。管理職も含めて、将来の台東区を担う若手職員には、しっかりとした研修を行っていってほしい、と思います。
この決算年度も、コロナの影響を受けて 思った通り予算を執行できなかった事業もありますが。ICTなどの活用により、より効率的・効果的に事業執行を行ったものも増えてきていて。また10回にわたる補正予算を行い、コロナへの対応などを速やかに実施してきたこと。さらには。今後の不透明な財政状況に備えて、行財政基盤の強化に努められておりますので。つなぐプロジェクトといたしましては、令和3年度決算について、認定させて頂きます。
ご清聴ありがとうございました。」