決算総括質疑全文(平成25年決算特別委員会)

2013/11/5

早川太郎 質問

「たいとうフロンティアの早川太郎でございます。
4日間の決算審議を踏まえ、大きく3点について伺います。
審議の場において長期総合計画の達成見込みを伺ったところ、達成率は78%との答弁をいただきました。達成することが難しいとされたものの中には建築物の耐震化推進が含まれてしまっています。長期総合計画の最終年度である26年度末まで残すところ1年半となった今、目標達成に向けた新たな取り組みを開始すべきときと思い、今回、区長への提案を行わせていただきます。
何度も申し上げていることですが、台東区の震災対策の最重要施策は建築物の耐震化を進めていくことだと思っています。地震で家屋が倒壊しなければ、都市型災害であった阪神・淡路大震災で亡くなった方の原因約8割近くを占める圧死等を防ぐことも可能になり、倒壊による火災の発生、拡散も防げることになります。自分の家が安全であるならば避難所生活を送ることを免れるわけで、避難所にも余力が生まれ、備蓄品も対処可能となります。
区が耐震改修促進計画で27年度までに耐震化率90%を目標としている理由もそこにあるはずであり、3.11東日本大震災を受けて修正された長期総合計画でも、耐震改修工事の目標計画を大幅に増加いたしました。そのことからも区として耐震化推進の重要性は十分認識していると思っています。
区は23年度より耐震改修を推進するために無料の簡易耐震診断を実施し、現在までに147件が実施され、一定の成果を上げました。しかし、震災から3年が経過し、震災の際に対しての区民の意識も低下してきております。新たな対策を講じなければ耐震化の推進は難しいのではないかと危惧しています。実績も年々低下し、24年度は簡易診断67件に対して、本診断は60件とわずかながら上回りましたが、25年度に入り9月末時点では簡易診断18件、本診断19件と無料であるはずの簡易診断が本診断を下回ってしまいました。さらに、簡易診断を実施した多くの家屋が改修の実施を指摘されているにもかかわらず、本診断への移行率は13%にとどまっています。
改修工事まで移行していただけないのは、現行の制度では改修工事まで行う場合、簡易診断を行った後、本診断を必ず受診する必要がある。つまり、診断だけで2度受診しなければならないことにも要因はあるはずです。また、改修までの自己負担額が本診断だけで15万円かかってしまうところにも問題があるのではないでしょうか。
本年5月に公布された耐震改修促進法の改正に伴い、旧耐震基準の一般建築物についても耐震診断等が努力義務化されました。この機会を捉え、より多くの方に診断を受けてもらえるよう、耐震診断の制度をさらに活用しやすくする必要があると考えます。現在、区は簡易診断と本診断で20万円弱を補助しておりますが、その分に少し上乗せして簡易診断と本診断を一本化し、診断費用の自己負担をなくす。つまり、本診断の無料化を行うことを提案します。
本診断が無料化することで自己負担がなくなり、しかも改修工事までの診断が一度に済むことになります。耐震改修工事を増加させることが区の目標であるはずですから、本診断への移行率ですら13%の簡易診断よりも、改修工事への移行率が約6割の本診断をふやす施策を実施すべきであります。本診断の受診率が上がれば改修工事の件数も増加することになるでしょう。長期総合計画の目標を諦めず、1件でも多くの耐震改修された建築物をふやすためにも、本診断の無料化を行うべきと考えますが、区長のご所見を伺います。また、実績を上げるためにもしっかりしたPRを展開することが重要と考えますが、あわせてお答えください。」

区長 答弁

「早川委員のご質問にお答えいたします。
建築物の耐震化を促進するためには、まず所有者自身による状況確認が必要であり、そのためには耐震診断を実施することが重要でございます。委員ご指摘の無料簡易診断につきましては、これまで一定の効果があったものの、その実績が伸び悩んでいることも事実でございます。一方、このたびの耐震改修促進法の改正に伴い、木造1戸建て住宅の耐震化が努力義務とされ、診断の実施を一層促進する必要があると考えております。
このような状況を踏まえ、耐震診断の助成につきましては、より利用しやすい事業とするよう検討するとともに、法改正の趣旨も含め耐震化の必要性について区民の皆様への周知活動を強化してまいります。」

早川太郎 質問

「今、区長からより利用しやすい事業とするよう検討するというご答弁いただきました。ありがとうございます。ぜひとも前向きにご検討いただいて、来期の予算に反映していただけるよう強く要望いたしまして、次の質問に移らせていただきます。
次に、区有施設の省エネ化推進について伺います。
長期総合計画の目標数値を達成することが難しいとされたものの中には省電力型街路灯事業も含まれています。24年度までに省電力街路灯へ移行した整備累計は3,370基、進捗率は34.6%という答弁をいただきました。26年度末の目標は5,290基でしたので、なかなか難しい状況になっているとは認識しています。
区有施設における消費電力のベストワンである街路灯の電気料金は、22年度約9,700万円、23年度約1億700万円と毎年上がっていて、今決算では約1億3,000万円、上昇率21%となっています。従来の街路灯と省電力型の街路灯の1台、1年当たりの電気料金を伺ったところ、従来型1万8,000円弱に対し、省電力型の街路灯9,000円強との答弁をいただきました。省電力型ではランニングコストが半額近くに抑えられています。ランニングコスト削減のためにも長期総合計画の目標数値に近づける努力は当然すべきと考えます。
消費電力のベストツーである本庁舎では老朽化改修工事に伴い、電気では40%、水道では45%と省エネ化の目標数値を定め、工事が進められています。工事途中ではありますが、22年度対比で電力使用量は20%の減少、水道に至っては46%も減らしています。水道料金が約840万円も減少しているのに対して、電気料金は1割、約580万円も上昇してしまいました。
区有施設全体で支払っている電気料金の決算額は22年度約6億4,000万円から、24年度約7億3,000万円と上昇がとまらず、23年度の電気料金を24年度の同じ使用量として額に換算した場合、24年度と比較すると約1億円の増であったとの答弁もいただきました。まだまだ電力については原発の問題などもあり、安定供給は難しいと言わざるを得ません。料金も為替の動き、中東の情勢など、上がる要因は多数あるのではないでしょうか。25年度でも既に実績ベースで9%の増になっていて、決算でどれぐらい上がってしまうのか危惧しています。
区有施設では生涯学習センターや学校、保健所など、街路灯以外でも光熱水費の多額な施設が多数あります。区民に対して省エネ施策を推進しているのですから、まずは区有施設から率先して始めるべきと考えます。消費電力の多い施設については、省エネアドバイザーの導入も含めて、省エネ機器を導入する投資額とランニングコストとの試算を行い、その試算をもとに効果が高いところから老朽化対策を待たず、省エネ機器導入を開始すべきと思いますが、区長のご所見を伺います。
また、以前にも申し上げましたが、災害時の電力確保、節電対策のためにも、また学校においては環境教育を充実させるためにも、区有施設に太陽光発電と蓄電設備の導入をあわせて検討すべきと考えますが、区長のご所見を伺います。」

 区長 答弁

「ご質問にお答えいたします。
まず、省エネ設備の導入についてでございます。
区では環境配慮の視点から温室効果ガス削減に向け、台東区地球温暖化対策推進実行計画を定め、施設の新設や改修時において長期的な費用対効果を踏まえて省エネ設備、機器の導入を進めております。これまでもリバーサイドスポーツセンターや区役所本庁舎の改修に当たり、照明器具、個別空調など省エネ設備の導入効果の試算を行ってきたところでございます。委員ご提案の省エネ設備の先行導入による費用対効果の試算につきましては、来年度に予定している実行計画の改定の中で調査、積算し、その結果を踏まえ対応してまいります。
次に、再生可能エネルギー及び蓄電設備の導入についてでございます。
区では区役所本庁舎の改修や谷中コミュニティセンターの改築に際して、太陽光発電設備の設置など再生可能エネルギー設備の導入を進めております。また、委員ご提案の蓄電設備の設置は災害時の停電対策に有効な手段となりますが、技術的に発展途上にあることやコストが高いことが普及への課題となっております。今後も費用対効果を検証するとともに、技術革新の状況を見ながら区有施設への導入の可能性を検討してまいります。」

 早川太郎 質問

「ご答弁ありがとうございます。本当に電気料金、ここのところ本当にどんどんどんどん上がってきておりますので、区の財政厳しい中ということであれば、ランニングコストと投資額の試算がどのようになっているのか。あとは昨年度ですか、それこそ中小企業に対しての融資の省エネの施策の中で省エネアドバイザーというのを導入してというのもございました。区の施設課で試算というよりも、やはり専門家を入れて実際大きな光熱水費でございますので、その辺実際どうなのかというのをぜひやっていただきたいと思いまして、次の質問に移らせていただきます。
3点目に外郭団体のあり方について伺います。
審議の場において、社会福祉事業団における経営基盤の強化に向けた取り組みについて伺わせていただきました。運転資金の確保については、目標より2年近く早期に達成、退職金など将来的な経費の負担に備えるための新たな積立金の資金も確保に向けて鋭意努力中だということが見てとれました。これは平成19年に出された社会福祉事業団のあり方の検討最終報告にある事業団が競争力を維持し、指定管理者であり続けるために介護報酬による自立運営を究極の目標に掲げの記述にのっとり進められていることだと思います。
しかし、社会福祉事業団は区の外郭団体として本当に正しい方向に進んでいるのでしょうか。指定管理者制度が導入されたことにより、事業団は福祉施設など5年ごとに指定管理者として選定を受けることになりました。現在まで運用指針にのっとり公募によらない選定ということで非公募で受託してきております。しかし、指定管理者制度は選定を公募型プロポーザル方式により行うことが原則であり、いつ公募になるかは直前に決定されます。審議の中でも来年度に迫った特別養護老人ホームの指定管理者選定のやり方を伺ってみると、選定手法については公募するか否か今後検討してまいりますとの答弁をいただきました。
当然事業団としては、いつ公募に切りかえられても選定が受けられるよう民間並みの経営基盤の強化に向けた取り組みを優先せざるを得ないことになります。結果として民間施設と同様な経営感覚にとらわれ、外郭団体としての本来的な意味、区の補完的な事業の実施を遂行するための、つまりは民間ではコスト的にも手に負えないといったセーフティーネットとしての役割意識が希薄になってしまい、コストではペイできない事業を十分に、また積極的に展開できない体制になってしまっているように思えてなりません。
財務体質の強化で手いっぱいになった結果、区の補完的事業まで手が回らなくなってしまっている現況は改善していかなくてはなりません。区が事業団に自立運営を求めているのなら年間の委託料にも問題があります。指定管理は原則、委託契約時におおよその年間委託料を決定すべきものであり、審議の中でも触れましたが、消費税の引き上げや電気料金の増減等によっては年度の委託料が増減することもあるでしょう。
しかし、もともと区の求めている管理運営をしっかりと行っているのなら、経営改善などによる経費の減少は指定管理料にはね返らないものであるはずです。24年度の在宅サービスセンターにおける委託料の減額など、まさに実績見合いで減らしているとしか思えず、本来は自立運営に向けた蓄えとして積み立てられるべき資金が蓄えられずにいるのではないでしょうか。最低限の運転資金をやっと蓄えることができた財政状況では、指定管理が公募で行われるとしたら経営基盤のところで評価はかなり厳しい状況にあると思います。
区の補完として先進事業の実施やセーフティーネットとしての役割を十分果たしてもらえるよう、財源も含めてしっかりと事業団を支えていくのか。民間の社会福祉法人と同じように最終報告にあったような自立運営に移行してもらい、区の関与をできるだけなくしていくのか。指定管理の選定もありますし、谷中や浅草など特別養護老人ホームの老朽化問題もあります。児童館やこどもクラブなど新子育てシステムの中で、今後も事業団が指定管理者や業務委託の委託先としてあり続けられる保証もありません。今こそ事業団のあり方をもう一度しっかりと決定していくべきだと思っています。
また、今決算特別委員会では審議の場で質問しておりませんが、指定管理を行っている芸術文化財団にも課題はあると思っています。24年度の予算特別委員会でも現議長の和泉議員から財団と区の役割分担について明確ではない。事業ごとに見ていくと非常にわかりにくい。役割分担について一定の方針を明確化してほしい旨、発言がありました。私もそのとおりだと思っています。また、昨年の決算特別委員会の総括質問でも触れたとおり、指定管理者制度を採用して管理運営を委託するなら、指定管理の委託料と自主事業への補助金についてのあり方は検討すべき課題であるはずです。指定管理としての選定のあり方委託料、補助金についても社会福祉事業団と同じような問題を抱えています。23年には財団は公益財団法人に移行いたしました。公益という2文字が追加されたことの意義は大きく、税制についても多くの優遇措置を受けられるようになりました。あり方検討の最終報告から財団を取り巻く状況も変化してきており、財団についてももう一度見直す時期に来ているのではないかと考えます。
24年度末に修正された行政経営推進プランの中に外郭団体の経営改善の推進があります。特に団体が指定管理者として区有施設の管理運営を行う場合には、区政を補完、代替する機能や区との役割分担を明確にするとともにとの記述があり、各年度とも実施検証となっておりますので、24年度はどのような検証をし、外郭団体について現状をどのように認識しているのか、区長のご所見を伺います。
また、今回、公益財団法人に移行した産業振興事業団が今後のあり方についての方向性を示しました。あり方検討の最終報告から5年以上が経過し、指定管理者制度導入からもうすぐ10年目を迎えます。社会の情勢も変化し、外郭団体に対する認識も変化してきているのではないでしょうか。また、指定管理者制度導入によるメリット、デメリットも検証できる時期に来ていると思います。外郭団体のあり方についてももう一度全庁的な検討会をつくり、議論すべき時期に来ていると思いますが、区長のご所見を伺います。」

区長 答弁

「ご質問にお答えいたします。
行政経営推進プランでは外郭団体の経営改善について毎年度取り組んでいくこととしております。平成24年度につきましても、各団体においてそれぞれの立場から経営改善に取り組んでおります。また、指定管理者の指定を受けている外郭団体につきましては、施設管理評価を実施し、管理運営の状況や実績などを適切に検証、評価しているところでございます。外郭団体は区の施策や個別事業の支援や補完をするとともに、区政と方向性を一つにして区民サービスの向上を目指す目的を担っております。現在、台東区産業振興事業団におきましては、あり方検討会を設置しており、区との役割分担を整理し、事業団の機能強化について検討しているところでございます。その他の外郭団体につきましても、行政課題の変化に対応してそのあり方を検証、検討することが必要であると考えております。」

 早川太郎

「今、区長から産業振興事業団以外の外郭団体についても、行政課題の変化に対応してあり方を検証、検討することが必要であるとご答弁いただきました。まさに今こそがその行政課題の変化があっている時期で、最終報告を決めた時期から今に至るまで。ですので、外郭団体のあり方については、担当所管だけではなくて全庁的な検討会を設置して検討をぜひ始めていただきたいと思います。
本日、質問、提案させていただいた3点、耐震化、省エネ、芸術文化の推進やセーフティーネットの確立、行政としてしっかりと行っていくことで、環境に優しく安全で安心、暮らしを楽しんでいける台東区へとより一層進化を遂げていくことになると思います。答弁以上にしっかり対応していただけると信じて、質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。 」

タイトルとURLをコピーしました