2023/01/10
早川太郎質問
「つなぐプロジェクト 早川太郎です。
令和2年初頭から始まった 新型コロナウイルスの感染拡大は、社会に対して大きな変革をもたらしていて。
例えば、テレワークが多くの企業で進んできたことによる通勤時間の負荷や、できるだけ人との接触を避けることを求められたことによる 余暇の時間の過ごし方などが変化し。結果、住居の選択基準にも 変化が表れだしています。
「総務省の2021年 住民基本台帳の人口移動報告によれば、外国人を含めた集計を開始した 2014年以来、東京23区は初めて転出超過となった」という報道もあります。特に子育て世帯においては、自宅でも仕事をしやすく、より快適に過ごすことができる空間の確保や、身近な場所で 子どもと一緒に遊べる 広い公園などの周辺環境が、住居の選択基準の 重要な要素になってきているのではないでしょうか。
台東区においては、昨今のマンション建設の増加から、区への転入超過が続き、特に、子育て世帯の流入などが増加し。国内では少子高齢化が進む中、高齢化比率は、私が区議になった平成23年の2位から、現在は7位と 人口バランスの改善がなされてきていました。しかし、子どもや子育て世帯の年代層が、コロナが起こってしまった 令和2年度から転出超過となっています。マンション建設は、コロナ禍においても大きな変化はないようですが。それらの世代の方々が、転出が増えているのか、転入が減っているのか。その両方なのか 要因は定かでありませんが、現実的な現象として表れてきています。
今回の転出超過が 一時的なモノであってほしいと切に願っておりますが。今後も子育て世帯の転出超過が続いていくのなら、その対応策も必要で。これまでも、区は、様々な子どもや子育て世帯に対する事業を充実していて。子ども関連の区有施設などでの「おむつの処分」や、リフレッシュのためのベビーシッターの活用など、日常生活における 負担の軽減だけでなく。第2回臨時会においての こども商品券の配布や、今定例会における 経済対策としての 他区に先駆けて実施する、学校園の 給食食材への支援など、評価する事業も実施しておりますが。
今後も、子育て世帯の定住促進に向けた取り組みは必要で。SNSなどを通して 各自治体の状況を把握しやすい現状を鑑みれば。話題性のある事業を実施することも 効果があるとは思いますが。むしろ、日常生活における負荷の軽減や、満足度が向上するような事業展開が有効なのではないか、と思っていて。喫緊の課題となっている「こどもクラブ」などの放課後対策や、保育所整備の質の向上に向けた取り組みだけでなく、子育て環境の全般的な底上げを目指して、実施していくべきと考えます。
例えば、夏休み期間中の「こどもクラブ」における宅配弁当の導入等も 早急に実施して頂きたいと思いますが、今回は、子育て環境における 更なる支援の充実を図るうえでも必要と思われる2点について、教育長に伺います。
まず初めは、教育現場におけるサポート体制の向上について伺います。
昭和・平成・令和と時代が移っていく中で、社会的コンセンサスも変化していき。学校は、教育機関としてだけでなく、福祉的な側面も併せ持つ機関としての 位置づけが重要になってきていて。教育委員会として、その役割をしっかりと担っていくための 支援が求められています。
そういった役割を担っていくために。児童生徒の学力向上・格差是正を目的に、学力向上推進ティーチャーを配置したり。
特別な教育的配慮を必要とする子どもたちへの 支援を行うための 特別支援教育支援員の配置。心のケアを行う スクールカウンセラーや、生活の中で抱えている 様々な問題の解決を図るための スクールソーシャルワーカーの導入。教員が持っている能力をフルに発揮できる体制を サポートするための、スクールサポートスタッフや部活動指導員など。区は 教育現場をサポートするための事業を実施しておりますが。現状のままのやり方では、そういった人材を確保することが 困難になりつつあるのではないか、と危惧しています。
前定例会の決算の審議の中でも触れましたが。
例えば、学力向上推進ティーチャーでは。2年度には、コロナ禍による臨時休校を踏まえ、必要な人員体制を整備するということで、1校当たりの配置を増員していて。また、2年度で終了した 学習支援講座の代替え的な役割を 期待されていた事業でもありました。しかし、学力向上推進ティーチャーの講師の数は、令和2年度61人。3年度は、52人と減少していて。また、派遣時間数も減少しています。事務事業評価では、「適切な時間数を配置できるよう 適宜見直しを行う必要がある」との記載もあり。講師の確保という意味では、当初の予定と比べて、十分な体制で臨めているのか、との懸念は拭いきれません。教員免許を持っていることが、採用要件となっていますが。小学校の「35人学級」や「教科担任制」の導入など、今後多くの教職員が必要であり。また、小学校教員採用試験の倍率が年々低下するなど、教員の担い手不足が 顕在化していて。さらに、定年後の先生たちが この事業の担い手となってくれていますが。定年延長も実施されていくことになっています。今後、この事業の担い手が、質と量の両面から見て確保できるのか、という懸念を抱かざるを得ず、その時の答弁も、「多様なニーズに応じた 人材の質と量の 両方の確保には危機感を持っている」とのことでありました。
また、特別支援教育支援員も、特にここ数年は、必要とする人員の確保ができず。募集は進めていますが、応募が少なく 欠員を解消することができず。現場に負担を強いている状況が 続いています。今までも、人員確保に向けた対策は講じているはずであり。採用告知を拡げるだけで、課題解決ができるとは思えません。この事業のニーズは、年々増加傾向にあって。今後は更に増加していくことでしょう。各支援員の勤務は、週4日までとなっていますが。特別な教育的配慮を必要とする 子どもたちにとっては、できる限り 支援員が固定されることが望ましく。そのためには、現状の勤務体系を前提とするのなら、固定メンバーによる チームサポートも1つの選択肢となりますが、現状以上の人員が必要となってきます。現状でさえ 人員確保ができていないことを考えれば、現在のやり方で良いのか、との懸念を抱かざるを得ません。
教育現場における サポート体制を向上させることは、子供たちの 未来の可能性を広げることに繋がります。また、コロナ禍の初期に、わが会派が実施した、小中学校の保護者を対象に行った「オンライン教育等についてのアンケート」に対して、インターネットのみを活用したにもかかわらず、わずか10日間で1400を超える回答を頂けたことなどから、子育て世帯の、学校環境や教育ニーズへの関心の高さがうかがえます。サポート体制を含めた教育環境の充実は、子育て世帯にとって、大変満足度の高い施策であるはずです。
待遇面を改善するのか。人員が確保できないことを前提にその役割を補完するための対応策を講じるのか。
どちらにしても、課題解決に向けた検討を 早急に実施すべきではないでしょうか。
現況の教育現場に置けるサポート体制、特に人員確保についての課題認識と 今後の対応について、教育長の所見を伺います。
次に、幼児期における運動習慣の定着について伺います。
幼児期に運動習慣を身に着けることは、子どもの健やかな心と体づくりのためには、大変重要なことであり。
台東区においても、スポーツ振興基本計画において、子どもの基礎体力の向上を 重点施策として位置づけ、幼児運動教室などの事業を実施しています。
未就学児を対象とした幼児運動教室は、平成26年度よりリバーサイドスポーツセンターにおいてスタートし、たなかスポーツプラザ、柳北スポーツプラザと スポーツ施設で拡充し、現在3か所で実施しています。しかし、現在でも、「各会場に定員を超える申し込みがあり、ニーズも非常に高い」と事務事業評価に記載がある通り、ニーズに応えられるだけの事業を展開できておらず。また、区内のスポーツ施設で実施していることもあり、地域偏在という課題もあります。コロナ禍の影響により、幼児の体力低下が懸念されていて。区も、スポーツ施設のグラウンドを 子どもたちに無料開放し、運動できる場所の提供に努めていますが、幼児運動教室と同施設での実施であり、地域偏在の課題解決には至っておりません。
そもそも、都心部に位置する台東区では、広い公園やスポーツ施設の数も少なく、幼児が、安全に 思い切り体を動かす場所が限られていて。更に、昨今の気候変動の影響で、夏場の気温の高い日中は、熱中症への危険回避から 公園を利用することもできない状況となっています。文部科学省の幼児期運動指針には、「幼児にとって体を動かして遊ぶ機会が減少することは、その後の児童期、青年期への運動や スポーツに親しむ資質や能力の育成の阻害に止まらず、意欲や気力の減弱、コミュニケーションをうまく構築できないなど、子どもの心の発達にも重大な影響を及ぼすことにもなりかねない」との記載もあります。
ますます、幼児期に運動習慣を身に着けることへの支援は、必要となってきているのではないでしょうか。
コロナ禍の影響を受けて、オンラインでの教室をスタートしたことは、大変評価していますが。十分に身体を動かせるスペースの問題や、近隣への配慮などの課題があり。内容も、そういったことを考慮したものにせざるを得ず。現在実施している教室へのニーズをカバーすることは難しいのではないでしょうか。
この夏、区内の運動教室を複数見せていただいて。近隣の荒川区の教室も、拝見させて頂きましたが。現在区で実施している 運動教室の内容なら、使用している運動器具も運搬可能であり、現在のような施設型の事業である必要はないのでは、と思っていて。地域偏在をなくす意味でも。例えば、生涯学習センターや区民館、児童館などのスペースを活用することも 十分可能なはずであります。この事業を施設型の事業ではなく、ハードとソフトを分離した上で、ソフト型の事業として 拡大していってもよいのではないか、と思いますし。例えば、もっと大掛かりな 幼児用運動器具を常設した、拠点となる施設を、たなかスポーツプラザで整備するなど、施設型の事業も充実して頂きたいと思っています。
また、幼児期の運動習慣を身に着ける事業として、幼稚園や保育所等への、幼児の体力向上支援事業を平成27年度より、区立園に対してはスポーツ専門指導員の派遣を。私立園に対しては園児の体力向上に資する事業への助成を 実施していますが。昨年度より縮小された区立園への対応も拡充して頂きたいと思います。
幼児期の運動習慣の定着を図るためには、地域偏在を解消し、ニーズに応えていく取り組みは必要で。区有施設などの活用によるソフト型の事業を幼児運動教室で展開していくなど、幼児の運動する機会を増やし 支援を充実すべき、と考えますが。教育長の所見を伺います。」
教育長 答弁
「早川議員の子育て環境における更なる支援の充実についてのご質問にお答えをさせていただきます。
まず、教育現場におけるサポート体制の向上についてでございます。
教育委員会では、児童生徒の学力向上、教員の負担軽減などを図るため、様々な職種のスタッフを各学校に配置しておりますが、職種により人員が充足していない現状について認識をしております。例えば、特別支援教育支援員につきましては、今年度、「区公式ツイッター」への投稿や求人サイトへの掲載などにより、応募者数が増えるなど成果を上げる一方で、学力向上推進ティーチャーにつきましては、登録者は多いものの、その希望条件と学校側の要望が合わず、配置に至らない状況が続いております。
そのため、今後、様々な職種が一覧となっている募集チラシを作成し、区公式ホームページへ掲載するとともに、関係機関に配布をするなど、広く周知をしてまいります。
また、これまで以上に、都内の公立学校を支援する、専門の人材バンクを積極的に活用するなど、学校の希望に沿った配置となるよう、教育委員会として丁寧な調整を図り、人員確保に努めてまいります。
教育委員会といたしましては、人員確保に向けた取り組みを更に強化することにより、教育現場におけるサポート体制の向上に取り組んでまいります。
次に、幼児期における運動習慣の定着についてでございます。
近年、子供の体力低下が懸念されており、幼児が身体を動かす機会も減少傾向にあると言われております。幼児期は身体の諸機能の発達を促す大切な時期であり、身体を動かす遊びや運動につきましては、児童期以降の運動機能の基礎を形成するうえで重要でございます。
本区におきましては、これまで幼児運動教室やチャレンジスポーツ教室などの様々な事業を展開し、幼児の運動環境づくりに取り組んでまいりました。また、今年度からは、コロナ禍でも自宅にいながら参加できる、オンラインを活用した運動教室を開始したところでございます。
区内スポーツ施設で実施している幼児運動教室は、ニーズが非常に高く、好評を得ており、毎回多くの応募をいただいております。しかしながら、応募が定員を超えた場合には、参加をお断りすることもあり、また、実施会場が限定されていることから、利用者のニーズに十分に応えられていない状況となっております。
今後、幼児の運動する機会を確保し、広くニーズに応えていくため、スポーツ施設以外の区有施設を活用した、出張型の運動教室を企画するなど、事業の拡充に向けて検討をしてまいります。
教育委員会といたしましては、保育園や幼稚園での取り組みも含め、引き続き、幼児期の体力向上と運動習慣の定着に、積極的に取り組んでまいります。」